結果は残せなかったが、香川(右)や乾(左)からも縦への素早い攻撃を意識している様子はうかがえた。 (C)SOCCER DIGEST

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 ハリルホジッチ新監督を迎えた日本代表が、3月27日のチュニジア戦に続いて、31日のウズベキスタン戦でも勝利を飾った。ここでは、ウズベキスタン戦前後の指揮官と選手のコメントを拾いながら、好スタートを切った新生日本代表の戦術について検証していきたい。
 
「皆さんも喜んでくれる試合だったと思う。良い試合だったし、たくさんの良いアクションがあった」
 
 第一声でそう自賛したウズベキスタン戦後の会見で、ハリルホジッチ監督が収穫に挙げたのが「アグレッシブさ」を表現できたことだった。
 
「(過去の日本代表の)映像をたくさん見てきて、アグレッシブさが足りないと感じていた。それからプレーのスピードも。この合宿でしっかりアグレッシブさとコンタクトを要求することで、(試合で)高いレベルのものを見せてくれたと思う」
 
 攻守両面において積極的にプレーし、計5得点を叩き込んだウズベキスタン戦は、確かに指揮官が言う「アグレッシブさ」を表現できていたと言えるだろう。とりわけ、「特に強調していた前に行くスピード」(ハリルホジッチ監督)は、顕著な変化を感じ取れた部分だ。最前線の起点としてターゲットになった岡崎は言う。
 
「(選手の)頭の中に、取った後に早く前線に入れる。1タッチ、2タッチで素早い攻撃を仕掛けると認識されたのが大きい」
 
 素早く攻守を切り替え、相手の守備ブロックが整わないうちに攻めきってしまう。合宿を通して徹底的に叩き込まれたこの攻撃の意識は、「ボールを奪ったらサイドチェンジや縦にスピードのある攻撃を意識した」(川又)と他の選手にも強烈にすり込まれているようで、実際に相手が間延びした後半には、カウンターから多くのチャンスを作った。
 
 岡崎→香川→乾とつなぎ、最後は岡崎がミドルを狙った52分の場面や、63分に練習どおりの形から宇佐美が左サイドを突破したシーンは、指揮官の意図が表われた形だ。
 
 結果的にカウンターから奪ったゴールはなかったものの、新体制発足からまだ2試合目であることを考えれば、形を作れただけでも進歩だと言える。チームとしてのベーシックな部分を共通認識できたのは、スタートとしては上々だ。
 縦への素早い攻撃が強調された一方で、それを支える守備面にも指揮官の色は表われていた。基本的にハリルホジッチ監督は、前線からのアグレッシブなプレスを求めるが、リードを奪った後半は明らかに守り方を変えていた。
 
「(後半は)ブロックをわざと下げて相手に罠を仕掛けた。相手にこちらに来るように仕向けて、(敵陣に)スペースを作らせてからボールを奪って素早くカウンターを仕掛けることで4点が取れた」(ハリルホジッチ監督)
 
 後半開始から今野に代えてCBが本職の水本をボランチで起用し、中盤の守備力を強化。ブロックを作ってリスクを減らしつつ、相手を誘い込んでカウンターを狙った。
 
「相手は1本のパスで裏を狙ってくることもあると監督も話していた。だから、全部が全部、前線からプレスに行かなかった」
 
 昌子がそう言うように、あえて相手に攻めさせる展開を狙ったのである。状況に応じた手が打てる、戦術面での懐の深さを感じさせる采配だ。
 
 もちろん相手の疲労や、6人まで交代できる親善試合ならではのレギュレーションなど、差し引いて考えるべき点はあるだろう。それでも、新戦力をテストしながら、新しい戦術を刷り込んだ指揮官の手腕は評価に値する。
 
 これまで上げた2点以外でも、危険な横パスの減少など前体制からの変化は多分に感じられる。今後、ハリルホジッチ監督の思い描くスタイルがさらに浸透すれば、日本代表はアグレッシブさと懐の深さを兼ね備えたバランスの良いチームになっていくだろう。