腰痛の専門医はどう探すのか?

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 腰痛に関する診察や治療は近年大きく変わっている。以前に病院に行って解決しなかったからと、自己流の治療法や民間療法をあれこれやってもよくならない、よくなるどころか、逆に悪化しているというなら、再度、診察しなおしてみるべきだ。しかし、どこの医療機関にかかればいいのか? 医師選びが問題だ。

 医学は日々進歩しているから、医師も日々勉強が必要。しかし、あらゆる分野の最新の情報を理解し、身につけることなどできない。従って、それぞれ自分の専門分野を絞って、その分野について集中的に勉強する。

 「だから、やっぱり大学病院などの専門医に行かなきゃ!最初から、そこへ行けば、すべて解決!」と思うのは短絡だ。さまざまな分野を見る「かかりつけ医」は多様な患者のあらゆる疾患を見ている。専門医は特定の分野に特化し、その分野に精通している代わりに、その他の分野にはうといことが多い。基本的にかかりつけ医からの紹介患者などでいっぱいで、なかなか予約が取れないなど、診てもらうのも難しい。

 いまは専門医とかかりつけ医に連携して診てもらう時代。初めて腰痛になった場合、しばらく様子を見て、不安を感じたら、まずは近くのかかりつけ医に診てもらう。腰痛など生活習慣に原因がある病気は、患者について知っている医師に最初の診断をしてもらうのがいい。あなたが立ち仕事をしているのか、一日中デスクに座っている仕事のか、こどもがいるのか、いないのか...など、あなたの日常や環境まで知っていると、さらに診断の確度が上がる。

 だが腰痛が長く続き、慢性化したら、かかりつけ医に頼んで、専門医を紹介してもらおう。理想はなんでも話せるかかりつけ医を持ち、その先生が腰痛の専門医への紹介状を書いてくれることだが、それができない場合は、しかたないのでネット等で専門医を探そう。

腰痛の専門医の賢い探し方とは

 「腰痛の専門医? 大きな病院の整形外科に行けばいいんだろ?」と思うかもしれないが、整形外科医の守備範囲は非常に広い。日本整形外科学会のサイトに「豊富な専門領域」と、整形外科として目指すさまざまな道について書かれているリストを見ると、「一般整形外科医」「脊椎脊髄外科医」「関節外科医」「手の外科医」「足の外科医」「骨・軟部腫瘍医」「関節リウマチ外科医」「スポーツドクター」...等々。この中で背骨の専門医は「脊椎脊髄外科医」だ。

 「専門医に診てもらったのに納得できなかった」という人は、背骨の専門医に診てもらってないのではないだろうか?「単に大きな病院の整形外科」に行っただけではないだろうか? 1人の医師が複数の専門を持っている場合が多いので、かなり大きな病院で整形外科にもたくさんの医師がいる場合なら、腰痛の専門医にかかれた可能性も高い。しかし、整形外科に医師1人ていどの総合病院なら、腰痛を専門としない整形外科医にかかることもある。もちろん内科医よりは整形外科医のほうが腰痛に詳しいが、腰痛が専門外の場合、最新の診断方法や治療方法は知らないことも多い。

 腰痛の専門医を探すなら、まず「日本脊椎脊髄病学会」へ。腰痛に関する情報や信頼できる参考図書も掲載されているし、「指導医リスト」があり、専門医を見つけることができる。腰痛をこじらせたなら、少し遠くても専門医にかかり、診断と治療方針を決めてもらうといい。通うのが大変なら、専門医に相談して、以後の治療は近所の整形外科に診てもらったり、場合によっては近くの内科医に薬を処方を頼んだり...という方法もある。生活習慣が関わり、治療に時間がかかる病気の場合、最初から最後まで専門医に診てもらうのではなく、専門医には診断と治療方針の決定、場合によってはその後の経過を半年や一年に一度チェックまで担当してもらい、ふだんは近所のかかりつけ医...というのが、いまの医者の正しいかかり方。

 以前に専門医のいる病院にかかっていたとしても、それが昔なら、再度いま受診する価値はある。2012年の「腰痛診療ガイドライン」改定で、腰痛治療は大きく変わったからだ。

最新の腰痛診療はストレスに着目

 腰痛治療は特にこの十年で大きく変化した。それを反映したのが、2012年に発表された「腰痛診療ガイドライン2012」だ。このガイドラインは以前のガイドラインの改訂版ではなく、新規のガイドラインとして作られ、専門医以外の内科医、かかりつけ医にも腰痛治療を行えるように考えて書かれている。

 特に大きなポイントとして、一番に挙げたいのが腰痛と心理社会的因子との関係だ。痛み全般に関して、傷などによる痛み、痛みを伝える神経の問題による痛み、そして心因性の痛みの3種類があることがわかっているので、腰痛においても、心因性の痛みは想定されていた。しかし、エビデンス、つまり統計学的に意味のある、効果に関するデータが出揃っていなかったため、腰痛に関して、心因性の痛みをどこまで考えるか、専門医の間でもばらつきがあった。「腰痛診療ガイドライン2012」の作成に当たっては、今までに報告された国内外の約200本の研究論文を整理、分析した結果、心因性腰痛に対する具体的な治療法が記載された。

 以降、心因性腰痛も頭に置いたうえで、診察が行われるようになった。治療にあたっては、問診が重視される。日本の保険制度では問診に充分に時間を割けば割くほど病院の経営が難しくなるので、なかなか時間をじっくり割いてもらえる医療機関は少ないが、それでも若い医師による事前の聞き取りとベテラン医による問診を組み合わせるなど、工夫して、必要な聞き取りを行っている医療機関も多い。腰痛は骨などの器質的な問題の発見にも問診が重要。

 どこの場所に問題があるか、あらかじめ予測してMRIなどの画像を撮らないと、漠然と撮影したのでは、問題個所を見つけられない。患者にいつ、どのように痛むか、どんなときに痛みが強まるかを聞き、必要な場合は、実際にさまざまな動きを患者にさせて、その動き方や痛み方などを見て、問題がどのあたりにあるかを絞り込む。そのうえで、技師に細かな指示を与えて撮影して、初めて問題個所が見つかる。また「腰痛診療ガイドライン2012」にも記載されたことだが、すべての腰痛を画像撮影する必要はない。たとえば筋肉を傷めた場合などは画像には映らないからだ。問診で画像に映らない問題と判断されたら、画像撮影はしない。放射線被ばくに対する意識も高まった現在、無意味な画像撮影はできるだけ避けるべきと考えられている。

 そして問診では心因性の可能性も考えつつ、日常生活についても問われる。腰痛の多くは、日常生活の動作や姿勢などに発症の原因があるので、そこをしっかり聞き出さないと、たとえ治療しても、また腰痛を引き起こすことになる。そして、ストレスが痛みを強めているかどうか知るためには、家庭や仕事の問題などにまで踏み込む必要がある。広く原因を追究しながら、診断は行われる。
これだけの問診をするには、医師と患者の間に信頼関係が必要。従って、医師選びに際しては相性もよく検討しよう。

 診断がついたら、次は治療だ。もちろん治療も昔とは変わってきた。次回はストレスが痛みを強めている場合の最新の腰痛治療に迫る。
(文=医療ライター 森田慶子)