格安スマホは知っているけど普及していないワケ 格安SIMフリースマホの落とし穴

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雑誌やWebのニュースで連日、格安SIMフリースマホの話題で賑わっている。
格安スマホの認知度は、MMD研究所の調査では90.3%と、ほとんどの人が知っているという結果も報告されている。しかし、実際に格安スマホを利用している利用率となると10.9%と、非常に低い結果となっている。

同調査で格安スマホを使いたくない人の理由としては、「今の携帯電話会社の方が安心だから」という回答が56.8%と、もっとも多い。続いて「今の携帯電話・スマートフォンと同様に使えるかわからないから」が25.2%、「つながりやすさへの不安」が22.9%、「サポートへの不安」が22.6%となる。

こうした多くの人が抱く格安スマホの不安とは、具体的にはどのようなものなのだろうか。

●なぜ格安スマホに不安を感じるのか?
格安スマホに対して一般ユーザーが不安に思う理由は2つある。
1つは、格安スマホを販売する会社を「良く知らない(専業ではない)」という点が大きいのだろう。その結果、正しい情報や具体的な情報が、きちんと一般の消費者まで届いていないというのが、漠然とした不安となっている。

もう1つは、「専用の店舗がない」ということ。
こちらは、格安スマホの購入や手続きなどの「手順」や「手間」がどのように、既存の大手キャリアとの違うのかなどが、わからない点だ。こうした情報がまだ十分に周知されていないことで、不安が大きくなっていると思われる。

具体的にみていこう。

●今の携帯電話会社の方が安心 - 格安スマホが安心できないポイント
格安スマホもNTTドコモやauなど既存の大手通信事業者のネットワークを利用している。
それなのに、なぜ、安心感に差がでるのだろうか。

つながりやすさは、スマホの機種により違いがある?
多くのMVNO通信会社はドコモの回線を利用しているのだが、購入したSIMフリースマホによって、通信品質に差がある。
対応する電波(周波数帯)と、LTEや3Gなどの通信規格により、通信速度も通信できるエリアも差がでることがある。
特に、都市部と地方や山間部では、電波状況がことなるので落とし穴になりやすく、注意が必要だ。
都市部では、LTEや3Gなど、多くの周波数が使えるため、格安スマホでも大手キャリアスマホと遜色なく利用できる。しかし、地方や山間部などでは、一部の周波数帯(800MHzなど)が使えないと通信が途切れたり、通話が途切れたりすることがある。

●今の携帯電話・スマホと同様に使えるかわからない?
現在使っているケータイ電話やスマホから、格安スマホに変更した場合の違いについても、情報は不足している。
なにが利用できて、なにが利用できないかが、まだ一般の利用者に十分に周知できていないとってもいいだろう。

・携帯キャリアのメールやサービス、アプリが使えなくなる
格安SIMを提供するMVNO各社のサービスには「@docomo.ne.jp」や「@ezweb.ne.jp」のようなキャリアメールがない場合が多い。ほとんどの場合、EメールはGmail やPCのメールを利用することになる。

・安いプランはパケットが少ない、または低速通信
格安SIMでは、安いプランはパケット通信料が1GB〜3GB程度で、利用制限をこえると、最大128kbpsや300kbpsといった低速通信となる。
通信量については4月からデータ通信量は増量となり、5GB、10 GBの大容量プランも増えてきている。また、LINEなどSMS認証が必要な場合は、SMSオプションを追加するとSMSでの承認も利用可能だ。

●サポートへの不安 - 契約はやサポートはWebが基本
格安スマホでのサポートに対する不満は、対面購入や契約でない点が大きいといえる。
またインターネット利用のハードルも見逃せない。

・回線開通の手続きを自分でしなければならない
格安スマホで格安SIMを使う場合、基本は、パソコンなどを使用してネットで契約をしなければならない。(一部、店頭でできる機種もある)
また、契約した格安SIMを使う際には、スマホの設定でアクセスポイントを選ぶ(設定)する必要もある。

利用開始後のサポートは、通信に関してはSIMを提供する通信会社、スマホ本体に関してはスマホメーカーと別々な場合が多い。
格安SIMを提供する通信会社(MVNO)は、専用ショップを持たないことが多いため、料金プランの変更や解約、相談などのサポートネットから行うケースがほとんどだ。

スマホ本体の修理保証サービスも、通信会社ではなく、スマホメーカーや購入した量販店で対応してもらうことになる。

このように、格安SIMフリースマホは、キャリアの手厚いサービスに頼りがちになっていた人にとっては、自分で選択することが多くなっている。また、既存の大手キャリアで利用していたサービスが使えないなど、事前に理解しておく情報が多いことも不安が増える理由と言えるだろう。

そこで最近は、このような不安を解消する動きも増えている。
専門ショップや量販店、ショッピングモールなどでの店頭販売を強化し、対面サービスの充実を図っている格安スマホの通信事業者やメーカーも増えてきている。

今後は、一般利用者へのサービスやアフターフォローを充実させていけるのかが、格安スマホ普及の鍵となるのではないだろうか。


格安スマホ、認知度は9割超えも利用率は1割 - MMD研究所調査



甲斐寿憲