ウズベク戦の大勝で隠された香川と本田の“微妙”な立場…新生日本代表の問題点とは

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文=川本梅花

 勝利はチームを上昇気流に乗せる何よりの特効薬だ。

 試合後の選手の顔を見れば、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表に、選手たち自身も「このチームは自分にどんな変化をもたらすのか」と期待していることがよくわかる。この日、日本代表はウズベキスタンに5−1で勝利し、順調な船出をきった。

■守攻に関する4−2−3−1の活かし方:前方からの場合

 5点も得点を奪っているのだから、ポジティブな側面を書き連ねることは簡単だ。だからと言って、ネガティブな側面を誇張して持論に持ち込むのもフェアではない。そこで、チュニジア戦とウズベキスタン戦を比較しながら、選手たちが「できたこと」と「できなかったこと」を述べていこうと思う。そうすれば、ハリルホジッチ監督が目指すサッカーの枠組みが見えてくるだろうから。

 日本のシステムは4−2−3−1だった。このシステムの場合、考え方として、もともと4−4−2で中盤がボックス型なのを、2人のFWのうち1人が下がり気味にポジションをとって、FW2が縦の関係を作ったことから4−2−3−1が作られたと筆者は考えている。なぜ、2人のFWのうち1人のFWが下がり気味のポジションをとるのかと言えば、相手のCH(センターハーフ、あるいはボランチと言ってもいい)をFWが下がって「見る(ケアする、あるいはマークする)」という守備の意識からもたらされた。

 相手が4バックだった場合、4人のディフェンダーにFW2人がプレスに行くよりも、左右のMFが相手のSBをケアして、トップにいるFWがCBにプレスにいきパスコースを消す動きをする。しかし、CBは2人なので、ある程度はボールをもたれても良いと判断して、相手の縦パスを防ぐために下がり気味のもう1人のFW(トップ下)が相手のCHをケアする。こうした考え方から、4−2−3−1がシステムの主流になっていった、と考えられる。

 ところが、ハリルホジッチ監督は、トップ下にいる香川真司をワントップの岡崎慎司と並ばせて、ウズベキスタンのDFにプレスに行かせた。その場合、守備の際には4−4−2のシステムになる。そして、香川と岡崎がどこまでボールを追うのか、つまり、相手選手のどのポジションまでボールを追うのかを見れば、監督がどんなサッカーを目指しているのかがすぐにわかる。特に、岡崎においては相手のGKまでボールを追いかけていた。一般的に、「ハイプレス」と言われるやり方で、高い位置でボールにプレッシャーをかけるのである。

 ここだけを取り上げても、新監督は、ボールを相手のゴールの近くで奪って、できるだけ手数をかけずに相手の裏のスペースを攻略する戦術をとっていることがわかる。これは、前線でボールを奪ったときのやり方である。

■守攻に関する4−2−3−1の活かし方:後方からの場合

 では、後方(日本のDFがボールをもったとき)からビルドアップを開始する場合どうなのか。日本のDFのインターセプトしたボールが岡崎へ入るやいなや、日本の攻撃的な選手はすぐに前方に動き出す。

 チュニジア、ウズベキスタン戦の2試合を通して、最も成長が感じられた選手はFWの岡崎である。ドイツでもまれた経験が活かされていて、背後にいる相手を背負いながら、身体を半身にしてボールを受けたらすぐにターンして前を向く。あるいは、味方の縦パスをしっかりとキープして、自分の近くにいる選手にボールを預けたら、すぐさま相手の裏に走り出す。

 ハリルホジッチ監督が指導した日本代表は、前方でボールを奪っても、後方でボールを奪っても、同じように手数をかけずに縦パスを利用して相手の守備が下がりきる前に攻略しようというやり方が徹底されていた。

 この点に関しては、「この2試合は」と留保しておきたい。なぜならば、どんな監督がやってきても、最初は監督の意図に沿って選手は動いてくれるが、結果が出なくなってくると、選手たちの意見を取り入れて、最初のやり方にミックスさせた混合体になってしまうことがあるからだ。

 監督の目指すサッカーを期待されてハリルホジッチ氏が日本代表の監督に抜擢されたと考えるので(つまり、その監督が空いていたから採用したのではなく)、監督が目指すサッカーをやり続ければいいのであって、もしそれで結果がでなければ、自ら辞めればいいというだけのことだと筆者は考えている。確かに、「サッカーの戦術は選手の質で決められる」という格言はあるのだが、それならば、経験と実績のある日本人が監督をやればいいのであって、サッカーのカウンターカルチャーによって日本代表を躍進させることが目的であるのならば、ハリルホジッチ監督がやりたいサッカーをやってほしいのである。

■守備時に4−4−2になるデメリット

 前述したように、守備の際に4−4−2になってトップ下のMFとワントップのFWの2人が協力して相手のDF陣にプレスをかけるというやり方のポジティブな面は指摘した。

 当然、メリットがあればデメリットもある。この戦術のデメリットは、味方のCHと香川、岡崎の距離が開くことにあった。さらに、相手のCHをフリーにしてしまうケースがでてくる。そうすると、ウズベキスタンのDF陣が前線の日本のプレスをかわすと、フリーのCHに縦パスが入って、そこから日本のDFの裏にボールが出される。その結果、日本の最終ラインは高い位置をとれなくなって、攻撃的な選手(岡崎、香川、本田圭佑、乾貴士)と守備的な選手(DFとCH)との距離が開くことになる。

 チュニジアとウズベキスタンの違いは、ウズベキスタンはサイドの選手をワイドに張らせることで、同時に日本の選手もワイドに開かせたことである(戦術として自らワイドにポジショニングするのと、相手にワイドに開かされるのではまったく違うことだ)。それによって、日本が前線からプレスに行ってもボールを追いかける距離があって、選手は相当に体力を消耗していたし、攻撃陣と守備陣の距離も縦に長く横に幅をとって、日本はコンパクトな陣形を保てないでいた。そのために、日本は何度もウズベキスタンの中盤の選手にフリーでボールを持たれて、ミドルシュートを打たれたり、バイタルエリアに入り込まれたりした。もしも、シュート精度が高ければ危ない場面があった。

 相手の中盤にボールを持たれても、日本のCHやCBが思い切って前に出て、ボールにプレッシャーをかけるというやり方がある。海外のクラブチームでよく見られるのは、CHを追い越してもCBが、ボールをもつ相手の中盤の選手を潰しにいく光景だ。日本のDF陣に必要なのは、リスクを冒しても「危険を回避する」というプレーである。このことは、実は、日本の守備に関してずっと抱えている問題だと筆者は見ている。

■香川真司と本田圭佑の微妙な立場

 2試合を通して、気になった選手がいた。いっこうにペースが上がらない香川である。ドルトムントの優勝に貢献したときの香川のプレーが目に焼きついている所為なのか、まったく輝きを失ってしまったように見えてしまう。もちろん、マンチェスター・Uにいたときよりも、多少なりとも復調の兆しはうかがえる。

 しかし、ハリルホジッチ監督のやり方は、香川の代わりに本田をトップ下にもってきて、左右のサイドに宇佐美貴史や武藤嘉紀、乾を置いても十分に機能すると思える。逆に、本田を活かすならば、トップ下に本田を置く方がよいのかもしれない。

 ただ、香川が調子を上げたならば、本田をサイドに置くことが問題になる。なぜならば、チュニジア戦では、両サイドの選手が上下に走って守備に貢献していたことが無失点につがっていたからだ。本田に守備の負担を負わせるよりも、本田をトップ下に置く。あるいは、香川をトップ下に置く。いずれにして、ハリルホジッチ監督のやり方では、2人の選手は、チームにとって絶対的な存在ではなくなりつつあることを、いまは、認識しておくべきだろう。

 相手のボールの「勢いを奪う」守備ではなく、相手のボールを「奪いとる」守備を浸透させたいハリルホジッチ監督に、日本の選手はどこまで応えようとするのか。あるいは、応えられるのだろうか。このテーマは、香川と本田にも突きつけられているのである。