前半の決定機は、青山の先制弾のみ。攻撃は機能していると言い難かった。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 4日前に韓国と引き分けたウズベキスタンに、5-1の圧勝。しかも、青山、宇佐美、川又が揃って代表初ゴールと、表面だけ見ればパーフェクトに近いゲームだった。

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 ただ、ゴールシーンを振り返ると、ハリルホジッチ監督がこだわる「縦のコンビネーション」からダイレクトに生まれた得点はひとつもなかった。
 
 先制点は青山のミドル、2点目は太田の左サイドからのクロスに合わせた岡崎のヘッド。3点目は柴崎のロングループ、4点目は横パスを受けた宇佐美のドリブルシュート、5点目は森重の折り返しから川又が頭で押し込んだものと、大半は個人技で決めたゴールだったのだ。
 
 チュニジア戦に続いて縦に速く仕掛ける意図は間違いなく見えたが、残念ながら現段階でゴールへとつながる“絵”にはまだなっていない。不完全燃焼の感は、本田のコメントからも窺える。「監督がやろうとしていることをできていた部分はあるが、まだまだ質が足りない。個人としても、チームとしてもそれを感じた」。
 
 実際、クオリティ不足によるミスが目に付いたのは、センターライン付近に縦パスが入った後の仕掛け/崩しの局面でだ。スピードを意識するあまり、出し手のパス、もしくは受け手のトラップが雑になり、エリアへ進入する前に自滅する場面が何度もあった。
 
 前半に限れば、決定機と言えたのは滅多にお目にかかれないワールドクラスのミドルシュート──青山の先制弾のみ。左ウイングの乾は最終局面でもたつきシュートに持ち込めず、トップ下の香川もどこかパッとしない出来で、攻撃はどちらかと言えば低調だった。
 
 ハリルホジッチ監督が「罠を仕掛けた」という後半は、相手を誘い出してスペースができたおかげでセンターライン付近では前半よりも縦パスが入るようになったが、バイタルエリアでのそれはあまり多くなかった。
 
 もっとも、ハリルホジッチ監督の就任2試合目ですべて上手くいくわけがない。新しいコンセプトを求められているなかで、いきなり流れるような攻撃を披露しろというほうが土台無理な話である。
 
 実践できるかはさて置き、内田が「(縦への)意識が出ているのはとても良いこと」と言うように、現時点で重要なのは意識の部分。どういうサッカーにトライするかを、チームとして共有できているかだ。
 
 その点、チュニジア戦を含めた今回の連戦では、誰がピッチに立っても「縦に速く」という目的意識は見て取れた。ウズベキスタン戦でそれが効果的に現われたのは、むしろ守備面ではなかったか。その証拠に、アジアカップでもいくつかあった、自陣の低い位置で横パスをかっさらわれてのカウンターというピンチは皆無だった。
 
 
 崩されたのは、ゴール前の混戦からトゥフタフジャエフに蹴り込まれた失点のシーンのみ。本田や内田に言わせれば、「あの1点が余計。大事な試合でもああいうところでミスが出る。突き詰めるべき部分」となるが、それでも──。以前のようなポゼッションにこだわり過ぎる故の守備面での危うさは、今回の連戦に限ればなくなっており、その点は大きな進歩と言っていい。

 なかでもポジティブに映ったのは、右SB・酒井高。アギーレ政権下では“つなぐ意識”に捉われ、アジアカップでも危険な位置でパスミスを連発していた彼がどうだ。「横」ではなく「縦」に重心を置いた途端、持ち前のアグレッシブさを出せるようになり、守備面での凡ミスは見当たらなかった。
 
 森重と昌子の両CBも相手にプレスを掛けられる前に「縦に速く」展開することで、リスクを回避していた。最終ラインで何本もパスを回さず、中盤か前線の誰かに素早く預けて守備に備える。そして敵にボールを奪われれば、両CBは「縦に速く」戻って裏のスペースを消していた。
 
 ちなみに、酒井宏、吉田、槙野、藤春が4バックを形成したチュニジア戦でも、「縦に速く」戻る意識は見て取れた。
 
 マークの受け渡しやゴール前での守備はまだまだ課題があった。それでも、勿体ないミスからの失点がなかった点は見逃せない。無用な横パス減によるリスク管理こそ、今回の連戦での最大の収穫ではないか。
 
 そこまで守備が上手くない柴崎をボランチではなく、トップ下で起用したのもひとつの「リスク管理」。ハリルホジッチは、アギーレ以上にミスを嫌う監督なのかもしれない。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)