“魔術師”が本領発揮、選手も驚いたハリル監督の奇策

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[3.31 JALチャレンジ杯 日本5-1ウズベキスタン 味スタ]

 一番驚いていたのは選手自身だったかもしれない。後半開始から投入されたDF水本裕貴(広島)に与えられたポジションは本職のセンターバックではなく、ボランチだった。

「僕の記憶の中ではJリーグのデビュー戦がボランチで途中出場だった。それ以外は記憶にない」というボランチでのプレー。「昨日の夜に監督から『もしかしたら』とは言われていたし、練習でもちょっとやっていたので」とはいうものの、ほぼぶっつけ本番だった。

 役目は2人のセンターバックの前に位置し、3人で相手の2トップを見るというもの。ダブルボランチを組むMF青山敏弘とはほぼ前後の関係になり、水本のポジションはアンカーに近かった。

 試合後の記者会見でバヒド・ハリルホジッチ監督は水本について「空中戦に強いと感じていた」と、ボランチで起用した理由を説明。「水本は『このポジションはやったことがない』と驚いていたが、前もって準備していた。これはタクティクス(戦術)だ。水本を入れてブロックをつくった」と語り、その意図と狙いを明かした。

「後半は罠を仕掛けた。我々はブロックを下げたが、これはわざとだ。相手を来させて、スペースを空けた。そしてボールを奪って素早く攻めた。それによって4点取った」

 後半怒涛のゴールラッシュ。ブロックを下げ、相手を自陣に引き込むことで中盤にスペースをつくり、速攻から追加点を奪う。まさに狙いどおりの試合展開に自画自賛だ。

「監督から『ここ(ボランチ)もできるんじゃないか』と言われた。『そういうのも見てみたい』と」。指揮官の言葉に乗せられたわけではないだろう。体を張った守備を見せ、中盤の底で“防波堤”となった水本。「いっぱいいっぱいだった。僕自身、(ボランチでのプレーは)ほとんど初めてで、うまくできたか、できてないか分からない」と、自己評価も難しかった。

 試合後はハリルホジッチ監督に声をかけられた。「『(ボランチも)できるだろ?』みたいな感じで言われて。『監督の言われたとおりにやりました』と答えました」。“魔術師”と称された戦略家の本領発揮。選手も驚く“奇策”が5発快勝を呼び込んだ。

(取材・文 西山紘平)