先発11人を入れ替える大胆な采配を見せたハリルホジッチ監督。短期間でチームに規律を植え付けた。写真:菅原達郎(サッカーダイジェスト写真部)

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 チュニジア戦から先発11人を入れ替えて、全員の能力を見極めたいという狙いがあったなかで、まず2連勝を飾った意義は非常に大きいと思う。4日前にアウェーで韓国と引き分けたウズベキスタンは、個々の局面でも強さがあり、決して弱い相手ではなかった。リスタートの流れから喫した失点は余計だったが、ブラジル・ワールドカップの3次予選で勝てなかったウズベキスタンに対して5点を決めたのだから、そこは十分に評価できる。

2015.3.31国際親善試合|日本 5 -1 ウズベキスタン

 スタメン全員を入れ替えた影響でコンビネーションに多少の難があったものの、「チームの規律」という観点から見ると、この試合は非常に面白かった。縦への速い攻撃とミドルシュートがこの日のテーマで、さらにチュニジア戦よりも全体のブロックを前に上げて、前線からプレスをかけながら高い位置でのボール奪取を狙っていた。
 
 なにより驚いたのは、たった2試合でここまで選手たちの意識が変わったこと。パスがつながらない場面はあったものの、ボールを奪った瞬間や横パスを1本入れた後には、確実に縦に入れようという狙いが見えた。なにが最も凄いかと言えば、FWが縦パスを受ける意識と、奪った瞬間に縦を狙うという中盤の意識が格段に上がった点だ。縦にパスが入るからこそ、その後のサポートも考えて周りが動き出している。
 
 例えば岡崎がパスを引き出す動きをした時、周囲の次への動き出しが明らかに早くなっている。それは「縦への意識」がチームの規律として組み込まれている証拠で、縦パスが入ることを前提として攻撃陣が動き出しているのは、今までの代表とは大きく異なる点だ。ザッケローニが監督に就任した当初、縦パスを入れていこうというスタンスで船出し、確かにその時は日本が変わったという印象を与えた。しかし、それが続いたのは数試合だった。その時以上に縦への意識は強く、選手たちも考えて動いているのがよく分かる。
 
 不安なのは、この縦に速いサッカーがどこまで続くか。個人的には、本当に続けてほしいという想いが強い。中盤でパスを回してタメを作るのが悪いわけではないが、それが常態化すると、縦に入れるべき時でもパス回しに固執してしまうし、そこが今までの悪癖だった。ハリルホジッチ監督は有無を言わさず縦に入れないと怒るし、あえてそうすることで、今は縦への意識を植え付けようとしているのだろう。日本がやろうとしているサッカーは世界の潮流と同じで、これからステップアップできそうな可能性を感じ取れた。
 チュニジア戦、ウズベキスタン戦と、ハリルホジッチ監督が見たくて途中から投入した選手が得点に絡んでおり、ここまで采配が的中するのは滅多にない。ちょっと出来すぎている感もあり、指揮官に対する期待が膨らんで、逆にプレッシャーにならないかと不安にもなるほどだ。

 ポジティブに映ったのは、ピッチに立つ選手が目の色を変えてアピールしていたこと。そして単に自分のプレーに走るのではなく、ハリルホジッチ監督が志向する戦術を遂行したうえで、誰もが自分の特長を出そうとしていた。つまり、チームの規律がベースにあり、プラスアルファで個性を出そうとしていたのだ。裏を返せば、個性を出しやすい環境をハリルホジッチ監督が作っていたとも言える。誰もが規律を大前提にし、縦への意識だけでなく、球際でボールホルダーに対して今までより30〜40センチ近づいて、ボールを奪おうとしていた。
 
 ただチュニジア戦に比べて、ウズベキスタン戦は球際での距離がやや空いており、そこは反省材料のひとつ。ボールホルダーに寄せ切れず、簡単にクロスを入れられて危険な場面を何度か作られた。特に開始10分ぐらいで本田や香川が右で組み立ててボールを奪われた際、ボランチが上がりすぎてあっさり崩された場面もあった。序盤にボランチが置き去りにされて、そこにプレスを掛けられない状況というのは、高いレベルであれば間違いなく失点に直結している。そうした課題は、これから徐々に詰めていかなければいけない。
 
 ハリルホジッチ監督の采配に関して言えば、これだけ多くのメンバーを招集して大半の選手を起用した意味は大きい。特にJリーグでプレーする選手たちに対して、誰にでもチャンスがあるというメッセージは確実に伝わったはず。6月のワールドカップ2次予選まで競争させて、徐々にチームを作ればいいという算段もあり、この2試合を通じた指揮官のマネジメント力は高く評価できる。
 
 とはいえ、トルシエやザッケローニの時も最初は良かった。問題は、今のような規律を徹底させながら、徐々にチームを作れるか。ザッケローニ時代のように選手に投げっぱなしで、結局、3-4-3をはじめ自分のカラーを出し切れなかった。あれは本田ら選手の意向を聞きすぎて、指揮官が求める戦術や規律を徹底できなかったのが原因。これから同じような問題が浮上するはずで、ハリルホジッチ監督がどのような手綱捌きを見せるか。そこはまったくの未知数ながら、指揮官が信念を貫き通し、日本の選手に合ったスタイルを構築できるか見守りたい。
 
 最後に、数人の選手に対して触れたい。まずボランチに入った青山はもともと縦への意識が強く、このサッカーは非常にやりやすいと感じているはず。今までは戦術との兼ね合いもあり、青山の蹴りたい場所と周囲の動き出すタイミングが上手く噛み合っていない印象だったが、今の戦術であれば彼の特性が十分に活かされるはずだ。
 
 また途中出場の川又は、ウズベキスタン戦の終了間際に初ゴールを決めたが、小林が負傷離脱しなければ巡ってこなかったチャンスをモノにした。最後まで高い集中を保ち、誰もが力をセーブし始めた時間帯でもゴールへの気迫を失わなかっただけに、「おめでとう」と言ってあげたい。
 
 そして、代表初ゴールを決めた宇佐美は、やはりシュート技術が高い。弾かれたシュートもあったが、ボールの置きどころが抜群に上手く、珍しくディフェンスもしていた。指揮官の起用法やゲーム後の接し方を見る限り、宇佐美に大きな期待を寄せているようだ。ハリルホジッチ監督はもともとFWでプレーしていただけに、宇佐美のプレーにセンスを感じているのだろう。

 ただルーズボールに対して身体をぶつけることもせず、サボっている部分もあり、どうしてもそこは目に付く。厳しいゲームになると、ひとつサボるだけでそこからやられてしまう。宇佐美にあえて言いたいのは、「守備も含めて、局面でもっと身体を張れ」ということ。あの天賦の才を活かしてほしいからこそ、そこは今まで以上に頑張ってほしい。