83分、宇佐美が敵ふたりの間をドリブルで抜け出し、強烈なシュートを決める。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 その瞬間、己のなかに溜まっていた様々な想いを爆発させるように、思い切り飛び跳ね歓喜のポーズを作った。
 
 途中出場の宇佐美貴史が、ついに代表初ゴールを突き刺した。
 
 83分、前線のスペースを突いた背番号30が、大迫からのフィードをペナルティエリアの前で受ける。その瞬間、ドリブルで抜けて行くふたつのコースの選択肢が頭に浮かんだという。
「どちらのコース取りで行こうかと思ったが、パッとシュートまでのイメージが浮かんだ」
 
 選択したのは相手DFふたりの間の狭いスペースを抜ける、“やや難解だが突破できればビッグチャンスになる”というルートだった。
 
 ボールに細かく触れながら、急激なギアチェンジでトップスピードへ上げると、持ち前の切れ味鋭いジャックナイフばりのドリブル突破でその道筋を踏破。
 
 GKトゥラエフと1対1になると、「この間(チュニジア戦)は、サイドへ転がすシュートを打って外していた。だからパンチがあるように、強めに蹴ることを意識した」と一瞬で判断し、インステップで狙い澄ましたショットをゴール隅に確実に突き刺した。
 
 チュニジア戦での決定的なシュートがゴールポストに嫌われ、ボールが手前に戻るように転がってきた。あのシーンも、今回のための小さな試練だったとも言えた。実際、よりインパクトの残る鮮やかなショットだった。
 
 もちろん、喜びを爆発させたとはいえ、このゴールの伏線は理解している。決して、自分の力だけで生まれた初得点ではない、と――。
 
「(先発した)2列目の3人が流動的に動き続けていたから、相手を疲れさせてくれた。だから僕ら(途中出場の選手)は、トドメを刺すために出ていったと言える。力を出しやすくしてくれた。スタート(試合開始)から出ていたら、違っていた」
 
 そして宇佐美は強調した。
「だからこそ、結果を出すことが大事だった」
 
 印象的だったのは、宇佐美が「結果」という言葉を何度も繰り返していたことだ。
「なんとしてもここ(日本代表)に残るために、『結果』を残すことを繰り返さないといけない」
「同じミスをしないことが大事だった。やっぱり『結果』しかない」
「誰もが『結果』を求めている」
 
 この試合で、いったい、自分になにが求められているのか。それは「結果=ゴール」しかない。そう自らに言い聞かせてピッチに立ち、その自分自身に対する回答を示した、まさに入魂の一撃だった。
 そして、彼は「感慨深い」という言葉に想いを込めた。
「代表でプレーすることを意識して、そのうえでドイツに移籍もした(11-12シーズンにバイエルン、12-13シーズンにホッフェンハイムでプレー)。それだけに感慨深い。ただ岳がゴールを決めた時(80分、チームの3点目をロングシュートで決める)はクールだったでしょ。でも僕は落ち着きがないなって思った……。でも、『らしさ』は出せた」
 
 ようやく大きな肩の荷がひとつ下りたように、安堵の表情を浮かべていた。
 
 ゴールを決めたあと、「13歳から一緒にやってきた」という柴崎岳とまず抱き合い、やがて大きな歓喜の輪ができる。ベンチにいたチームメイトたち、とりわけJリーグ組が一緒に大きくガッツポーズを作って喜んでいた。
 
 今回招集された最年少の柴崎と宇佐美が揃ってゴールを決めた。先日初キャップを刻んだばかりの川又も、気持ちで初ゴールをねじ込んだ。
 
 宇佐美らと同い年の武藤も、ロンドン五輪世代の大迫、清武、永井も、そしてノーゴールに終わった本田や香川らも、このまま黙っているわけがない。
 
 こうしてチーム内の押し上げを図れたことで、日本代表内での新たな戦いが始まる。宇佐美のゴールがもたらす効果は間違いなく大きい。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)