錦織圭が、マスターズ1000・マイアミ大会で、4年連続のベスト16進出を決めて、世界ランキング5位の強さを披露している。

 15年大会では、ロジャー・フェデラー(ATPランキング2位/大会時)が、大会直前に出場辞退を表明し、錦織は第4シードに繰り上がった。

 初戦となった2回戦では、ミハエル・ユーズニー(64位)を、6−2、6−1で破り、続く3回戦では、ビクトル・トロイツキ(39位)に、6−2、6−2で勝利。得意のストロークが安定し、ラリーでは終始主導権を握った錦織が、シード選手として格の違いを見せつけた。

「2試合共に、いい調子で来ている。相手にもよりますけど、こういったスコアで勝てているのは、いいスタートだと思います」

 昨年のマイアミ大会のころのランキングは17位だった錦織だが、今やトップ10プレーヤーに成長を遂げ、ATPワールドツアーを代表する選手のひとりになった。

「気持ち的には、そんなに変わらない。ランキングが変わったからといって、そんなに深くは考えていないので、いつもどおりプレーすることを心がけています」

 錦織はマスターズ1000の開幕戦であるインディアンウェルズ大会では、4回戦で敗れた。インディアンウェルズ大会は、アメリカ西海岸のロサンゼルスから車で約2時間の砂漠地帯のオアシスで開催され、好天続きで空気が乾燥している。そのため、ボールの飛びが良く、超攻撃型プレーヤー向きの大会といえる。ただ、錦織にとって、スピンのきいたボールが高くバウンドしてくるインディアンウェルズのハードコートは相性が悪く、今年のベスト16が最高成績だ。

 一方、今回のマイアミ大会は、マイアミのダウンタウンから車で約20分のキービスケーンという島に会場があり、高温多湿で海風が吹きつける。錦織が拠点にしているブラデントンからマイアミまでは、車で約5時間の距離にある。フロリダ半島の南端にあるマイアミは、慣れ親しんだブラデントンの環境に似ているのだ。

 そのため、この地で開催される大会と錦織の相性はすこぶる良い。17歳の時、ジュニアの部のルキシロンカップで優勝。20歳の時は、マスターズ1000レベルのマッチ初勝利を挙げた。そして昨年のこの大会では、フェデラーを破って初めてベスト4に進出している。

「マイアミの大会は好きですね。コートや雰囲気にやりやすさを感じます。(ハードコートが)僕にとって、ちょうどいいぐらいの速さ。それに、ロジャーとの試合からは、たくさんの自信を得ました」と錦織自身も相性の良さを認める。

 インディアンウェルズ大会で敗れた後、錦織は一度ブラデントンに戻り、ダンテ・ボッティーニコーチとマイアミ大会に向けて調整した。

「圭の調子はいいよ。インディアンウェルズの後、数日間ブラデントンで、私と一緒に準備してきました」と語るボッティーニコーチが、マイアミでの練習で、たびたび錦織のサーブにアドバイスをする場面が見られた。

「サーブのトスを、目線からもう少し右側に上げて、コートの中でボールを捕らえて、サーブを打ち終えるようにアドバイスしています。これは特別なことではなく、圭のサーブについてはマイケル(・チャン)と一緒にディスカッションしながら取り組んでいます」

 また、昨年はマイアミに来なかったチャンコーチだが、今年は試合前の錦織の練習を見守っていた。

「圭はいいプレーをしていると思う。ここでいい試合ができるといいね。(第4シードは)必ずしもアドバンテージになるとは言えません。インディアンウェルズでは第5シードだったけど、ベスト8にいけなかった。つまるところ、ドローのセクションにどういった選手がいるかによる。1試合ずつ戦うしかない」(チャンコーチ)

 2015年シーズン、錦織はメンフィス大会で優勝を飾り、アカプルコ大会では準優勝。一時、自己最高のATPランキング4位に到達した(現在は5位)。

「まだまだ満足はしていないですけど、順調に来ていると思います。悪くないスタートを切れている」−−そう語った錦織は、世界トップ5のポジションが、ようやくしっくりきているようだ。

「メンフィスぐらいまで、自分のランキングに居心地の悪さを感じていましたけど、時間がたつにつれて、自然と慣れてきたり、(ランキングのことを)考えなくなってきました。初心に戻れているように感じます。プレッシャーはなくなってきた」

 錦織が、今シーズンの目標の一つに掲げているマスターズ1000大会の初優勝を、相性のいいマイアミでできるかどうかが注目される。現在の錦織の実力なら、優勝候補の一角だ。

「マスターズの優勝は、やっぱりまだまだ大変だなというイメージが大きいですけど、マイアミでは、いいプレーが自然とできていると思うので、可能性はあると思います」

 ボッティーニコーチも期待を寄せる。

「圭は、どの大会でも優勝を目指しているけど、マイアミで初優勝できたらいいね」

 4回戦で錦織は、第18シードのダビド・ゴファン(20位)と初めて対戦する。

 さらに順当にいけば、準々決勝では、第5シードのミロシュ・ラオニッチ(6位)、準決勝では第1シードのノバク・ジョコビッチ(1位)との対戦が控える。

 第4シードの錦織にとって、これからが本当の勝負だ。

神仁司●文 text by Ko Hitoshi