北京の地元紙「新京報」は31日、日韓、さらに中国までが加わった“桜の起源論争”を批判する論説を掲載した。世界の文化史においては伝播と融合が絶え間なく発生したと指摘。中国人が自国の古い文化を自慢することも批判した。(イメージ写真提供:123RF)

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 北京の地元紙「新京報」は31日、日韓、さらに中国までが加わった“桜の起源論争”を批判する論説を掲載した。世界の文化史においては伝播と融合が絶え間なく発生したと指摘。中国人が自国の古い文化を自慢することも批判した。

 論説執筆者はコラム作家の潘采夫氏。潘氏は「私は日本語も韓国語も分からない」(解説参照)と論じた上で、中国からも「桜の原産国はわが国」との主張が出たことを批判した。

 潘氏は、多くの中国人が「古代中国は歴史上の『スーパー大国』であり、日韓に対する影響は極めて大きかった」といった話を喜ぶと指摘。ただし、歴史上の偉業は「古い祖先の話。(今を生きる)われわれには関係ない」、「毎日口に出すのは、(現代中国人の)自信のなさを示すもの」と主張した。

 潘氏は、中国が世界の他の文明から受けた恩恵も考えるべきと主張。トウモロコシ、サツマイモなど10種類以上の農作物を挙げ、「すべて欧州人がもたらしたもの」と指摘。さらに、中国人が重要な主食である小麦も西アジア産として、それらがなければ「今の中国人の生活は成り立たなかった。そのことについてなぜ言及しないのか」と、歴史や文化における「自国自慢」を批判した。

 中国では韓国人に対して「さまざまな文化を自国起源と強弁する」との批判がある。潘氏は、中国人も同様のことをしていると指摘。例として「サッカーの起源は中国で春秋時代に確立された蹴鞠(けまり)」という言い方を挙げた。

 潘氏は、現在のサッカーにつながる競技は12世紀に英国で始まったと指摘。さらに、現行ルールは100年余り前に定まったとして「起源は中国にありと強弁することに、どんな意味がある?」と論じた。

 潘氏は論説の最後の部分で「政治ならば勢力争いをしてもよい。経済は競ってもよい。ただし文化は相互に尊重せねばならない。文明は享受せねばならない」と主張した。

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◆解説◆
 潘氏は上記論説で、「桜の起源」についての日韓の論争は「よく知らない」と述べている。実際には日本人が「桜の原産国は日本」とは主張しているわけではない。論争の発端は、日本における品種改良で出現したはずのソメイヨシノについて、「韓国原産」との声が上がったことだった。

 客観的に言って、世界的な有名なものについて、日本において「実は日本起源」という意見が“盛り上がる”ことは、あまりない。せいぜいが「似たようなもの(方法)は、日本にもあった」程度だ。日本人は、「古い時代から中国など周辺国から文化面で大きな恩恵を受けた」ことをそのまま認め、「伝えられたものを守り、場合によって改良したこと」をむしろ自らの誇りとしているからと考えられる。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)