1990年の『ニキータ』以来、テンポの良いスタイリッシュな作風でアクション映画のひとつのテンプレを生んだリュック・ベッソン。近年は製作者として作品に名を連ねる一方、監督としてはキッズ向けファンタジーやアウンサンスーチー女史を題材にした社会派作品を手掛けています。

 そして、2014年。スカーレット・ヨハンソンを主演に迎えた得意の女性主人公モノで、しかも現代SFという『LUCY/ルーシー』が公開。ベッソン監督作品最大のヒットとなった本作ですが、そのトンデモな内容は、観る人によっては超絶ポンコツ作という脅威の逸材だったのです!

悪い恋人に騙され、クスリの運び屋として身体に新種のドラッグ(入りのビニール袋)を埋め込まれてしまった主人公ルーシー。しかも監禁された際に体内に麻薬が漏れ、彼女の脳が覚醒して超人類になっちゃったお話。

 普段、10%しか使われていない脳の機能が、100%になったら?というのが本作のテーマ。ルーシーは徐々に100%の覚醒に近づいて行くんですが、銃の扱いや格闘術が天才的腕前になるのとは別に、誰に教わるでもなく医学的知識まで把握する超秀才に変貌(中盤以降はPCとネットで情報収集しますけども)。
 しかも英語が分からない相手の頭に手を当てて記憶を読み取るという、SF考証を激しく無視したアメコミあるいはアニメ的演出が中盤以降、顕著に。自分で自分の覚醒率のパーセンテージをズバリ言い切っちゃうルーシー嬢は、完全に中二病です。

 2002年版『タイムマシン』とか『E.T.(のポスター)』とか、どこかで観たことのあるシーンが散見されるんですが、クスリでの超能力覚醒や、力の暴走をクスリで抑えたり、さらにその後の病院での戦闘場面、さらにオチなどで、漫画『AKIRA』の「島鉄雄」のイメージが本作の根幹に影響している節がうかがえるのもポイント(ちなみに『AKIRA』はフランスの日本漫画文化定着を促した記念碑的作品)。

 度々パクり癖が指摘される御仁でしたが、かつて業界の寵児になっをリードした人物とは思えぬこの無節操振りは、進化と捉えて良いのか、安易な真似事と憂いだ方が適切なのか......。

 プロレス的にみれば、アンダーテイカーが"バッドアス"ギミックへの転向時に取り込んだMMA(総合格闘技)ムーブの数々が、格好良いんだけど、イマイチ使いこなせてない姿(使い始め当初のユルユル三角絞めなど)に、観てるコッチがモヤモヤしちゃう感覚と似ています。
 ベテラン選手が自身のキャラやスタイルにフィットしてない新技を使うと、ファンの方が気を揉むことが意外とあるんですよね。

 ただ、テイカーのMMAムーブ同様、ベッソンさん本人が好きでやってるならまあ良いか、と思えて来るのはその迷いの無さ故でしょうか。

 ベッソン監督が趣味全開で造っちゃた気がする本作ですが、シャレオツなガンアクションやカーアクションなど元来のスタイリッシュさはどうにか保たれているし、敵役が秘密組織や国家組織ではなく、コリアンマフィア(ボスは『オールド・ボーイ』などで知られる韓国大物俳優チェ・ミンシク)という無理矢理すぎるノワール臭は、間違いなくベッソン印。トンデモエスパーとのミスマッチバトル感をご堪能アレ!

(文/シングウヤスアキ)