アジア杯の劇的弾から2カ月…再びレギュラーを狙う柴崎岳の“静かなる闘志”

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文=元川悦子

 ヴァイッド・ハリルホジッチ新監督率いる新生・日本代表の初陣となった27日のチュニジア戦(大分)では、川又堅碁(名古屋)、藤春廣輝(G大阪)らが代表デビューを飾った。が、ボランチは2014年ブラジルワールドカップの主力である長谷部誠(フランクフルト)と山口蛍(C大阪)がコンビを組んだ。

 国際Aマッチ88試合目の長谷部は長い経験に裏打ちされた安定感を前面に押し出し、新指揮官の求める縦に速い攻めにも可能な限り順応。山口蛍もブラジル大会・コロンビア戦(クイアバ)以来の代表戦とは思えない球際と寄せの激しさを披露し、改めて絶大な存在感を示した。

 ハリルホジッチ監督は「31日のウズベキスタン戦(味スタ)ではほとんどのメンバーを入れ替える」と明言しており、異なるボランチがピッチに立つのは確実だ。

 その候補者は32歳の今野泰幸(G大阪)、29歳の青山敏弘(広島)、そして22歳の柴崎岳(鹿島)の3人。

「今は若い世代がさらに出てくる時期なのかなと思いますし、僕らはその中心としてしっかり代表の中心として残っていけるようにしたいなと。まずはロシアという部分もありますけど、さらにその先もあるので、そういったところまで見るのであれば、もっと若い選手が出てきてもいいのかなと思います」

 ボランチ最年少の柴崎は2018年ロシア、2022年カタールの両ワールドカップを視野に入れ、自分たち若い世代が台頭しなければならないという強い自覚を口にした。

 アルベルト・ザッケローニ監督に何度か招集されながら、チャンスを逃してきた若武者にとって、ハビエル・アギーレ監督時代の代表定着は非常に大きな一歩だった。しかしながら、昨年10月のブラジル戦(シンガポール)での惨敗を受け、メキシコ人指揮官がベテランを大量に呼び戻したことで、今年1月のアジアカップ(オーストラリア)の柴崎は再び遠藤保仁(G大阪)の控えに甘んじることになった。その遠藤が連戦の疲れからパフォーマンスを落とした準々決勝・UAE戦(シドニー)で途中出場のチャンスを得て、目の覚めるような同点弾を挙げ、柴崎の存在価値は一気に高まった。だが、日本がまさかのアジア8強止まりに終わり、アギーレ監督もスペイン時代の八百長疑惑によって契約解除され、彼が積み上げたわずかな代表実績は振り出しに戻ってしまった。

 ハリルホジッチ新監督率いる現体制では、全くゼロからのポジション争いを強いられることになった柴崎。しかも競争相手はワールドカップ経験者ばかりだ。新指揮官は若返りを強力に推し進める意向を示しているものの、若い彼だけを特別扱いするはずがない。柴崎が球際や寄せの激しさ、守備面でのアグレッシブさ、縦に速い攻めというコンセプトを理解し、実践しない限り、出番を増やすのは難しいのだ。

「(ハリルホジッチ監督の就任で)競争心、競争力は上がると思います。監督もまだまだ個々のことが分からないのが本心にあるでしょうし。試合に出て選手個々が理解されれば、徐々にチームもできあがってくる。そこに食い込んでいけるかっていうのは選手個人の実力次第かなと思います。そういう競争はあっても、チームが意思統一してやることが一番大切。やっぱりチームあってこそで、個人の特徴はその次。まずはしっかりと11人がチームとして機能することが一番大事だと思います」

 柴崎は熾烈なサバイバルの中でも、チームの一員として献身的にプレーすることの重要性を今一度、心に刻み付けているようだ。

 周りを生かすために、精力的にボールを追いかけ、守備面で貢献し、そのうえで彼の得意とする縦への展開を出せれば、ハリルホジッチ新監督の信頼を勝ち得ることにつながる。しかも、今回はアジアの強力なライバル・ウズベキスタン相手だ。その試合で大きな自信と手ごたえをつかめるか否かは、本人も言うように、自分自身のパフォーマンス次第だろう。

「僕は4年間、岳と一緒にやって、練習で毎日顔合わしてるのに、毎回鳥肌の立つプレーを練習中にする。いまだにどこが自分のマックスなのかっていうのを全然分からん選手やし、正直、恐ろしいなっていうのはすごい感じてるし」と同期の昌子源(鹿島)も柴崎の内に秘めた可能性を絶賛していたが、今こそその底知れぬ才能を前面に押し出す時である。

 コンビを組むのが今野なのか、青山なのか分からないが、誰と出ても新指揮官の求めるスタイルを実践しなければならない。それができて初めて、彼はロシアへの力強い一歩を踏み出すことができる。そういう意味でもウズベキスタン戦が楽しみだ。