粘り強さで奪った先制点。前半終了間際のゴールは非常に貴重なものだった。南野(左)と喜びを分かち合う。 写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 キックオフを迎える頃は雨脚が弱まっていたものの、試合開始約1時間前に降り出したスコールの影響で、「足首まで埋まるようなピッチ」(手倉森誠監督)に日本の選手たちは手を焼いた。
 
 5バック+中盤4枚で分厚いブロックを組んで守りを固めてきたベトナムは、予想どおり球際も激しく、日本は思うように相手の堅牢なディフェンスを崩せずにいた。
 
 攻めあぐねる展開のなか、それでもいくつかのチャンスを築いたが、そこには背番号10の姿があった――。
 
 14分、矢島慎也の縦パスに南野拓実が絡み、中島翔哉がタイミング良く抜け出そうとする。その2分後、松原健のクロスに中島が飛び込むもわずかに合わせられなかったが、23分には大島僚太のパスを南野がスルーして、受けた中島が際どいシュートを放つ。これは惜しくも相手GKのセーブに阻まれたが、日本の最初の決定機を演出してみせた。
 
「味方がフリーであれば、相手の背後(を狙って)、得点に一番近い動きを意識していた」
 
 そうした狙いはある程度奏功した部分もあったが、なかなかゴールに結び付けられない。中島自身「それだとちょっと停滞していたのもあったので、受けながら前に入っていこうと言う風に変えました」と前半を振り返る。
 
 日本にとって難しい時間帯が続くなか、攻撃の中心的役割を担う中島は試行錯誤を繰り返していた。いついかなる時もサッカーを楽しむことを大切にし、「ボールに触らないと面白くないから」という言葉どおり、積極的にプレーに関与しては、ゴールへの道筋をつけようと奮闘していた。
 
 ともに初戦で勝点3を掴んだ同士の対戦であり、1次予選突破の鍵を握るこのゲームで、手倉森監督は「彼(中島)と(久保裕也、南野の)海外組を組ませた」。
 
 チームがさらに進化していくための注目ポイントのひとつで、3人の連係に「少しのズレがあった」(手倉森監督)にせよ、「そういったなかでも(中島は)辛抱強く、最後までプレーしてくれた結果、彼にゴールという褒美が訪れたと思います」と指揮官は評価する。
 
 その最初の“褒美”は、前半終了間際に訪れた。

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「拓実からすごく良いパスが来て、本当はそのまま打ちたかったんですけど、切り替えをしたら相手に取られそうになった。だけど、そこでも拓実がフォローしてくれて、決めることができました」
 
 エリア内で南野からの巧みな浮き球のパスを収め、ワンフェイクで目の前のDFをかわしたが、後ろから迫ってきた相手に邪魔をされる。それでも、粘り強く相手に食らいつき、混戦のなかで南野がルーズボールをうまく処理できずにいたところを、こぼれ球に素早く反応した中島が左足をコンパクトに振り抜き、待望の先制点を奪ってみせた。
 
 このゴールで、手倉森体制下での最多得点記録タイとなる12得点目をマーク。同じゴール数を積み重ねる鈴木武蔵と並んだ。チーム立ち上げ当初からの“常連”であるふたりは、不可欠な得点源として攻撃をリードする存在であり、またお互いに切磋琢磨し合える仲間でもあるのだろう。
 
 鈴木だけでなく、ふたりの海外組はもちろん、浅野拓磨、荒野拓馬、野津田岳人、豊川雄太、矢島など、チームメイトではあるが、ある意味、ライバルとなる選手は少なくない。そうした競争に対して、「すごく楽しみだし、負けられないなという想いもあります」と語る中島の胸中は、確かな手応えと充実感に満たされているはずだ。
 
 ふたつ目の“褒美”はロスタイム。浅野のアシストからダメ押しの2点目を叩き込む。これでチーム通算得点では単独トップに立ち、自らの存在価値をさらに高めてみせた。
 
 もっとも、これだけのハイパフォーマンスを見せても、本人に満足する気は一切ない。
 
 結果を出せたことは素直に「嬉しい」と認めるものの、「クオリティがまだまだ低い。そこが心残り」と自己採点は厳しい。苦労した前半については「ファーストタッチやコンビネーション、スルーパスの精度が低かった。もっと技術を上げていかないと」と飽くなき向上心をあらわにする。
 
 2ゴールの活躍も「もっと取れたと思います。相手がさらに強くなれば、今のままだと苦しくなるだろうし、だから次の試合もしっかりと成長できるようにしたいです」。
 
 大事な試合で決定的な仕事をしたにもかかわらず、反省の言葉が口をついて出る姿に、エースナンバーを背負う男の矜持と責任感を強烈に感じた。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)