誰もが年齢を重ねても、ハリがあり、キメの整った健康的な肌をキープしたいと考えるはず。そのためには日々のケアが重要になってくるのだが、最近の研究により、ある内蔵器官が、肌に大きな影響を与えることがわかってきた。その器官とは、ズバリ「腸」。それも腸の状態、いわゆる腸内環境が、肌の健康状態を左右するという。何やら唐突な印象も否めないが、再生医療を研究するRサイエンスクリニック広尾の日比野佐和子院長は、こう話す。

「どんなに体によいモノを食べても、腸が健全でなければ、肌の健康に必要な栄養分が吸収されません。そればかりか、老廃物など不要な物質が体外に排出されないまま腸で吸収され、血流に乗って体内を巡ってしまう場合もあり、これが肌へのダメージとなり、吹き出物やくすみなどの原因となります」

春は気温や湿度の変動に加え、花粉の飛散、さらには就職や異動、転勤といった不慣れな環境などにより、肌ストレスが高まる時期。そんな季節だからこそ、腸内環境を整えることで肌の状態を整え、心身共に爽やかな新生活をスタートさせよう。

◎皮膚の状態は内面的な要因に大きく左右される

さて、そもそも「美しい肌」とは、どんな肌なのか。日比野院長によれば、一般的に「潤い」「滑らかさ」「ハリ」「弾力」「血色」「ツヤ」の6要素がすべて揃った状態のこと。しかし、肌は紫外線や冷暖房機器、さらに生活習慣などの影響を受けやすく、その状態は常に変化しているという。

しかも男性は女性の肌よりも水分の蒸散量が多く、同時に皮脂の分泌量も多い傾向にある。つまり夏はオイリー肌、冬は乾燥肌となりやすく、バランスをキープすることが難しい。ゆえにオトコこそ、スキンケアについて考え、これを速やかに実行する必要があり、そのポイントとなるのが腸というわけだ。日比野院長に、改めて説明していただこう。

「保湿ケアなど、外部からのアプローチも大切ですが、皮膚の老化原因には、内面的なものが大きく影響しているといわれています。ここでいう内面的なものとは食事、運動、睡眠のこと。睡眠は精神も言い換えられます。

まず食事は直接、口から入るもので、体を作る栄養素を得る元になります。その栄養素が入ってくる消化管が不具合を起こすと、最初にお話したように体や肌に有効な栄養素が効率良く吸収されません」

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Rサイエンスクリニック広尾
日比野佐和子・院長

大阪大大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学特任准教授(兼務)。専門分野は欧米のアンチエイジング医学に加え、中医学、ホルモン療法など多岐にわたり、研究分野においても国際的に活躍中。

さらに日比野院長によれば、腸は人間の健康状態を左右する重要な役目を担っているという。

「人間を病気から守る免疫も、60%を腸が担っていることが判明しています。つまり腸の環境を改善すると、かぜをひきにくい、花粉症に強くなるといった体質の改善にもつながり、病気になりにくい体になることが期待できます。

そして、脳内ホルモンのひとつであるセロトニンの分泌の9割以上は腸で行なわれていることがわかってきました。セロトニンは心をリラックスさせ、上質な睡眠に導く脳内ホルモンで、これまでは脳で分泌されると考えられていました。これらの研究成果により、今では腸を『第2の脳』と呼ぶ研究者もいます」

 つまり健康な腸であれば、肌に必要な栄養素を確実に補給するだけでなく、免疫の活性化に伴う体質改善や、セラトニンの分泌による上質な眠りが、肌のケアにもつながるというのだ。

「人間の寿命は動脈硬化とがんを予防すれば、理論的には125歳まで伸びる、といわれています。動脈硬化は血管の老化。血管が老化すると末梢まで血液が届かないことで、最終的に組織の老化につながります。がん対策は免疫力が重要で、この両方に腸内環境は密接に関係しています。腸内環境を整えることが、健康と長寿にもつながり、表層的には猗肌瓩箸いΨ舛埜修譴襪里任后

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◎ヨーグルトなどの乳酸菌を含む食品が美肌に導く!? 

では、どうすれば腸内環境を整えることができるのか。

「腸内の状態は、腸内細菌である善玉菌と悪玉菌のバランスによって決まりますから、腸内環境を整えるには善玉菌を増やすことが、いちばん効果的。また、人間の腸は加齢とともに悪玉菌がすみやすい環境に変わってしまうので、これを抑える手段も必要です。それには乳酸菌を含む発酵食品を摂ること。なかでもヨーグルトは最も身近で効果的な食品と言えます」

ちなみに自分は大食いや激辛なんでもOKだから、胃腸は丈夫、というわけではない。むしろ「大食いは胃下垂の原因となるだけでなく、刺激の強い激辛成分が腸管を傷つけるおそれもあります」(日比野院長)。

また激辛といえば、キムチも発酵食品のひとつで乳酸菌が摂取できるが、「塩分の摂り過ぎにもつながるので、ヨーグルトがいちばんいいですね」(日比野院長)

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乳酸菌が肌へ及ぼす効果については、これを実証する研究結果も報告されている。東京女子医科大学と国内大手食品メーカーが共同研究を実施。慢性的な便秘で肌が乾燥している2039歳の女性56名に、ヨーグルト120ml12×4週間食べてもらったところ、下のグラフのような改善が確認されたのだ。

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出典:Isawa.et.al.『腸内細菌学雑誌』22:1-5, 2008

 また、ヨーグルトだけでなく、オレンジやキウイ、リンゴなどを添えることもポイント。

「これらの果実に含まれる食物繊維は善玉菌のエサになるので、できるだけヨーグルトと一緒に食べてください」

つまり、肌ケアにはバランスのよい食事を心がけ、肉体と精神をしっかり休める。そしてヨーグルトに代表される乳酸菌を含む食品を摂取することで、腸内環境を整えていくこと。

「いつまでも若々しい肌であり続けるには、外側からのケアだけではなく、体の内側からの効果的な対処を施していくことが、最も大切になります」

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文/編集部