始まった新たな競争…出遅れた乾貴士、サイドの定位置奪回なるか

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文=元川悦子

 27日のチュニジア戦の後、6日間過ごした大分を後にし、31日のウズベキスタン戦(味の素スタジアム)の地・東京へ移動した新生日本代表。東京合宿初練習となった29日は当初、午前と午後の2部練習の予定だったが、ヴァイッド・ハリルホジッチ新監督は選手たちの疲労を考慮したのだろう。17時半からの1回練習にとどめた。

 チュニジア戦で右大腿ハムストリング筋挫傷を負った酒井宏樹(ハノーファー)は2日連続欠席となったが、それ以外のメンバーは揃ってピッチに登場。毎日恒例となった指揮官の5分程度の訓示を経て、ランニング、もも上げ走などのアップ、ボールコントロール、3対3のサッカーバレーを1時間程度消化。ラストでは体幹トレーニングにも取り組んだ。時折、雨もぱらつくあいにくの天候だったが、選手たちは明るく元気に全てのメニューをこなした。

 大分合宿中の24・25日に体調不良を訴えて練習を2日間欠席した乾貴士(フランクフルト)も完全に回復し、切れ味鋭い動きを取り戻した様子だった。「お腹を壊したというより、胃が気持ち悪い感じ。発熱もちょっとありましたけど、もう全然大丈夫です」と本人も健康体を強調した。

 乾はハビエル・アギーレ前監督体制では左サイドアタッカーのファーストチョイスと位置づけられていた。1月のアジアカップ(オーストラリア)でも全4試合に先発。2009年1月のイエメン戦(熊本)で国際Aマッチデビューを果たしたものの、岡田武史(現FC今治代表)、アルベルト・ザッケローニ監督時代は代表定着が叶わなかっただけに、6年越しの代表レギュラー獲得で1つの手ごたえと自信をつかんだはずだ。

 しかしながら、彼を認めてくれたメキシコ人指揮官はスペイン時代の八百長疑惑で契約解除となり、乾は再びゼロからの競争を余儀なくされた。その重要な一歩で体調不良を起こしたのは本人も想定外だっただろうが、逆にハリルホジッチ監督の求めるスタイルをじっくりと理解する時間的を得た。チュニジア戦でタテに速いサッカーにトライする仲間たちの一挙手一投足を見て、自分なりにどうすればいいか考えることもできたようだ。

「この間も『タテに速い攻撃』と言ってて、武藤(嘉紀=FC東京)と永井(謙佑=名古屋グランパス)がサイドにいましたけど、それだけだとやっぱりきついし、どこかで落ち着かせないといけないなと。ああやって真司(香川=ドルトムント)と圭佑くん(本田=ミラン)が出て、落ち着いたのはありましたし、そういうところを入れながら臨機応変に攻撃をやっていきたいなと。監督が『まずは前を見ろ』って言うのは、自分たちがその意識が低いことを指摘してくれているんだと思う。それをやりつつ、違う選択肢も持てたらいいいですね」と、乾は状況に応じてリズムを変えられるような、高度な戦術眼の必要性を口にした。

 高度なテクニックとスピードを備える乾は、日本代表に一味違った攻撃バリエーションをもたらせる貴重な存在だ。ドリブル突破もタメを作る動きも、裏への飛び出しもOKというのはやはり大きい。

「いろんなパターンで攻撃するのは一番相手も嫌だと思うので、しっかりその辺を出していければいいかな」と、乾自身もピッチに立った時には変化をつけていく意向だという。

 4−2−3−1の左アタッカーのポジションは今回もまた武藤との競争になりそうだ。武藤はまだ新体制でゴールを奪っていないだけに、乾としては得点に絡む明確な動きでインパクトを残したいところ。ウズベキスタンというアジアのライバル相手に、ドイツでの経験を遺憾なく発揮してほしいものだ。