ドキュメンタリー映画公開初日を迎えた安川惡斗

写真拡大

 “顔面崩壊”騒動で、時の人となってしまった女子プロレスラー・安川惡斗(やすかわあくと)の半生を追ったドキュメンタリー映画『がむしゃら』の初日舞台あいさつが28日、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで行われ、安川と高原秀和監督が出席した。去る2月22日、女子プロレス団体・スターダムの王者・世IV虎(よしこ)との試合が、むごたらしい殴り合いに発展。顔面骨折の重傷で病院に搬送され、“顔面崩壊”と騒がれた安川だが、この日は顔の包帯もとれ、元気そうな姿であいさつに臨んだ。

 この日の壇上で安川は、「まだ物が二重にぼやけて見えるし、階段も怖いですが、昨日病院で、ジムのマシンを使った練習はOKをもらいました。来週から始めます。明日は、スターダムのリングに上がってあいさつします」と現状を報告。その報告と順調な回復ぶりに、ひと安心といった空気が会場に流れる。

 中学時代からのいじめ、登校拒否、レイプ、自殺未遂、予期せぬ病気など、次々と困難に見舞われ、人生を諦めかけるも、医師の言葉や演劇、女子プロレスとの出会いで生きがいを見つけ、リングに立ち続ける安川の姿を鮮烈に映し出す本作。2年間、彼女を追い掛けた高原監督は「あの試合の話題が先行したけれど、もうそろそろいいんじゃないか。騒動とこの映画を関連づけられるのは、もうイヤ。映画を純粋に、映画として観てほしい」とくしくも注目を浴びることになった一連の経緯に対する、複雑な心境を明かした。

 一方の安川は「22日の件でわたしを知ってくれた人、特に暴力を受けて悩んでいる女性がいたら、この映画で全国をまわりたい。『若いときの苦労は買ってでもしろ』っていうじゃないですか。だから、全都道府県制覇が目標。そのために骨をくっつけて、ムキムキに肉体改造してカッコいい女として、秋にはリングにも上がりますよ」とポジティブにコメントした。

 この発言に高原監督は「18歳の頃から彼女を知っているけれど、ほんとに成長したな。俺は、ここまでの苦労はしたくない。神様も何でこんな試練を彼女に与えるのか。『わたしの人生なんて、面白くない』って(彼女は)言うけど、十分にすごすぎるよ。プロレスに例えれば、彼女と俺はタッグチームだと思っている」と安川に最大限のエールを送っていた。(取材/岸田智)

映画『がむしゃら』は東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開