「自分にあるものを全部出したい」。所属先との取り決めで2試合の出場に限定されている久保は、そう決意を語った。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 リオデジャネイロ五輪アジア1次予選の初戦でマカオを7-0で下した日本は3月28日、中1日で迎えるベトナム戦に向けてトレーニングを行なった。GK櫛引政敏を除くマカオ戦の先発組と、途中出場の矢島慎也以外はホテルでリカバリーとなり、その他の12選手が汗を流した。

【PHOTOギャラリー】リオ五輪アジア1次予選 第1戦|日本 7-0 マカオ
 
 ビルドアップからゴール前まで運ぶ3人目の動きを交えた攻撃パターンや、少ない手数で持ち込むフィニッシュの練習で、ひと際精度の高いプレーを見せていたのが、ベトナム戦でCFでの先発が濃厚な久保裕也だ。
 
 シュートの正確性が高く、加えてボールを「止めて・蹴る」という基礎的な動作に無駄がなく、コーディネーション能力(運動神経)の高さを感じさせた。
 
 本人にその思ったことを伝えると、「そんなことは考えたことなかったですけど、そう思ってもらえているなら有り難いです」と頬を緩める。
 
 今回の予選3試合のなか、所属クラブのヤングボーイズ(スイス)との取り決めで、久保は2試合にしか出られない。マカオ戦はプレーしておらず、残るベトナム戦とマレーシア戦での出場が確実視される。大勝したマカオ戦をベンチで観ながら、「試合をしたいという想いはすごくありました」と気持ちを昂ぶらせた。
 
 スイスリーグとの兼ね合いでU-22代表には遅れて合流した。時差や長距離移動の影響は少なからずあるはずだが、「(欧州からアジアへ)最初に来た頃に比べれば、すぐ動けるようになっている。大丈夫です」と、コンディションの良さを強調する。
 
 ピッチに立った時のイメージもできている。
 
「みんなコンビネーションが上手いので、そこに自分も合わせていきたい。ワンツーなり、自分ひとりでというよりは、みんなで崩していけたらいい」
 
 13年6月に念願だった欧州移籍を果たし、スイスの名門で経験値を上げてきた。個の能力に疑いはないが、「ひとりで、とやっていたら、たぶんチームに迷惑をかける。チームに合わせながら、自分を出せたらいいかなと思う」というスタンスだ。
 
「自分にあるものを全部出したい」という覚悟で、チームのために戦うつもりでいる。
 
 また、この予選前に手倉森誠監督は「引いた相手を破って点が取れるサッカーを披露したい」と語っていたが、久保は「自分たちがテンポを作って動きを出していかないと引いた相手を崩せないので、攻撃のテンポを作れたらいいと思います」と自身の役割を理解している。
 五輪には「絶対に出たい」と言葉に力を込める。
 
 エースとして期待されていたU-19代表時代、3年前のアジアユースでは準々決勝でイラクに惜敗し、上位4か国に与えられるU-20ワールドカップ出場権を逃した。
 
「あの時は、すごく悔しい想いしかしていない」
 
 久保にとって、忘れられない苦い思い出だ。それだけに今度こそ世界大会に出場し、その檜舞台で活躍することを心から願っている。彼は言う。
 
「とにかく、今は勝ちたい。自分が結果を出すというよりは、(チームとして)予選を突破したいという想いしかない」
 
 この世代では久保と南野拓実しか欧州組はおらず、大きな注目を集める。
 
「海外でやっているからというのは、あんまり気にしていない部分ではある。そんなに(国内組と)変わらない気もしますし」と、気負いはない。
 
 南野に対するライバル意識は「特にない」ものの、「互いに刺激し合えて、上手くやっていけたら」と、ふたりによる相乗効果に自らも期待する。ふたりがいったいどのような連係を見せるかというのは、手倉森ジャパンの今後の楽しみのひとつだ。
 
 以前は寡黙なタイプという印象だったが、この日は炎天下のなか、大粒の汗を流しながらも、長い時間をかけて、取材対応では真摯に受け答えていた。
 
 心身ともに着実な成長を果たすストライカーは、12年2月にA代表に招集されたことのある逸材でもある(アイスランド戦/試合には出場せず)。当然ハリルホジッチ体制での“再選出”を狙っているはずだが、「でも今は、ここでやることをやらないと、上には行けない」と、しっかり足もとを見つめる。
 
 リオ五輪でのメダル獲得を誓うこのチームのために、そして自身のさらなるステップアップのために――。ベトナム戦では、1次予選突破を引き寄せるハイパフォーマンスを見せてくれそうだ。