縦に早いサッカーにどのように対応し、そしてどのような新たな本田スタイルを見せてくれるのか。それも楽しみのひとつだ。 (C)SOCCER DIGEST

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 ハリルホジッチ監督の初陣は、多分にパフォーマンスの要素もあったのだろう。

 メンバー発表の記者会見で「ロシア・ワールドカップを目指したチーム作り」と明言したとおり、チュニジア戦では3年後を見据えた大胆な世代交代を断行した。
 
 スタメンのうち、30歳以上は長谷部のみ。6人が20代半ばのロンドン五輪世代で、平均年齢は25.6歳と以前よりも若返った。これから脂の乗ってくる中堅に自覚を促し、個々の成長とともに、チームを上昇曲線に乗せていこうという意図は伝わってきた。
 
 そうした分かりやすい“PR”に加え、早くも戦術面でアギーレ体制時からの変化が見て取れたのも見逃せない。「日本に少し足りない縦へのスピード」や「球際の強さ」などの「いくつかの改善点」に、真っ先に指揮官はメスを入れていたのである。
 
 特に印象深かったのが、「縦への意識」だ。
 
 試合後のミックスゾーン(選手が記者の取材に応じるゾーン)で、ほとんどの選手がこの言葉を口にした。川又は言う。
 
「縦を意識した速いカウンターが(狙いの)ひとつ。今日のスタメンを見ても、走れる選手ばっかりだったから、そういう部分のプレーと遅攻をミックスできたら一番良い」
 
 川又の言う「そういう部分」とは、推進力を備えた選手の特長を活かして、手数をかけずに攻めきってしまう形だ。
 
 スピードのある永井と武藤をサイドに配置したのはこのためだ。特に右サイドの永井は裏のスペースを狙って何度も動き出し、呼応するように右SBの酒井宏は縦パスを供給していた。
 
 実際には、「ボールを奪ってから最初のパス精度が十分とは言えず、ボール奪取後に短いパスを使いすぎかなとも感じる。もっと長いパスで狙いたいと思う」(ハリルホジッチ監督)と機能したとは言い難かった。
 
 ただ同時に指揮官は「スタートから勇気とやる気を見せてくれた」と、チームとしての狙いを表現しようとした選手たちに、一定の評価を与えていた。

 始動間もない現時点で、プライオリティは、“ミス”よりも“トライ”のほうが高い。その点では、新体制の一歩目しては、上々の滑り出しだったということだ。
 
 また、これまで中央に偏りがちだった崩しの形にも、変化が感じ取れた。サイドチェンジを多用し、ウイングへの縦パスが増えたのだ。
「決まりごとはそんなにないけど、縦への展開は意識付けられている。ペナルティエリアの脇にスペースができるから、そこを上手くつかって攻めていこうという狙い」と、永井は説明する。
 
 試合中にSBへサイドチェンジのパスが入ると、ハリルホジッチ監督はしきりにジェスチャーを交えて、その前方にいるウイングへの素早い縦パスを要求していた。
 
 ところがSBが横パスを選択すると、「なぜ戻したんだ」と両手を挙げて、ため息を漏らした。

 その選手にも分かるぐらい大袈裟に落胆のポーズを示したあたりからも、サイドチェンジからウイングに縦パスを入れるという攻撃は、ハリルホジッチ監督が目指すスタイルの鉄則のひとつとなっていきそうに感じられた。
 
 この点について岡崎は、「サイドに広げる」イメージがあると言う。さらに、「前(アギーレ体制)は、奪ったボールをすぐ真ん中へ入れることが多かった。でも、(サイドを使って)つないで真ん中に入れるのは別のリスクも高いので(ボール失いやすいなど)、そのへんはこれからどうやって行くか話しあうと思う」とも言っていた。
 
 以前の日本代表は、中盤でのパスによる連係から、岡崎、本田、あるいは香川にクサビを打ち込み、ボランチやSBが連動して崩していくスタイルを好んだ。