冷静に考えれば、当然の判断だったはずである。

 3月27日に行われたチュニジアとのテストマッチで、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督はフレッシュな選手を大胆に起用した。ハビエル・アギーレ前監督のラストマッチとなった1月のUAE戦に続いて先発したのは、長谷部誠と吉田麻也だけである。

 チュニジア、ウズベキスタンと対戦する今回のテストマッチは、ハリルホジッチ体制のスタートとして注目を集めている。しかし、次の活動となる6月は、ロシアW杯アジア予選である。公式戦だ。

 次回の招集を見据えて選手をテストするのは当然である。お馴染みの選手たちを長い時間プレーさせたら、メンバーの絞り込みができない。そのなかで吉田と長谷部がスタメンに指名されたのは、守備の安定がテストの前提条件となるからだ。

 試合を決めたのはお馴染みのふたり──途中出場の本田圭佑と岡崎慎司だったが、監督が代わっても使われる選手が同じでは、チーム内に競争原理が持ち込まれない。2018年のロシアW杯へ向けて新戦力を見極めるのは、始動直後のチームに必要な通過点だったと言っていい。
 
 スタメンで起用されながら結果を残せなかった選手は、さらなるレベルアップを自らに課すだろう。次に起用されたら、何としても結果を残そうと思うはずだ。短時間でも一発で答えを出さなければ、チームには残れない。代表でプレーする難しさをより多くの選手に実体験として理解させることで、チーム全体の底上げはなされていくのだ。
 
 海外組を招集しながら試合で起用しないと、「せっかく呼んだのに使わないのはもったいない」とか「身体の負担が増えるばかりで、クラブでのパフォーマンスに支障が出る」と言った指摘が沸き上がる。
 
 日本語と日本食に囲まれる一時帰国を、楽しみにしている選手は多い。ただ、試合に起用されないのは誰にとっても利が少ないと、僕も考える。
 
 しなしながら、今回は例外だ。9日間の活動でチームコンセプトの理解を深めるのは、試合の結果以上に重要だからである。ピッチに立つ時間が短いとしても、海外から参加してもらう意味はあるのだ。

 同じ日にはU−22日本代表が、五輪1次予選の初戦に臨んだ。格下のU−22マカオとの一戦で、7対0の快勝を飾った。

 マレーシア郊外のシャーアラムを舞台とする今回の予選は、中1日で3試合を消化するハードスケジュールだ。高温多湿の気候では、蒸し暑さが全身にまとわりつく。16時にキックオフされたマカオ戦は、記者席に座っているだけでもこまめな水分補給が欠かせなかった。スコールが降ったあとは、湿度がさらに増す。日程的にも気候的にも、メンバーを固定して戦うのは難しい。

 このため、手倉森誠監督は「3試合を通したメンバー構成のシミュレーションをしている」と言う。23人の選手を使い分けでいくわけだが、ハリルホジッチ監督の日本代表と異なり、U−22日本代表は昨年1月から活動している。マカオ戦は通算14試合目だ。

 指揮官は選手の特徴を熟知し、選手同士もそれぞれのプレースタイルを理解している。表面的にはターンオーバーと呼ばれる選手の使い分けでも、「対戦相手によって(特徴が)効く選手を、それぞれの相手に当てる」という起用法だ。1年の積み重ねを感じさせる。

 そのうえで、競争意識を煽ることも追及している。手倉森監督は語る。

「このチームには、すでに所属チームでポジションを取っている選手も何人かいます。これから自チームでポジションを取ってほしい選手たちも、まだまだいます。そうなったときに、高いパフォーマンスを見せ合えば、自チームでもポジションを取れる可能性が高まるだろうと。そういう意味で、全員にチャンスを与える、という話を選手にしています。アタッカー陣同士のチーム内の競争も、より高まるだろうと思います」

 勝利を取りこぼすことなく、チーム内の競争意識を高める──3月27日に行われたふたつの国際試合は、どちらも評価に値するものである、と僕は思う。