勝利という結果を得て、試合後に笑顔を見せるハリルホジッチ監督。選手の競争心を煽る采配を含めて、理想的な初陣となった。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 頼れるのはやはり、既存の主力組――。会心のヘッドで先制弾を叩き込んだ岡崎、そのゴールを左足のクロスでアシストし、さらに自ら追加点を決めた本田、狭いスペースでのチャンスメイクが光った香川と、途中出場で勝利に貢献した3人の働きを目の当たりにすれば、どうしてもそんな印象になる。

【日本代表|PHOTOギャラリー】日本 2-0 チュニジア
 
 中盤でしっかりと舵取りをしたボランチの長谷部、まともなシュートを打たせなかったCBの吉田を含む“歴戦の勇士たち”は、先発しながら結果を残せなかった永井、清武らロンドン世代に格の違いを見せつけたと、そう言われても致し方ない面はあるだろう。
 
 ただ、相手は“バカンス気分”のチュニジアである。前半こそフィジカルとスピードを利したサッカーで日本陣内に迫る場面もあったアフリカの中堅国も、後半に入るとピタッと足が止まり疲労の色を隠せなかった。
 
 実際、長谷部が「(香川)真司が出た時には向こうのプレスもかなり弱まっていた。終盤は明らかに間延びしていた」と話すように、本田、香川、岡崎は敵のプレッシャーがほとんどないなかでプレーしていた。彼らほどの実力と経験を持ち合わせていれば、そうした状況下で活躍できるのは、むしろ当たり前との側面もある。
 
 勘違いしてもらっては困るが、この3人の働きにケチをつけているわけではない。なにを主張したいかと言えば、試合が動いた終盤のおよそ20分間だけを切り取って、「頼れるのは既存の主力組」と結論付けてはいけないということだ。
 
 見逃せないのは、長谷部の「90分通しての結果」というコメントだ。
 
 トップ下の清武は立ち上がりから相手最終ラインの裏を意図的に狙い、左右のSB(酒井宏と藤春)も成功率はともかくパスやドリブルで縦に仕掛けるアグレッシブさがあった。そして2ボランチの一角だった山口は精力的なプレスで相手を追い込み、前線の3人(永井、川又、武藤)も交代するまでハイプレスを怠らなかった。
 
 時間の経過とともに試合を支配できたのは、先発組が「前半からチュニジアの選手を疲れさせるようなプレーをしていた」(長谷部)からでもあるのだ。「前に行きながら守備をしようと話した」というハリルホジッチ監督にとっては、理想どおりのゲーム展開だったのかもしれない。
 
 そして、明確な布石を打っての本田&香川の同時投入である。チュニジアからしたら、疲弊しているうえでの“ボスキャラ登場”だけに、たまったものではなかっただろう。
 それにしても、ハリルホジッチ監督は最高のタイミングで“ボスキャラ”をピッチに送り出した。試合は停滞気味で、観ている側も欠伸のひとつでもしようかという時間帯に強烈な一手を打ったのだから──。
 
 本田は言う。
 
「途中から出た選手が結果を残した。それも監督の質。サブの選手を準備させて、出た時に役割を発揮させる。その整理ができていたからこそ、出場してすぐに(流れを)変えられた。この何日間かでそれを選手に浸透させたのは、監督の経験値だと思う」
 
 計算できる戦力をあえてスーパーサブ的に使う発想は、長年のキャリアで生み出したものだろう。戦略家にして勝負師。ふたつの顔を見せた初陣だったとも言える。
 
 ハリルホジッチ監督に言わせれば、全員で掴んだ勝利なのだろう。
 
「最初から出たメンバーを含め、やる気とアグレッシブさを見せてくれた。良い雰囲気、良い競争を生み出せたと思う。我々のクオリティとは組織的に戦うこと。このやり方が日本には合っている」
 
 特定のタレントに頼りがちだった既存のやり方をぶっ壊す──。3年後のロシア・ワールドカップで脂が乗り切りそうなロンドン世代の多くをチュニジア戦で先発させた意図は、そこにあったはずだ。
 
 主力とサブという明確な線引きがない現状を、岡崎は大歓迎する。
 
「競争を望んでいた。みんなにチャンスがあるべき。自分たちはワールドカップやアジアカップで負けている。そこで若い選手が出てこないといけないと感じた。同じスタートラインに立ったと思っているし、自分も若い選手もどんどん吸収しようとしている。そうした環境を作っていこうと監督も言っていて、自分も同じ気持ちでいます」
 
 閉塞感なきトライアウト。現在クラブで控えに甘んじている川島をベンチに置き、目下絶好調の権田をスタメン起用したところにも好感が持てる。代表待望論が囁かれていた宇佐美をテストするなど、できる範囲でニューカマーを試す采配も評価に値した。

「次の試合(3月31日のウズベキスタン戦/東京)でも、(私が)まだ十分に知らない選手にプレーする機会を与えたいと思う」と、チュニジア戦で出番がなかったサブメンバーを刺激し、競争心を煽るハリルホジッチ監督なら、日本代表を正しい方向に導いてくれそうだ。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)