5年ぶりに代表復帰を果たした永井。攻守におけるハードワークでリズムを生み、前体制からの新戦力という意味で一番の収穫だったと思う。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 監督が代われば、標榜するサッカーも変わる。「変化」を前提に、そこに選手が前向きに取り組んだ結果、2-0で勝利したという事実が持つ意味は大きい。選手の求心力になるだけでなく、サポーターを含めハリルホジッチ監督に対する期待感は上がったのだから、“最高のスタート”と言ってもいいだろう。

【日本代表|PHOTOギャラリー】日本 2-0 チュニジア

 目を引いたのは、選手間のディフェンスに対する意識の高さだ。相手のボールホルダーに対するファーストディフェンダーのアプローチが、これまでの基準の約20センチは近い位置から奪いに行くのが90分間徹底されていた。ボールを奪う回数も、過去の日本代表と比べても多かったのではないかと思う。
 
 攻撃面では、「縦」への意識が感じられた。チュニジア戦は連動性に欠け、決してスムーズではなかったが、ボールマンは失敗を恐れず縦にパスを出そうとしていたし、前線の選手もそれを受けようとする動きが見られた。1タッチ、2タッチのプレーで相手を振り切る形は、監督が「縦」の意識を植え付けたからこそである。
 
 ハリルホジッチ監督は、自身が実際に視察した武藤、永井、川又をスタメンで起用した。コンビネーションが整っていないなかで先発した選手は苦しかっただろうが、正直なところ前半で勝とうとは考えていなかったとワシは思う。前半のメンバーは全員がディフェンスをさぼらずにハードワークする選手だが、パンチ力には少々欠ける。本当の狙いは、フレッシュな顔ぶれが厳しい環境でどれだけできるのか、「適応力」と「野心」を試したかったのだ。

 それに応えるように、永井は川又との関係で縦パスのコースに入りながらボールを受けるなど、3番目の選手として攻撃に絡んだ。前半に主導権を握っていたのは日本の右サイドであり、得点こそ生まれなかったものの、上手く機能していた。ワシが個人的に永井に要求するレベルは高いが(自分が活きる仕掛けと、周りの選手を活かす能力を伸ばしてくれればもっと機能する)、スプリントを活かしながら献身的にディフェンスもこなしていたし、リズムを生んだ部分は自信を持っていい。今回巡って来たチャンスを活かすきっかけの試合になったと思う。
 
 逆に、「野心」を見せた新しい選手たちに、「プライド」を見せ付けたのが、本田、香川、岡崎といった常連組だ。チュニジアの足が止まり始めた時間帯での投入だったとはいえ、感性のつながり、視野の広さを存分に披露。前体制までのレギュラーが(競争の)スタートラインに立たされて競争意識が上がったのは間違いなく、絶妙な距離感のなかで織りなす自分たちのサッカーで結果を勝ち取ったわけだ。
 
 ハリルホジッチ監督は、限られた時間のなかで選手の長所を上手く見極めていた。メンバーとコンビネーションのチョイスはさすがで、宇佐美の良さを引き出すには本田、香川、岡崎らと一緒にプレーさせるのが効果的だった。実に絶妙なバランスで前後半をコントロールしたと思う。これはもう“ハリル・マジック”だ。サポーターから期待されるサッカーを表現できたし、この試合で一番アピールしたのは監督だったのかもしれない。
 
 ただし、言うまでもなく、次のウズベキスタン戦が大事だ。ザッケローニ監督も就任初戦でアルゼンチンに勝利しているが、最終的に自分の哲学を選手に落とし込めなかった例がある。

 ハリルホジッチ監督も宣言している通り、おそらくメンバーはチュニジア戦から大幅に変わる。ディフェンスのアグレッシブさ、攻撃のスピード性と攻守の共通理解を次のメンバーが継承できるか。チームがどれだけ継続性を持って進めるか、監督がどれだけの引き出しを持っているか。ウズベキスタンはFIFAランクで日本よりも下(日本は53位、ウズベキスタンは72位)であり、絶対に勝たないといけない試合だが、経験値の高いハリルホジッチ監督ならば、それも上手く実現してくるだろう。