初陣に満足感を示すハリル監督「道を見せた」

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[3.27 キリンチャレンジ杯 日本2-0チュニジア 大銀ド]

 初陣を勝利で終えたバヒド・ハリルホジッチ監督は満足げに振り返った。「我々の選手を褒めたいと思う。スタートから勇気とやる気を見せてくれた。彼らにブラボーと言いたい」。そう言って選手をねぎらった。

 日本代表初選出のFW川又堅碁、DF藤春廣輝を先発デビューさせるなど大胆な選手起用を見せた。先発のうちアジア杯メンバーはFW武藤嘉紀、MF長谷部誠、MF清武弘嗣、DF吉田麻也の4人だけ。FW本田圭佑、MF香川真司、FW岡崎慎司らこれまでの中心選手をベンチに置いた。

「まず機会を与えたかった。本田や香川、内田のクオリティーはすでに知っている。他の選手に機会を与えた」。先発メンバーの意図をそう説明した指揮官は31日のウズベキスタン戦(味スタ)に向けても「次の試合はまた新しい選手がプレーする。今日プレーしなかった選手のほとんどがプレーすることになると思う」と、この日出場機会のなかった選手たちにチャンスを与える考えを明言した。

 勝利にこだわる指揮官らしい采配だった。0-0で前半を折り返すと、後半立ち上がりも膠着状態が続く試合展開を見て後半15分に動いた。香川と本田を同時投入。リズムに変化を付けると、後半27分にも岡崎とFW宇佐美貴史をピッチに送り込み、勝負に出た。そして後半33分に岡崎、同38分に本田がゴール。香川も2ゴールを演出した。

 フレッシュかつモチベーションの高いメンバーでゲームをスタートさせ、勝負どころで経験豊富な選手を投入し、勝利を引き寄せる。ハリルホジッチ監督は本田と香川について「彼らはクオリティーのすべてを見せてくれた。この2人が自分の能力をすべて出せば、ゲームが変わるというのを見せてくれた」と称えたが、その表情は“してやったり”だった。

 23日から始まった合宿で本格的なトレーニングができたのはわずか3日間。それでもハリル流ともいうべき新たな“色”は随所に表れていた。攻撃では少ないタッチ数で縦に速く攻める意識を強めた。「スピードを求めたので、速すぎたところもあった」と振り返ったが、それも「選手は我々が要求したことをやろうとしてくれた」と、前向きな兆候と捉える。そのうえで「ボールを奪ったあとのゲーム支配にはまだ満足していない。奪ってからの最初のパスがまだ十分でない。奪ったあとに短いパスを使い過ぎている。もっと長いパスを使いたい」と課題を挙げた。

 守備ではアグレッシブさと球際の強さを求めてきた。積極的にプレスをかけ、相手に自由を与えない。1対1、球際で戦うこと。「各ゾーンに役割があり、そこで相手に近づき、相手選手がターンするような状況をつくるなと指示した。毎日毎日、このアドバイスをした。とにかくアプローチしろと」。選手はその指示を忠実にこなした。「彼らをほめたいと思う。ボールを奪うところでは全員が参加していた。ただ、奪ったあとで少し難しいことをしようとしていた」。そう収穫と課題を口にした。

「大きな一歩になった。このチームはもっと伸びると思っている」。ハリルホジッチ監督には日本代表の進むべき方向性がハッキリと見えている。「私は道を見せた。これをみんなが受け入れてほしいと思う。それが日本代表にとって、日本の国民の皆さんにとって、良い道になると思っている」。上々の船出となったハリルジャパン。2018年のロシアW杯に向け、このまま前進を続けていくつもりだ。

(取材・文 西山紘平)