得点という意味で鈴木(9番)のプレーが物足りなく映ったのは事実だが、それ以外の部分では貢献度が高かった。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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  いくら相手が格下といえども、勝利が確約されているわけではない。大事な初戦で無事に勝点3を獲得し、途中出場の矢島慎也は「オリンピックが絡んでいるので、まずは1勝できてホッとしているし、勝たないといけない相手にしっかりと勝つということも、また違った難しさがあると思うので、良かったです」と胸を撫で下ろした。
 
【U-22日本代表|PHOTOギャラリー】日本 7-0 マカオ

 その矢島のお膳立てで、同じように安堵した選手がいる。
「ホッとしたと言えば、ホッとしました。でも、もっと(点を)取れるチャンスはあったので、悔しい気持ちはあります」
 
 66分、矢島からの鋭利なスルーパスに抜け出した鈴木武蔵は、GKとの1対1を制して“ようやく”笑顔を見せた。
 
「武蔵は今日、点が取れていなかったし、取らせてあげたいと思っていた」
 
 矢島がそう語るように、鈴木は完勝を収めた初戦のマカオ戦で、しばらくは苦しい時間帯が続いていた。
 
 手倉森ジャパンでは“不動”のひとりと言ってもいい鈴木は、この試合でもCFの定位置でスタメンに名を連ねる。8分に右SBの松原健からのクロスにヘッドで合わせれば、12分にはドリブルで持ち上がった遠藤航からのパスを受けてシュートを放つ。序盤から日本が圧倒的な力の差を見せつけて押し込む展開のなか、鈴木はいつもどおり果敢にゴールを狙っていった。
 
 しかし、なかなかネットを揺らすことができない。22分にはCKから遠藤が先制弾を挙げ、26分には山中亮輔のクロスを豊川雄太が頭で押し込み、リードを広げる。チームに良いリズムが生まれ始めると、28分には松原のロングスローに、完璧なタイミングで裏に抜け出した鈴木が右足を振り抜く。しかし鋭い弾道のシュートは枠を捉え切れなかった。
 
 相手との実力差を差し引いて考えなければならないが、日本は鈴木を中心に多くのゴールチャンスを作り出していた。31分には左サイドで鈴木のアシストから野津田岳人が強烈な一撃でチーム3点目を叩き込んでいる。
 
 
  その後も豊川との連係から鈴木は36分、45分と2度ほどゴールに迫ったが、これもまた決め切ることができなかった。
 
 後半に入ってもしばらく同じような状況が続くと、さすがに鈴木自身、「少し焦りはあった」と認めている。ただし、そうした精神状態はマイナスには働かず、むしろ「徐々に、もっと落ち着いて、最後のところはゆっくり、冷静に行こうと思うようになってきました」と浮足立つことなく、次のチャンスに備えていた。
 
 そして、すでに記したとおり、後半に入って日本の最初のゴールを記録。「落ち着いて」「冷静に」という言葉どおりのファインゴールだった。
 
 チャンスの数に比べれば、得点という面では本人も語るように物足りないパフォーマンスだったかもしれない。とはいえ、得点以外の部分でも鈴木の貢献度が高かったのは事実だ。サイドや裏のスペースを狙った動きでパスを引き出しては、攻撃にダイナミズムと連動性をもたらしたり、フリーランで相手DFを釣り出し、効果的にスペースを作ったりした。
 
 そのスペースの有効活用がチーム全体としてまだ不十分な印象を受けたが、鈴木は「相手も引いていたので、そこは難しいところがある」と振り返りつつも、「俺に入った後に、サイドハーフやボランチの選手が“もぐる”動きで自分をサポートしてくれる回数がさらに多くなってくれば、もっと上手く崩せると思います」と手応えを口にする。
 
 絶対的な得点源としてだけでなく、攻撃をリードする存在としても、鈴木が今後、このチームで果たすべき役割、求められる仕事は大きい。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)