原発問題に挑むロボット技術、福島の学生たちが開発。合同発表リポート

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東日本大震災から4年が経とうとしています。復興に重くのしかかっているのが、原発の問題です。福島第一原発では燃料プールからの核燃料の取り出しがいまも続いています。期待されるのは無人ロボットの活用ですが、誰も体験したことのない環境下での正確な作業は容易ではありません。

そこで福島大学・会津大学・福島高専では、文科省による「廃止措置等基盤研究・人材育成プログラム」の一環として、この作業にあたるロボットの要素技術開発と人材育成を進めています。

どのような技術をどんな人たちが研究・開発しているのか、 2月5日に会津大学で開催された3教育機関合同ゼミの様子をお伝えします。
福島第一原発での燃料プールからの核燃料取り出しは、今後少なくとも30年以上かかるとされています。比較的被害の少なかった4号機からの燃料取り出しは昨年末に完了していますが、残る1〜3号機の核燃料は、がれきの中にあったり、プール内に溶け落ちたりと、極めて困難な作業となるのです。無人ロボットはこのような状況下での作業をこなさなければなりません。

▲3つの教育機関が連携し研究開発を通じて人材育成を図る
アイガモ農法ロボットが教えてくれたこと
ゼミは各教育機関の学生が、順に自らの発表を行い、指導教員・学生からの質問に答える形で進行します。最初に学生として発表を行ったのは、会津大学の丸山敦規さんです。丸山さんはアイガモ農法をロボットで行う研究をしています。

成長してしまうと稲を食べるようになってしまうアイガモ。ロボットであれば、繰り返し利用でき、その管理も楽になるはず、という訳です。ロボットは田んぼという不整地、しかも水中の泥をかき混ぜながら、繊細な稲の間を縫って動き回る必要があります。丸山さんが今回発表したのは無線制御されるアイガモロボットがどのような形状・素材の車輪を備えるのが効率的か? その検証を行ったというものでした。

真夏、実際の田んぼを使っての検証実験を通じて得られたものは大きく、ロボットが工具なしで分解できるメンテナンス性を追求したのも、激しい日差しの中、泥に足を取られながらの作業をできるだけ短い時間で終わらせるためだったと言います。

合同研究の効果は既に現れはじめているようでした。ロボットの現在地点を数センチ単位で把握することの難しさが課題として挙げられると、福島大学でプロジェクトを主導する高橋隆行教授が、アスリートのトレーニングにも用いる比較的安価な機器を紹介する一幕も。

湖底の試料採取ロボットの制御を極める

続いて発表を行ったのは、福島大学の神尾柊太さん。神尾さんは湖底の土壌調査を目的とした水中ロボットの姿勢制御を研究しています。水中で生じる外力(ロボットに加わる力)や、ロボットに対して斜めに取り付けられたスラスターによる推力を「拡張状態オブザーバー」と名付けた理論で制御し、ロボットが正確な位置・姿勢で作業できることを目指しています。

また、同じ福島大学の安西香保里さんは、水中ロボットのスラスタモジュールのバッテリー容量と必要推力の最適なバランスを見出すことで最適な作業時間での作業完了を可能にする等の研究を進めています。

遠隔操作を確実なものにするために

無人ロボットとはいえ、カメラを通じて遠隔で細かな操作を行うのは人間の仕事です。この作業を確実なものにするために、会津大学では画像の解析や加工を通じて、人間が視覚的にロボット周辺の状況をより直感的に理解できるよう研究を進めています。

その1つが、深谷友祐さんが研究するロボットに搭載された複数の画像から、仮想的にFPSのような俯瞰視点での画像を生成し、操縦者に提供する、というもの。

また、同じく会津大学の橋本真一さんや森内啓介さんはロボットからの空撮動画の視差を利用して、地形の形状を復元する研究を行っています。

▲会津大の橋本さん(左)と森内さん(右)

いずれの研究も膨大な量となる画像データを、いかに効率良く扱うか、また現行の電波法では大量のデータを伝送できる距離については制約があることなど、画像処理を指導する会津大学の矢口勇一准教授ら教員・学生から質問が飛び、活発な意見交換が図られていました。
確実に対象物をつかむ
地形も含めたロボット周辺の状況が把握した上で、対象物を確実に掴むことが、核燃料棒処理の際にも重要です。会津大学の矢口勇一さんは複数のカメラからの映像を、HMD内に再現し、奥行きを把握した上でKinectなどを用いながらジェスチャーでの操作を可能にできないか、研究を進めています。

福島大学の伊藤究さんは、実際に物をつかむピンチングデバイスを開発中。小さなロボットに搭載し、原発内部の狭い場所で正確な作業ができるよう、指先に納まる小型で高精度な3本指のデバイスの試作品を披露してくれました。

さらに人材の層を広く――福島高専の取り組み
発表を締めくくったのは、福島高専の鈴木茂和准教授。福島工専では、学生たちが放射能に強い(しかし鉛を使用しない)素材の研究・製作を進めていますが、それに加え、ロボットプログラミングや、機械加工、放射線に関する実験、競技会などの機会を小中学生に対して提供しています。

2回目となる合同ゼミは13時から17時過ぎまで休憩を一度挟んだだけで、非常に密度の高い内容でした。また、質疑応答や短い休憩時間の間にも、教員・学生が活発に交流していたのも印象的です。

▲事業の概観と将来像を説明する会津大学の成瀬継太郎上級准教授

残る燃料の取り出しは2025年度(平成37年度)に予定しています。プロジェクトは2018年度(平成30年度)までに技術開発を行うと同時に、それを担う人材を育成するという息の長いものですが、復興の現場からの技術・人材が生まれることに期待したいと思います。