相続税の税率と控除額(速算表)

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■「都区内一戸建て」は相続対策が必須に

医療や文化施設が充実し、交通の便がいい都心部に住み替えたい。若年層だけでなく、年配層でもそう考える人が増えている。その場合、有力な選択肢となるのがタワーマンションだ。自ら住むだけでなく、賃貸物件とすれば家賃収入も狙える。

不動産市場の分析を手がけるアトラクターズ・ラボ代表の沖有人氏は「タワーマンションは中古市場に出ても値下がりしにくい傾向がある」と話す。

「首都圏の中古マンションの値下がり率は年間3%弱ですが、タワーマンションは0.4%程度。新築のときより値上がりしている物件も多い。狙い目は都心部で眺望のいい物件。ただし最上階のペントハウスは新築分譲価格は高額なわりに中古市場では評価されない。売却が前提なら70平方メートル前後の標準的な部屋がいいでしょう」

タワーマンションのもう1つの魅力は、相続税を大幅に抑えられる点だ。

2015年1月から相続税が増税。最高税率の引き上げもあるが、もっとも悩ましいのは、基礎控除が大幅に引き下げられたこと。

課税対象となる相続財産の評価額から差し引くことができる基礎控除は、「5000万円+1000万円×法定相続人数」だったが「3000万円+600万円×法定相続人数」に変更された。相続人が妻と子ども2人の場合、これまでは8000万円までの相続は基礎控除額の範囲内なので無税だったが、増税後は4800万円を超える範囲は課税対象になる。

相続税の課税対象となる被相続人が増えることになる。たとえば東京23区内に一戸建てを保有している人の多くが課税対象になるでしょう」(沖氏)

■マンション購入で相続税は8割引き

ここで考えたいのが、相続対象が土地ではなくタワーマンションになった場合だ。相続時のマンションの評価額は、建物分は固定資産税評価額と同じになるが、土地分は「面積割り」になる。つまりマンション全体の敷地面積に路線価を乗じ、自分の持ち分割合で按分した額を払うことになる。「面積割り」の単価は、同じ棟ならば階数や部屋の向きなどに関係なく同じだ。ところが分譲価格は上層階ほど高くなる。ひとことでいえば、同じマンションであれば販売価格の高い物件ほど、相続税を少なく抑えることができる。

「購入金額が同じなら、相続税評価額が小さいほど有利です。タワーマンションの場合、物件の購入金額と同額の現金で持つ場合に比べて、2〜3割程度に評価額を圧縮できます」(沖氏)

具体的に説明しよう。相続人が妻と子ども2人で、遺産総額が1億円とする。課税遺産額は基礎控除の4800万円を引いた5200万円。欄外の「速算表」で計算すると相続税額は630万円だが、配偶者分は控除されるため、支払額は表の通り315万円となる。

一方、遺産1億円のうち半額の5000万円でタワーマンションを購入したとする。相続税評価額は2割の1000万円だとすれば、遺産総額は6000万円になる。基礎控除額を引くと課税遺産額はわずか1200万円。配偶者分を控除した支払額は60万円だ。

結局、相続税の支払額は315万円から60万円となり、8割引きになる。

5000万円のタワーマンションは、相続税評価額はわずか1000万円だが、もちろん市場価格は5000万円の物件だ。より多額の資産があるならば、子どもの数にあわせて部屋数を増やせばいい。相続税は抑えられる一方、経年でも値下がりしづらく、売却での換金もしやすい財産になる。

(山下知志=文)