ギャルマト・ボグダン 「映画プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪」プロデューサー。1968年、ルーマニア生まれ。1989年に学生運動に参加し、ハンガリーに亡命。1993年に日本に留学生としてやってきて、2006年に東映アニメーションに入社。他プロデュース作品に「映画 ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」「暴れん坊力士!!松太郎」などがある

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3月14日から公開中の「映画プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪」。毎年恒例となった「歴代のプリキュアが登場するお祭り映画」であるのと同時に、これまでとはちょっと違い「歌とダンスを中心にしている」意欲作です。なんと、歌だけで13分!
「春のカーニバル♪」はどのようにして生まれたのか? プロデューサーのギャルマト・ボグダンさんにインタビューしてきました。

──「春のカーニバル♪」は、これまでの春のオールスターズプリキュア映画とは大きく変わった印象があります。

ギャルマト・ボグダン(ボグダン) プリキュアシリーズも10年目。そもそも子供の数も減っているし、周りに女児向け作品も増えてきたこともあって、ここ数年苦戦した部分がありました。新しい風を入れなければいけない時期でした。「やってないことなんてないじゃないか!」と思ったんですが(笑)、新しいこと、やっていないことを探しました。

──それが今回の「歌とダンス」ですか?

ボグダン 前々から思っていたのは、毎年オールスターズ映画はEDで流れるダンス映像がすごいんです。大人目線で見ると一番の目玉。なのに一番後ろについている(笑)。だからその目玉のダンスを、一番ストーリーが盛り上がっている真ん中に持っていけないかな、と考えました。

──それがYouTubeで公開もされている「イマココカラ」ですね。

ボグダン そうです。あと大きな問題になっていたのが、「40人のプリキュアをどうやって出せばいいのか」。物理的には無理に近いんです。アニメーターさんに描いてもらうとき、40人全員が画面に収まらない! 出演するプリキュアを絞らなければいけないというのは、「NewStage」シリーズのときからの課題でした。

──「NewStage」シリーズのときは、スポットが当たるシリーズをある程度決めてしまうという形をとっていました。

ボグダン 「春のカーニバル♪」は、「全員いっぺんに出すのは無理にしても、順番に出せばなんとか出せる」。その考えに、前々からの「ミュージカルへの興味」がつながりました。代表的なのはディズニーアニメ。昔からディズニーアニメには音楽がついている。でも、日本だとなかなかミュージカルは成功しない。

──確かに日本のアニメでミュージカルものって、受け入れられにくい印象があります。どうしてなんでしょうか?

ボグダン 私は外人だからよくわからないけど(笑)、音楽ビジネスのシステムや、予算やスケジュールの問題も大きいなとは思います。ただ先輩たちと話していて思ったのは、英語のミュージカルは「輸入物」として受け入れられていてかっこよく聞ける。でも日本語のミュージカルを作ると、急に敬遠されるところがありますよね。でも「アナ雪」は日本語でも流行っていた。だから「大丈夫じゃないか!」と勇気づけられましたね。

──それで「春のカーニバル♪」が、ミュージカル風味に。

ボグダン でも、いきなり全部をミュージカルにするのは難しい。今までの「プリキュア」シリーズの路線からしてみると180度変わって衝撃が大きすぎるし、ミュージカルにするとなると、たくさんオリジナルの曲を作らなければいけない。スケジュール的にそれは現実的ではなかったです。だから今回は「ファーストステップ」として、今の形にたどり着きました。

──「イマココカラ」「39フェアリーズ」「オドレン・ウタエン盗賊伝」といった映画新曲はすごくミュージカルの雰囲気が出ていました。それと同時に、歴代のOPやEDをプリキュアたちが踊っていてかわいかったです。

ボグダン OPやEDは1年間見てきてくれた子どもの頭に一番残っているものなので、ぜひ使いたかったですね。PVみたいにして「プリキュアのその後」を描く一方で、ストーリー部分は今年の「Go! プリンセスプリキュア」たちの初の見せ場・初舞台という要素を入れました。目標としたのは「子供が見やすい」こと。ファンサービスよりも、子供が飽きないギャグを入れよう、ということですね。

──子供に特にウケたな! というギャグ部分はどこでしょう。

ボグダン 志水淳児監督は子供を笑わせるシーンをつくるのがうまい。キュアプリンセスが階段を見つけるために「じーーーーー」とするシーンはウケてましたね。

──「ファンサービスよりも」とおっしゃってますが、「PV」部分は、ものすごくファンサービスを感じました。

ボグダン 確かに、あそこは唯一の「これまでプリキュアを好きだった人たちへの」ファンサービスかもしれません。あそこの絵コンテは、志水監督ではなくてTVシリーズに関わった人たちにやってもらっているんですよ。たとえば「スマイルプリキュア」の部分は大塚隆史さん。みんな思い入れがあって一番わかっている人が描いている。

──ボグダンさんが見て印象深い「PV」部分はどのシリーズですか?

ボグダン 初代(「ふたりはプリキュア!」)ですね。「初代のプリキュアたち、さすがに強かったなー!」(笑)。初代の人たちの偉大さを改めて実感しました。初代のときにはダンスCGはなかったから、今回新しくダンスを作ったんですよね。

──「PV」部分は全体的に、「ミュージックステーション」のような日本の歌バラエティ番組を見ているような印象を受けました。

ボグダン 私は「ミュージックステーション」を見たことがなかったんですが、監督は最初からそういうイメージでやっていたみたいです。私としてはコンサートというよりももうちょっとカーニバルのイメージがあったんですが。曲と曲をつなぐ部分はすごく大きな課題で、今回はオリエンタルラジオさんが演じるオドレン・ウタエンの2人がみんなをつなぐ役割をしています。

──今回の映画は、オリエンタルラジオさんが大活躍してました。これまでとちょっとテイストが変わった敵役です。

ボグダン オリエンタルラジオさんにオファーをする前から、今回の敵はああいう感じにしよう! と考えていました。映画の敵は、いつもすごく巨大で強い。今回は歌とダンスをメインにして、アクションはもうちょっとドジっぽい、憎めない奴相手にしよう。そこで2人のボケとツッコミ的なコンビが生まれました。オドレンとウタエンは、敵でありながら、同時に司会者でもある。最初からお笑い芸人さんに頼みたかった。オリエンタルラジオさんに決まったあとに、そこでもう一度、ちょっと2人に近づけるようにシナリオを直してもらった部分はあります。チャラ男っぽい雰囲気を入れてみたり。

──すごくよかったです。当て書きかな? と思った部分はそういうことだったんですね。

ボグダン 「オリラジさんの映画じゃないか!」という感想を受け取る人もいるかもしれない(笑)。40人プリキュアがいると、主役が作りにくい。そういう意味で、オドレンとウタエンはストーリーを進行する役になってもらいました。

──プリキュア映画は毎年ゲスト声優が登場しますが、歴代で一番喋って歌っていたような気がします。

ボグダン 最初はちょっと心配でしたが、どんどんうまくなっていきましたね。「オドレン・ウタエン盗賊伝」は本作で一番ミュージカルっぽい曲なので、それが子供たちにどう受け取られるのかは気になります。

後編に続く

(青柳美帆子)