原田泳幸氏はマックからの退職慰労金をどうするのか?(写真は2013年10月撮影)

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日本マクドナルドホールディングス(HD)を長年けん引してきた原田泳幸会長(66)が2015年3月25日の定時株主総会後に退任した。

マックを「デフレの勝ち組」へと押し上げたが、ここ数年は業績低迷から抜け出せずに苦しんだ。そんな原田氏に、同社は退職慰労金の支払いを決め、株主総会で承認を得た。

原田氏への退職慰労金、「多くの拍手で賛成多数」

「商品の品質と安全性について、株主の皆さまに多大なご迷惑をおかけしました。心よりお詫び申し上げます」。2015年3月25日に東京国際フォーラムで開かれた日本マクドナルドHDの株主総会で、原田泳幸氏の後任として14年3月に日本マクドナルドHDの社長兼最高経営責任者(CEO)を引き継いだサラ・カサノバ氏は冒頭に、そう陳謝した。

同社は、14年7月に発覚した期限切れ鶏肉の使用問題や、その後もチキンマックナゲットやマックフライポテトなどへの異物混入問題が発生したことで、信用力が落ちて利用客が大きく減っていた。

そうした逆風から、2014年12月期連結決算では、売上高が前期比14.6%減の2223億円、最終損益は218億円の赤字(前期は51億円の黒字)を計上した。

一連の不祥事と業績不振で、おのずと高い関心が集まった株主総会。出席者は14年より154人多い1237人。14人の株主が質問に立ち、会社の経営姿勢などを質したが総会は粛々と進み、14年より50分ほど長い2時間43分で議事は終了。会社側が提案した1〜4号議案はすべて承認された。

そんな議案の中に、同日付で会長職を退任した原田氏への退職慰労金の件が含まれていた。日本マクドナルドHDによると、「きちんと説明した後に決議しましたが、多くの拍手をもって賛成多数で承認を得ました」と話す。株主からの質問も反対の声も、「とくにありませんでした」という。

退職慰労金は、社内規定に定めたとおりに算出した金額で支払われる。金額は株主総会でも公表しておらず、同社は「金額や(支払いの)手続きについても、取締役会に一任してもらうことができました」と話している。

その一方で、産経新聞(3月26日付)は不満を漏らす株主の声をひろった。原田氏に退職慰労金が支払われることに、公務員の男性(47)は「業績を悪化させた張本人。返上すべきだ」と、怒りを露わにしていたとされる。

赤字なのに、「億は下らない」退職金か?

とはいえ、原田泳幸氏への退職慰労金は自身が辞退しなければ、おそらく支払われる。原田氏が日本マクドナルドに籍を置いたのは11年に及ぶ。上場企業のトップの退職慰労金ともなれば、おそらく1億円は下らないだろう。

経営コンサルタントの大関暁夫氏は「赤字決算とはいえ、引責辞任するわけではないですから、退職慰労金を辞退するかどうかはわかりませんね」と話す。

原田氏はデフレ時代にマックを立て直し、好実績を上げた。しかし、「最近の業績や赤字の要因などを考えると、『まったく責任がない』とは言えないのではないでしょうか。あくまで表面的なことでしかいえませんが、常識的にはなかなか受け取りにくい状況にあるのではないかと思います」とし、今後の成り行きに注目する。

2015年3月9日に発表した日本マクドナルドHDの2月の売上高は、既存店ベースで前年比28.7%減。14年2月以来、13か月連続のマイナス。2ケタ減は8か月連続。1月は全店ベース、既存店ベースとも38.6%減と2001年7月の上場以来、最大のマイナスだったが、これに次ぐ過去2番目の下げ幅だった。

2月の客数(既存店)は19.1%減、客単価は11.8%減。数字のうえでは、厳しい状況が続いている。これでは赤字から抜け出すにも、まだ時間がかかるかもしれない。複数のメディアによると、株主総会では、出席した株主の「品質管理」や「業績回復」への質問に、カサノバ社長が2015年12月期の業績見通しを4月中旬に公表することやヘルシーな新商品の発売計画などを明らかにした。

ただ、株主からは「具体性はなく、表面的な説明で終わった」との不満も漏れていた。