ついに現実となったもっちーと田辺さん 写真:小林裕和

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2011年のある日、「公園でかっこいい犬を見たんですが、写真に撮れなかったのでイラストを描いてみました」とのコメントとともに、Twitterに投稿されたゆるいイラスト。投稿者は俳優の田辺誠一さん。

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田辺さんはTLで犬種を知っている人がいないか尋ねますが、もはや犬かどうかも怪しいその個性的なイラストは瞬く間に話題に。なんともゆるい田辺画伯の絵の魅力の虜になる人が後を絶たず、昨年11月にLINEスタンプが登場。

そして“かっこいい犬”には「もっちー」という名前も付き、ついに書籍化! 3月28日にファンブック『かっこいい犬。パーフェクトBOOK!』が発売します。

今回のファンブックでは、なんと“かっこいい犬”こと「もっちー」が平面から飛び出し、東京の街中を遊びまわる! 今まで見たことのない、もっちーの姿や情報が満載となっています。

そんなファンブックの発売を記念して、田辺画伯にインタビュー。ここまで成長した、かっこいい犬「もっちー」のことや、田辺画伯の描く絵がなぜ魅力的なのか、その理由がわかるかも?

■子どもの時の僕が聞いたら「本当かよー!? 嘘だぁー!」って言うと思う

――最初は“かっこいい犬”ということで展開していたと思うのですが、キャラ名が「もっちー」となった由来を教えてください。

田辺:白くて四角くて“おもち”みたいなキャラクターなので。あと、僕自身もおもちが大好きなので、「もっちー」にしました。

――結局、見かけた“かっこいい犬”の犬種ってわかったのでしょうか……?

田辺:犬種はわからないですね〜。でも、鼻先が尖った犬ではなかったです。

――それでも、かっこよかったんですよね?

田辺:ちょっと顔は“ぶちゃっ”としてるけど、堂々としている感じ、その存在がかっこよかったんです。もう唯一無二の存在としての空気感が。

――顔やスタイルなどではなく、その存在自体がかっこよかったんですね! それを元にご自身が描いた“かっこいい犬”の本が出ることについて、感想をお聞かせください。

田辺:もう“ウレぴあ”です。嬉しいですよね(笑)。幸せなことだな、と思います。自分の考えたもので、一冊まるごと世界を作れるっていうのはものすごく嬉しいです。

――今回、ご自身で撮影場所のロケハンも行かれたんですよね。

田辺:そうです、全部やっています。ページ構成からコンテまで、何から何までやらせてもらいました。満足のいく出来です。

――直立した「もっちー」が現実の世界に飛び出してきましたが、実際にお会いしてみていかがでしたか?

田辺:感無量な嬉しさです。自分の頭の中で考えられた平面だけの世界だったものが、飛び出てきて、実際に会ったり、動いたりするというのは思ってもみなかったことなんで。子どもの時の僕が聞いたらたぶん、「本当かよー!? 嘘だぁー!」って言うと思うんですよ。

――確かに信じられないですよね。

田辺:タイムマシンで小学生の僕のところに行って、「45歳のときにお前が描いた絵が本になったり、実物が動くから」って言っても、「え? 何言ってんの?」ってなると思う。さらに45歳でしょ? 25歳とかならまだわかるけど、なんでそのタイミングで?って、子どもの頃の僕が聞いたら思うくらい、信じられないことで、夢のようです。

――もし、タイムマシンがあったら、自分の子ども時代に会いに行って、伝えてあげたいと思いますか?

田辺:伝えてもたぶん信じて貰えないので、それはそれで現在の僕が凹むので伝えないです。だって、去年の9月の僕に言っても信じないですもん。

昨年の11月にLINEスタンプを出して商品化などのお話をいただくようになったので、9月の時には、自分が近い将来絵を書いて、それが仕事に繋がるなんてことはまったく想像していなかったので、状況がガラッと変わりました。

■「欲しい」と言ってくれるファンの声に背中を押された

――2011年にかっこいい犬を発表してLINEのスタンプ化まで3年空いていますよね?

田辺:2011年の秋に初めて描いた時から、ネットではLINEスタンプにして欲しい、って声がずっとあったんですが、僕は俳優以外の活動はしないと決めていたので、ずっとやらなかったんですね。

それで去年の9月ごろにいつもどおりTwitterでいろんなモノを描いていたら、また盛り上がって、その時にも“かっこいい犬”をLINEスタンプにして欲しいという声が多くて、3年経ってもまだこんなに支持してもらえているなら、もっと素直に期待に応えてもいいんじゃないかなと。それは自分に出来る役割というか、流れじゃないかなと思ったんです。

年齢を重ねると、あの時のこの選択がここに繋がっていたんだ、と後で分かることがある事も多いじゃないですか。自分の考えだけじゃなくて、流れに身を任せてみるのも良いんじゃないかと思いました。

せっかくこれだけゆるく楽しくやってきたことが、商売っぽくなってしまうと冷めてしまうので、僕自身がそういう温度の変化に敏感なので、そうならないスタンスで、小規模で、目の届く範囲だけでやる。“かっこいい犬”の良さは、Twitterという無料のコミュニケーションツールでみんなと楽しみながらゆるく育ってきたことなので、その温度は責任を持って守りたいですね。

メーカーの方もかっこいい犬が好きで、純粋に自分たちが欲しい、使いたいと思う物を作っているので、それは嬉しいですし、それが買ってくれる人にも伝わると思うんです。かっこいい犬のリードを持っていたら、急に犬が走り出して僕も引っ張られている感じです、そのスピードはけっこう心地よいです。

――実際には、難しいところもありますか?

田辺:やはりいろいろ言われるのは仕方ないと思います。副業とか、いろいろ言われますが、自分の中では俳優以外に副業をしたり収益を得るつもりはあまり無かったので。機材代など最低限はまかなえないと趣味になってしまいますが、自分の中ではアップルに戻ってきたときのスティーブ・ジョブズのように、報酬が年1ドルでも良いくらいで、純粋に創作したいんです。

というか、描いていて最高に楽しいし幸せなんです。求められる、自分がそれに応えられるというのは幸せなことなので、11月以降は殆ど寝ずに作業をしていますし、クリエイションは全部自分でやっているので、毎日30通以上の仕事メールのやり取り、月に20回以上の打合せをしたりしています。これは仕事と思ったら大変ですが、好きな事なので楽しいです。

純粋な強い思いでやっているので、何か言われても気にならないですし、今は自分の中の壁をひとつ越えた感じです。喜んでくれる方がいる以上、勇気を持って進められるんです。

■一方通行じゃ出来ない面白さがある

――昔はSNSなど発達していなかったので、一般の方と俳優の方が直接やり取りすることはなかったと思うのですが、田辺さんとしてはTwitterでのやりとりをどう感じていますか?

田辺:とてつもなく楽しいです。こうなったのも、最初は「こんな犬を見ました」というのを出しただけで、そこに反応があって、それで次にまた僕が出してっていう展開の仕方で、僕も思っていないような方向にいったりして。それってやっぱり一方通行じゃ出来ないじゃないですか。その面白さはあると思います。

僕はTwitterには本当にネタしか描いていないんですが、見ている方はセンスがいい人が多いんですよ。ラジオのハガキ職人みたいな。

そのセンスで笑いのツボをつこうとしてくるので、僕から見ても「やられた!」みたいな返しをしてくる人がいっぱいいるんです。それを拾って乗っかって次のネタを出すと、また返しが来るんですよ、もうツワモノ揃いです。そのやりとりが楽しいんですよね、ラジオみたいで。

――そういうネタ合戦みたいなものが繰り広げられていくのが面白いんですね。

田辺:面白いですね。だから “かっこいい犬”もそういった皆さんとのやりとりがなければ、ここまで広がらなかったと思います。

■絵を通して、何が伝わるかを大切にしたい

――今まで動物やモノ以外にも、色々な人物を描かれていますが、絵の感じもいろいろ違いますよね。

田辺:それは環境の違いですね。主にTwitterはスマホで指を使って描いているんですよ。だからあんまり描き込めないんです。車の後ろの席とかだと揺れながら描くから、信号で停まった時とかにピュッと描いて、動き出したらやめて、また停まったらピュって描くとか。

――描いた絵を描き直されたりもするんですか?

田辺:するときもあります。でも大体最初のノリが一番いいんですよね。考えて詰めていくとあんまり面白いものにならないから。最初のフィーリングで、短時間で。Twitterにあげる絵とかだったら本当に10秒とかで描きます。

――すごいですね。

田辺:それで何かが伝わればいいなっていう。少し凝ってるやつっていうのは、もうちょっとじっくり描いているやつだと思います。タブレットにペンを使って、ちゃんと線を描いていたり。

漫画家さんが使っているような道具とかも使うようになって、色を塗るだけでもクオリティーがとても変わる。上手くなって残念、みたいなことも言われるんですけど、3年前に描いたものに色を付けただけで、上手くなったって言われたりもするんですよ。

――ああ、印象が変わったから!

田辺:そう、印象なんですよ。だからあまり上手い下手とか気にしないで、技術はやはり無いと思うので、何が伝わるかを大切にしたいと思います。

■実はかなり考えられていたLINEスタンプ

――LINEスタンプを配信されていますが、ご自身でお気に入りのものはどれでしょうか?

田辺:「既読」のやつですかね。

――「既読だけでOKです」というものですね。これはどういったところが?

田辺:LINEぽいものを入れたかったんですけど、世間的に使われている「既読スルー」
という言葉の「スルー」というのが、あんまりエネルギーが良くないなって思ったんです。

僕は良いエネルギーの言葉だけを使おうと子供の頃から意識していて。「好き」って言葉はいいけど、「嫌い」という言葉はあたりがよくない。じゃあ「好きではない」と言い換えるとか、そうやってネガティブな言葉や考え方をなくしていけば、自分が豊かになるんじゃないかって考えているんです。

言葉って人に残るから、(悪いエネルギーの言葉を使うのは)海とか山に行ってゴミを捨てていっているのと同じ行為だなと思って。そこに人がいなくても、エネルギーが残ると思うんですよ、その場所に。だから、言葉にはとにかく気をつけています。

「既読スルー」って言うと、僕の中でちょっと嫌なんですよねえ。だけどLINEにはそういうコミュニケーションもあるから、じゃあ、「OKです」って肯定をしておきながら、手が震えているイラストで「あ、こいつ無理してんな」みたいな、ちょっと笑いもプラスして。OKだよって言ってるけど、軽くプレッシャーをかけてる(笑)。

あんまり感じが悪かったり、深刻でも良くないし、ちょっと笑えないと重くなっちゃう。ギャグだけど10%本気よ、みたいなそのバランスを絵と言葉で表現しています。

僕の中から出るものとしては、ほっこりするとか、バカっぽくても安心するとか、ヘタだとしても、そっちのエネルギーにいかないと、自分が世の中に生産して出すものとして、責任が持てないなっていうのはありますね。

ただ、真面目にもやりたくないので。どこか自分のカラーとしてギャグも入れたい。それがちょうど上手くいったのがそのスタンプですね。

■本発売に合わせて、初の「個展」が開催決定

ゆるいようで深いポリシーがあった田辺画伯。生み出す作品に、多くの人が心を掴まれるのも納得できました。

4月11日からは渋谷PARCOパート1で初の個展『かっこいい犬展』の開催も決定! 田辺画伯が生まれて初めてキャンバスにアクリル絵の具を使って描いたという絵や、編集まで自身で行ったという映像、またもっちーの毛皮や、もっちーのリードを持って一緒に記念撮影ができるフォトスポットなども登場予定。

さらに、もっちーが小さいころしていた首輪や血統書、どこからか咥えてきたブランド物の財布など、もっちーの生い立ちが垣間見れるようなレアな展示物もあるそう!

PARCO限定のオリジナルグッズも登場するらしく、もしかしたらコップのフチで遊ぶアレが手に入るかも?

入場は無料なので、田辺画伯が細部までこだわりぬいた展示をぜひ観に行ってみてはいかがでしょうか? 楽しいことが大好きで、ユーモア溢れる田辺画伯なので、小ネタもたくさん散りばめられているはず。田辺画伯の良いエネルギーをわけてもらえるかもしれません。

『かっこいい犬。パーフェクトBOOK!』
ぴあ株式会社 1000円(税込)

『田辺誠一画伯・展 かっこいい犬。わんダーランド』
会場:PARCO GALLERY X(渋谷パルコ PART1・B1F)
期間:2015年4月11日 (土) 〜2015/04/29 (水) ※会期中無休 
時間:10:00〜21:00 ※最終日は18:00閉場
入場料:無料