Q:乳がんの妻の治療のことでご相談します。乳腺外科の医師から、抗がん剤治療をして、その後に手術をするよう勧められています。なぜ抗がん剤治療が先なのか納得できません。理由を教えてください。(48歳・通信器機会社勤務)

 A:がんとイボの違いを例に挙げて説明しましょう。イボは切除すればおしまいで、1年後に再発や転移したという話はありません。ところが、がんは早期で完全に切除した場合でも、数%の確率でその後、再発や転移が見つかり、命を取られることもあります。
 再発や転移については、大腸がんや胃がん、肺がんなどは、術後5年間再発がなければ、まず大丈夫です。
 ところが乳がんは、進行は遅いですが、とてもしつこいがんです。術後20年経って骨転移が発見されることがあります。ですから、5年間再発や転移がなかったからといって安心はできません。
 その理由については、乳がんのがん幹細胞が骨髄に潜んでいて、免疫が低下した時に転移を起こすと考えている研究者もいます。
 そのようにでも考えないと、20年もの間、いったいどこにがんが潜んでいたのか、説明がつきません。

●転移の確率を減らすため
 このことは、水痘・帯状疱疹ウイルスの潜伏感染と似ています。幼少時に水疱瘡(水痘)にかかると、水疱が治った後も、ウイルスは死滅していません。このウイルスは、脊髄神経などの知覚神経の神経節に遺伝子の形で潜伏しています。ストレスや過労、抗がん剤の使用などで体の抵抗力が低下すると、遺伝子の形からウイルス粒子に変わって再び活動を始めます。それが帯状疱疹の発症です。
 がんに話を戻すと、乳がんに限らず、がん細胞の固まりが発見された時点で転移している可能性が十分にあります。
 ペット検査でも1センチ以下の転移巣は発見は困難です。そのため、術前に抗がん剤治療で全身の目に見えないがん細胞を叩いておく。こうして原発巣も縮小させてから手術を行って、術後の転移の確率を低下させる。
 以上のような意図で、術前抗がん剤投与を行います。ご質問の方の妻の場合も、医師は同じ意図のはずです。
 免疫が落ちないように生活などに気をつけ、再発予防に努める覚悟なら自己責任で手術だけ受ける選択もあるでしょう。他の医師にセカンドオピニオンを求めるのも一つの方法です。

牧典彦氏(小山病院院長)
自律神経免疫療法(刺絡)や加圧トレーニング、温熱療法、オゾン療法など保険診療の枠に捕われずベストな治療を実践。小山病院(大阪市東住吉区)院長。