また、違った角度から脳の活性化を促すのは、東京多摩総合医療センター・神経外科担当医だ。
「〜をしたい」という能動的な思考が脳への刺激となり、脳のあらゆる部位の成長を促すためのカギになるという。
 「よく聞くと思いますが、女性が齢をとっても元気なのは“おしゃれをしたい”“美味しいものを食べたい”など好奇心が強いためです。一方、男性は50歳を過ぎる頃から性欲にしても食欲にしろ、欲求が低下していきます。例えば、聞きたいという主体的な意思がない状態で情報を入れても、耳には届きますが理解する“脳番地”と連携しない。つまり、欲求が枯れると脳も枯れていくわけです。男性がやるべき“脳活”は計算ドリルではなく、まず欲求を喚起させることではないでしょうか」

 この担当医は、“欲求の喚起”は難しく考えることはないという。
 例えば、通勤も習慣の一つだが、散歩や買い物などへ行くとき、ルートを変えて歩いてみると目に入る物が新鮮になり、視覚系脳番地に刺激を与えることになる。この視覚系脳番地は、目で見た光景などを覚える働きをし、初めての道で目的場所を探すのは視覚記憶が働く。これを鍛えると認知症予防にもなるという。
 もう一つは、自分好みの居酒屋やバーの新規開拓をするために、見たり探したりすると集中力を強くする機能を持つ思考系を刺激。
 さらに、情報を理解するときに働く理解系脳も連動して動くので、欲求を選ぶ力も鍛えられる。
 また、欲求が膨らむという点では、デパ地下や文具専門店などの散策もいい。最初は興味が無くても、色とりどりの商品を眺めているうちに、いつの間にか「美味しそう」「これ買ってみようかな」など欲求が膨らんでくる。見るという視覚系脳番地は感情系脳番地と結びつきやすい側面がある。肯定的な感情が引き金となり、新たな欲求が生まれる。
 その他、パソコンばかり見て視覚を酷使している人は、好きな音楽を聴く、話すことの多い人は聞く側に回るなど、反対の脳番地の場所を使うようにするのも効果的だ。

 最後に“脳トレ”の研究を続けている脳神経内科の専門医・平川恒久氏に「脳の効果的な働きを促す四つの心構え」を挙げて貰った。
 ●その日、一日の出来事を思い出す…記憶力アップに役立つ方法である。その日朝から寝るまでにあった出来事を一つひとつ思い出して言葉にしておく。
 ●頭の回転を鍛える食べ物はない…よく「○○はダイエットに良い」と聞くが、それらが本当なら今ごろ日本人は全員がスリムになっている。同じように頭の回転がよくなる食べ物があれば悩む人はいない。結局、「体にいい食べ物は脳にもいい食べ物」という認識を持つこと。
 ●睡眠をしっかり取る…脳にも休息(睡眠)を与えないと、頭の回転スピードは遅くなる。ごく普通に良いとされる生活リズムを守り、バランスの良い食事+睡眠が大切。
 ●人とのコミュニケーションを増やす…人と話すという事は、「その人に情報を伝える」という作業になる。そこには「表現力や伝わりやすさ」を思考するし、相手の言葉を聞くという作業も必要になる。

 それは脳番地をフルに使うことになり、脳を鍛えることにも繋がるのだ。
 「結局のところ学習効率、仕事の効率、競技のパフォーマンスを高めたいと思ったら、まず脳や神経のコンディションを整えて、能力を発揮できる状態にすることです」(平川さん)

 人間の脳も体も、努力しない限り衰退の一途を辿ることを自覚しよう。