世界のプロレス市場において独自の立ち位置にあるのがイギリス。同国ランカシャー地方で生まれた関節技主体の実戦的レスリング「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」は現代プロレスの源流のひとつとされ、日本マットにも縁が深いビル・ロビンソンやウィリアム・リーガルらの印象から「英国=技巧派レスラーの国」という認知も得ていました。

 現代の英国プロレス事情はというと、骨太なランカシャー・スタイルは鳴りを潜め、WWE・TNA人気の浸透や米国マットに進出した英国・アイルランド出身選手らが出戻る形で、クローズライン(ラリアット)主体のアメリカンスタイルが定着。さらにはアクロバティックなルチャスタイルを武器とする選手も増え、ハイブリッドな市場が形成され始めています。

 そんな英国プロレス市場の変化を拡大解釈的に感じ取れちゃうのが、『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ』の英国産コメディ三部作の完結編にあたる『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(2013)。
 出演はサイモン・ペグ、ニック・フロスト、監督はエドガー・ライトのお馴染みトリオ。

 20年前に失敗した「パブ12軒ハシゴ酒チャレンジ」を完遂すべく、ヤク中クズ男のゲイリー(ペグ)は4人のアラフォー仲間を強引に呼び集め、かつての地元の街へ。街の住人たちに違和感を感じつつも、4軒目の店で決定的な事件が発生......。街どころか地球全体の危機に関わることになってしまってもハシゴ酒完遂を諦めないゲイリーの運命は!? というのがあらすじです。

 このシリーズの売りといえば作品のテーマそのものに関わるジャンルオマージュなのですが、本作では「地球侵略モノ」! 過去2作同様、中盤手前で作風が変わり、SFに一転。「街の住人がこちらを凝視」「気づくと無言で襲ってくる」といった分かりやすい形で名作オマージュが登場します。

 そして、ゲイリーがトイレで絡んだ街の青年が"侵略者"の1人だったことから、ゲイリーの仲間や街の住人も加わり、5対5のバトルに突入。
 この乱闘シーンで、侵略者の1人がケブラ・ドーラ・コンヒーロを脇固めに返すような変形フェイスバスターを使えば、フロスト演じる巨漢のアンディがラ・アトランティーダからバックブリーカーを決める変則技を(さらに橋本真也風重爆エルボードロップやブッカーTのブックエンドも)炸裂!

 アクション映画の「擬闘(殺陣)」でプロレス技が使われることはしばしばありますが、文章にするのが面倒くさいレベルのルチャ技が英国産映画で観られるというのは英国プロレス事情の変化の証左に違いありません! 多分!

 お約束である「事件解決後のエピローグ」はシリーズ最長の内容となっており、主演コンビ以外にも今や世界的俳優となったマーティン・フリーマン(実はシリーズ常連)もスットボケたキャラで華を添えているのも見所。本作をいきなり観ても楽しめると思いますが、オマージュ元の『SF/ボディ・スナッチャー(1978年版)』や(本コラムでもネタにした)『ゼイリブ』が未見ならそちらもオススメです!

(文/シングウヤスアキ)