話題の精華女子高ブラバン少女。海外と比べてみると…
 2015年3月2日に発表された第29回日本ゴールドディスク大賞。なかでも「クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー」賞を獲得した『熱血!ブラバン少女』が話題になりました。

 演奏するのは精華女子高校吹奏楽部に所属する現役の女子高生。全日本吹奏楽コンクール金賞に輝くこと10回の名門校で、「高校生離れした超絶技巧」と評されることもしばしばです。

 アメリカ空軍楽隊が実力を証明するために作曲を依頼したと言われる超高難度の「華麗なる舞曲」も見事にやってのけるほど。

 でもなんだかあまりにも凄すぎて、マスゲームのように思えてしまう瞬間も。演奏中の一挙手一投足に至るまで決まり事があるような厳粛さです。

⇒【YouTube】精華女子高等学校吹奏楽部 「熱血!ブラバン少女」CM_本番編 http://youtu.be/Kw9ZL4iZyYU

◆ヘタクソだけど胸を打つ高校生バンドたち

 だけど、世界は広い。精華女子よりもすごい高校生バンドがきっとあるはず。そう思ってYouTubeで検索してみると、アマチュア吹奏楽の別世界が広がっていました。どこも間違いなく精華女子よりヘタクソなのに、曲はしっかりと耳に残る。そんな不思議な演奏の数々をちょっと覗いてみましょう。

 まずニューオリンズの高校。セカンドラインの本拠地なのにドラムがおぼつかないのが実に残念です。細かくハネるリズムを再現できず、フレーズ終わりの三連もギッコンバッタン。バンド全体もかっちり合わせなければならないところで誰かが遅れ、誰かがミストーンを出す。膝カックンをやられ続けるような演奏です。

 それでもスイングする意志を失わないのが立派。少し崩した歌い方や、基本の技術さえままならないのにアドリブを入れようとする心意気に、前向きな責任感を感じます。

⇒【YouTube】Chalmette High School Brass Band http://youtu.be/Sl8HCPSqSvk

 南アフリカの高校生は、選曲からしてふざけています。海パン一丁で踊り狂うベリー・ゴーディの息子と孫のユニットLMFAOの大ヒット曲「Party Rock Anhtem」。そんなお遊びにこそシリアスな演奏能力が欠かせないところですが、楽器の音が鳴り切らずピッチも不安定。下手をすれば、スベってしまいそうです。

 それでもなじみのあるメロディが流れ出すと、生徒は大喜びするのですね。曲が壊れないギリギリのところで、演奏が保たれているからです。その最低限の前提を支えているものは一体何なのでしょうか。

⇒【YouTube】LMFAO‐Party Rock Anthem by Ferrum High School Brass/Marching Band http://youtu.be/JAOC0vdVJAk

 最後はNRBQのアルバムにも収録されたウィンザー高校ブラスバンドによる「Ridin’ in my car」のカバー。いつ聴いても、じんわりと来る演奏です。リズムを失い、たどたどしくなぞられた細かなフレーズ。誰かが油断して間抜けな音が漏れる。調子っぱずれのハーモニー。原曲のギターソロから遅れを取る間奏。

 それでも胸を打つのは、出来る限りにおいて曲が大事にされていると感じるからです。誰かが怠けてとちるのではない。みんな自ずと献身的なのです。それは指や口が速く動くことよりも大事なことでしょう。

⇒【YouTube】Ridin’ In My Car - The Windsor High School Band - NRBQ cover http://youtu.be/izklxssfXiE

 そして、この三者に共通する大事な点があります。それは無理に笑顔を作らされることも、先生の口笛に合わせて皆同じ角度で首を振ってリズムを取らされることもないということです。もしかしたら、それが音楽を成り立たせる“最低限の前提”なのかもしれません。

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>