求人数が回復し、売り手市場となった今年の就職活動で、内定者に対して企業の「嫌がらせ」が問題になってきている。セクハラならぬ「おわハラ」という。なにが起きているのか。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が解説する。

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 今年、話題の就活キーワードと言えば、「おわハラ」です。「就活終われハラスメント」の略です。文字通り、就活生に対して企業の人事が「内定を出すから、就活を終わらせて、ウチにしぼれ」と嫌がらせをすることを指します。どのような手口があるのか。なぜ、この問題が起きているのか。何が問題なのか。解説します。

「おわハラ」の手口は、例えば、次のようなパターンがあります。

【他社の辞退を強要する】

「今、受けている企業を全部辞退すれば、この場で内定を出す」

「この場で、受けている企業全部に辞退の連絡を入れなさい」

 など、内定の辞退を強要するパターンです。いまは、電話番号をネットですぐに検索することができるので、「電話番号が分からない」という言い訳も通用しませんからね。

【他社の選考を妨害する】

 他社の選考に行かせないように、毎日のように面接の日程を入れるなどして妨害するパターンです。

【内定辞退をしようとした人を脅す】

 内定辞退をしようと連絡した人に対して、絶対に入社するように脅すパターンです。そして、前述したような、他社の辞退を強要する行動に出るのです。

「そんなの、昔からあるじゃないか」というツッコミの声がありそうですね。はい、昔からあります。「内定辞退を申し出たら、コーヒーをかけられた」などという都市伝説を聞いたことがある人も多いことでしょう。

 他にも、バブル期には合宿という名目で旅行に連れて行き拘束する、何度も呼び出され映画や食事に連れて行かれる、意味もなく新幹線で博多まで往復旅行に連れて行かれるなんていう話がありました。これらは接待攻勢であり、「いい思い」をしているようにも聞こえますが、他社に行かせないための嫌がらせとも言えます。せっかく就活が終わっているのに学業を阻害する行為だとも言えるでしょう。これらも広義の「おわハラ」とも言えそうです。

 この「おわハラ」がなぜ、今、注目されているのか? 就活時期繰り下げにより、採用活動が混乱しているからです。表向きには8月から選考開始となっていますが、水面下の選考は始まっているわけです。優秀な学生を早く囲い込みたいという意図から、今年はこの「おわハラ」が横行することが懸念されています。

 採用担当者も必死です。求人数が回復し、売り手市場化する中、採用数のノルマを達成しなくてはなりません。他社よりも早く囲い込むために、時間も、人手もお金もかけている中、成果を出せない場合は、責任を追求されるからです。

 この「おわハラ」に対して、警鐘を呼びかける動きがあります。大学、短期大学、高等専門学校で構成する就職問題懇談会では、「大学等卒業・修了予定者の就職・採用活動時期変更に係る企業等への要請に関する申合せ」を取りまとめ、2月25日に発表しました。

 内容は、【1】就職時期の変更について【2】就職・採用活動の公平・公正の確保について【3】採用選考活動における評価について【4】学生の健康状態への配慮について、という大きく4つの柱からなっています。

 そのうち2の「就職・採用活動の公平・公正の確保について」という項目において、職業の選択の自由を妨げる行為やハラスメント的な行為について、厳に慎むように要望が書かれています。具体的には、選考期間開始前の早期の内々定、内定承諾書・誓約書などの意思確認書類を選考期間開始前に提出させること、採用選考時期に長時間拘束するような選考会や行事を実施すること、自社の内々定と引き替えに他社への就職活動をやめるように強要することなどです。

 なお、同様に、インターンシップという名のもと、会社説明会や選考のようなことを行うことについても慎むべきだと書かれています。

 この申合せの書類は、大学で企業説明会が開催される際に、企業に手渡すように伝えられています。法的拘束力があるわけではないですが、かなり強めのトーンで書かれている書類だと言えます。

 問題提起するためのビデオまで作られました。YouTubeで「就活終われハラスメント」で検索してみてください。

 「これは“おわハラ”では?」と思ったら、大学のキャリアセンター職員などに相談してみましょう。対応の仕方、上手い断り方などを教えてもらえますよ。就活生の皆さんは、早く内定がほしいという気持ちもあるかと思いますが、とはいえ、自分たちには企業を選ぶ権利があるということに気づいてほしいです。