女性の12人に1人が罹患する乳がん。増加傾向には、確実に脂肪過多の食生活や飲酒が影響しているといわれている。しかし、発がんリスクの筆頭にあげられる「喫煙」との関係については、長らく曖昧なままだった。

 ところが今年1月、日本の集団疫学研究である「高山スタディ」から、乳がんと喫煙に関する報告が出された。しかも、本人ではなく、夫の喫煙との関連で。

 高山スタディは、生活習慣と疾病との関連を解析するために1992年にスタートした調査研究。岐阜県高山市の住民の協力で岐阜大学医学部の疫学・予防医学分野の研究チームが行っている。

 今回の報告は、92年9月から2008年3月までの期間、35歳以上の女性1万5719人を追跡し、乳がん発症と喫煙との関連を調べたもの。乳がんの発症は、地域のがん登録で確認し、喫煙や飲酒などのライフスタイルは、自己記入方式の質問票で回答してもらった。

 年齢やBMI(体格指数)、飲酒、初潮年齢、出産・授乳経験など他に乳がん発症との関連が疑われる要因の影響を排除し解析した結果、『本人』の喫煙と乳がん発症との関連は認められなかった。

 次に『夫』の喫煙との関連を解析したところ、妻本人がたばこを1本も吸わなくても、夫が1日に21本以上たばこを吸っている夫婦では、夫も非喫煙者である夫婦に比べて、妻の乳がん発症リスクが1.98倍に上昇することが判明したのである。

 受動喫煙と乳がんについては国立がん研究センターの報告もある。閉経前の女性の場合、自分自身が非喫煙者でも「たばこを吸う人と10年以上、一緒に住んでいた」「家庭以外で、毎日1時間以上、たばこの煙を吸う機会がある」などの女性は、乳がん発症リスクが1.5〜2.6倍に上昇するというのだ。喫煙者の旦那さま方も、自分の肺がんリスクは意識するかもしれないが、まさか妻の乳がんリスクとは思わなかったろう。

 女性の乳がん好発年齢は40歳以上。子育ても仕事も今が踏ん張りどころの年齢である。できるだけ、人生のリスクを減らしてあげてください。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)