ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の日本代表が、いよいよ動き出す。今月下旬のテストマッチに臨むメンバーが、3月19日に発表された。

 新監督は31人のメンバーを招集した。そのなかには、所属クラブで試合に出ていない今野泰幸、長友佑都、内田篤人が含まれていた。ケガなどに備えて、あらかじめ12人のバックアップメンバーも発表した。国内で行われるテストマッチとしては、すべてが異例と言っていい。

 ハリルホジッチ監督の狙いは明確だ。
 初陣として注目を集める今回の活動は、3月23日から31日まで9日間に及ぶ。指揮官の視線は27日のチュニジア戦、31日のウズベキスタン戦だけでなく、それ以外のトレーニングにも向けられているはずだ。むしろ、そちらのほうが重要と言える。
 
 6月のW杯予選を前にした最初で最後の活動となる今合宿は、ハリルホジッチ監督がチームコンセプトを提示できる機会だ。指揮官にとっては日々の練習で選手を観察しつつ、オフザピッチでもコミュニケーションを深める時間である。スタッフ同士の意思疎通をはかるためにも、合計7回のトレーニングは大きな意味を持つ。定番の23人ではなく31人のグループとしたのは、できるだけ多くの選手に自らのサッカーを知ってもらうため、と考えられる。6月のW杯予選で自身のサッカーに初めて触れる選手がいないための、監督なりのリスクマネジメントなのだろう。
 
 31人のリストは妥当だ。宇佐美貴史の復帰は遅いくらいで、興梠慎三と永井謙佑も同様である。
 
 ザックとアギーレに重用されてきた岡崎慎司、本田圭佑、香川真司らは、ロシアW杯でも主力を担うべき選手たちだ。その一方で、新しい化学反応が欲しい。決まりきった選手交代では、ピッチ上の変化も想定の範囲内にとどまってしまうからだ。
 
 振り返れば、中田英寿と黄金世代の時代も、実質的に2002年と2006年のW杯で幕を閉じた。2010年と2014のW杯を過ごした本田や岡崎らの時代が、このまま2018年のロシアまで続くのは、日本サッカーの停滞を意味する。他ならぬ彼ら自身も、競争のない安泰など望んでいないだろう。アギーレ前監督が招集した柴崎岳と武藤嘉紀だけでなく、宇佐美、興梠、永井らを組み合わせることで、ハリルホジッチ監督には攻撃の活性化をはかってほしいのだ。
 
 もうひとつ臨みたいのは、代表で戦う意義の再確認である。
 日本代表に選ばれた選手たちは、国を背負う誇りやプライド、代表選手としての使命感を口にする。しかし、ブラジルW杯でもアジア杯でも、先行したのは戦術と技術だった。球際の攻防、勝負への執着心は、優先順位がもっとも低かった。

 気持ちを見せなかったわけではないが、対戦相手をはっきりと上回ることはできなかった。「足先でプレーしている」と言われるような、技術に寄りかかったサッカーである。
 
 チャンピオンズリーグと比較すると、日本代表のサッカーがひどく物足りなく映る。各国の代表選手がしのぎを削る欧州最高峰の舞台では、キックオフから体力と気力をトップギアへシフトし、足を止めることなく動き、攻守の切り替えに妥協しないサッカーが繰り広げられている。足元でプレーしているチームは、選手は、あの舞台では戦えない。
 
 ロシアへ向けて再始動するチームに必要なのは、誇り、プライド、使命感、などという耳触りの良い言葉ではない。

 気合、である。根性である。

 日本人だからこそ表現できる感情を、日本代表のピッチで感じたいのだ。それは、新監督のデビュー戦からできることである。