PebbleにみるマーケティングツールとしてのKickstarterの使い方

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当初、資金集めの場として始まったクラウドファンディングサーヴィス「Kickstarter」(キックスターター)はいま、新しいマーケティング手法としての役割も担うようになっている。同サイトで大成功を収めたPebbleは、そのモデルケースだ。

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独自のスマートウォッチを開発するスタートアップ・Pebbleが、Kickstarter(キックスターター)を通じたキャンペーンで目標額である10万ドルの資金をわずか2時間で集め、同クラウドファンディングサイトの集金キャンペーンとして過去最大の資金を集めた企業となったのは、2012年のことだった。

それから3年が経ち、彼らPebbleは、自分たちのもつ素晴らしい記録を破り、同社の最新デヴァイスである「ぺブルタイム」の開発に向けて、わずか17分間で50万ドルを集めた。わたしがこの原稿を書き始めた時点で、このキャンペーンで集まった資金総額は190万ドル。そして書き終えた時点で、その額は430万ドルに膨れ上がっていた。

とはいえ、こんな話も、最初のキャンペーン以来Pebbleに注目し続けてきた人たちにとっては別に驚くほどのことではない。最初のころはリスクだらけだったかもしれないが、Pebbleもいまではそこそこ大きな企業規模に成長し、その製品は人気が高く、BestBuyやTargetなどといった大手小売店で売られている。

10桁の資金がいくらでも集まるバブルともいえる時代だ、Pebbleはヴェンチャーキャピタル(VC)から資金を集めるのに、ほとんど苦労はないだろう。それなのに、なぜ彼らは新たなプロジェクトをKickstarterに頼ったのだろうか。

ペブルタイムを紹介するヴィデオで、CEOのエリック・ミジコフスキーは“未来の支援者”たちに向けてこう呼びかけた。

「ぼくらは再び、皆さんのそばでともに仕事をするために戻ってきました。Kickstarterを通じて!」

これは、彼らにとって正直な言葉なのかもしれない。同時に、ミジコフスキーがどう考えていたかはともかく、これもまた、ある種のマーケティングであるに違いない。

つまり、Kickstarterの果たす役割が微妙に変わってきた、ということだ。クラウドファンディングというサーヴィスは、すでに地位を確立した会社が自ら市場に“出向き”、新製品に対する熱狂を煽り広めるための場に変わっている。熱狂はときとして、プロジェクトの先行きを曇らせる原因ともなる。そのとき、Kickstarterの手助けが間違いなく必要になってくるのだ。

Kickstarterに起きている変化

Kickstarterは当初、独立したアーティストや映画製作者、アマチュア発明家、それに起業家たちが持つ価値あるアイデアに対して資金集めができる場だった。Kickstarterの共同創立者で前CEOのペリー・チェンは、初めてサイトをインターネット上に立ち上げた際に、ニューヨーク・タイムズ紙にこう語っている。

「お金の問題は常に創造性の前に立ちはだかってきました。誰だって実現させたいアイデアをたくさんもっている。けれど、大金持ちの親戚でもいなければ、そのアイデアを抱き続けることなど決してできなかったのです」

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Kickstarterはいまだに、こうした尋常でないアイデアを受け入れる場として機能している。同時に、Pebbleの例からも分かる通り、それ以上の役割も果たしているのだ。オンライン出版社のバックチャネル (Backchannel) がぺブルタイムのキャンペーンについて行ったインタビューで、Kickstarterの現在のCEOはこの微妙な変化を、変化だと認識していないものの、重要視はしているようだった。

「ぺブルタイムのプロジェクトを見れば、わたしたちKickstarterのプラットフォームのもつパワーと有効性が、お金とは別のところにあることが分かるでしょう。それはコミュニティであり、コミュニティを通じた流通なのです」

言い換えれば、それはマーケティングである。最初のアイデアを極限まで進めるならば、会社であればその規模を問わずKickstarterを利用してコミュニティに近づいたり、商品を流通させたり、といったことが可能になり、そこではKickstarter自身がマーケットの力学に支配される小宇宙となってしまう。Kickstarterはこれを何とかしようとして始まったのではなかったか。

こうした問題に取り組むプラットフォームは、Kickstarterだけではない。最近のUS版『WIRED』の論説で、ある工芸家が、Etsyは魂を失ったと非難した。Etsyに集まる商店主たちがサードパーティの製造業者と一緒に仕事を始めたことに対して、だ。

その結果、大量生産品が大量に流れ込むことになり、手作りの商品を扱う小売店が立ち行かなくなってきた、と言うのだ。ここで作り出されたようなネットワークの効果はEtsyにとって好都合だが、これはKickstarterの場合も同じだろう。しかし、こうしたプラットフォームに集まる商店や製作者たちにとっては、大量に物が溢れる市場の中で注目を集めることはこれまでどおり難しいことだと思われる。

自由の値段

同時に、Pebbleのような会社を、間違った資金集めをしようとしていると非難することも難しい。結局のところ、PebbleのようなプロジェクトこそKickstarterの神髄に初めて迫るものだったのではなかろうか。素晴らしいアイデアを出す少数精鋭のチームが、VCの世界には受け入れられずに、Kickstarter上でそのメリットを最大限に享受して人気度を高めてきたのだから。

PebbleはKickstarterを通じて資金を集めたために、市場からの需要に応えることができたし、もしVCの出資者の言う通りにしていたなら決して手にすることのできなかった自由な創造性を発揮することができた。

これは、Kickstarterがよくハードウェアに革命を引き起こしたといわれるひとつの要因だろう。技術分野への正統派の投資家たちと異なり、ここに集まる人たちは、Pebbleやオキュラス・リフト(Oculus Rift)などのリスクの大きなハードウェアのプロジェクトに、より魅力を感じてきたのだ。

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