金融庁のHPより
この春、株主還元策を実施する企業が増えそうだ。「スチュワードシップ・コード」と「コーポレートガバナンス・コード」という2つのコード導入によって、単なる大株主だった機関投資家がモノ言う株主へと変わるためだ。株主還元策を実施しそうな企業を狙え

◆株主還元策に大異変!

「この春はちょっとした“株主還元バブル”になるかもしれません」と話すのは、株式ジャーナリストの大神田貴文氏。その理由は、「スチュワードシップ・コード」(責任ある投資家の原則)と「コーポレートガバナンス・コード」という2つのコードだ。

「米国やドイツでは株価が史上最高値圏にある一方、日本はまだまだバブル期の半分以下。日本には世界的に見ても高収益の優良企業は数多いのですが、利益を貯め込むばかりで株主に還元しないことが株価低迷の元凶と指摘されてきました。そこで出てきたのが、証券関係者の間で『ダブル・コード』と呼ばれる2つの新規則です」

「スチュワードシップ・コード」と「コーポレートガバナンス・コード」の2つのコードは、ともに企業に株主本位制を徹底させ、効率化と利益還元充実で株価の押し上げを図るのが狙いだ。この利益還元強化の仕掛け人は金融庁と東証。会社法改正などのルール整備をほぼ終え、6月の株主総会からの適用を待つことになっている。

「生命保険会社や企業年金といった機関投資家がこれまで“お仲間”だった上場企業に大幅増配を要求し、拒否する企業には6月の株主総会で役員人事案に反対票を投じるなど過激な行動に出る可能性が高い。配当が2倍なら、単純計算で株価は2倍に跳ね上がる計算になります」

◆2つのコードと改正会社法がカギ

 まず「スチュワードシップ・コード」とは、顧客の虎の子を預かる機関投資家は投資先企業に遠慮せず、効率化や利益還元を要求せよという基本原則を金融庁と東証が明文化したもの。

「株主が大幅増配を求めると、総会屋やハゲタカ投資ファンドと同類視されかねなかったが、今年からは顧客の利益のためだとして企業経営者に堂々と利益還元を要求できるようになります。昨年12月時点で175の機関投資家がコードの受け入れを表明しています。年金の取扱高首位の三井住友信託や日本生命保険、野村アセットマネジメントなどメジャーな機関投資家が揃って賛同しており、『投資先企業の経営には口を出さない』という財界主流企業の暗黙の了解は破られることになりそうです。当然、経営効率の低い企業や、内部留保が厚いのに利益還元が薄い企業は、機関投資家から厳しく追及されることになるでしょう」

「コーポレートガバナンス・コード」では経営者に企業価値向上や株主との対話を強化するよう求めている。

「株主総会シーズン前の5月には、社外取締役の義務付けを盛り込んだ改正会社法が施行されるので、会社は常に外部の監視の目にさらされることになります。2つのコードと改正会社法によって、今春、大幅な株主還元策を実施する企業が急増すると見られているのです。ある意味では、取締役の保身のための株主還元策ともいえます」

⇒【後編】「株主還元策を実施しそうな狙い目企業は?」に続く http://hbol.jp/28520

◆今後、株主還元策を実施しそうな銘柄

⇒【グラフ】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=28888

●ミネベア(東1・6479)低配当性向
現在株価:1824円/目標株価:3200円

自動車やスマホ向けの極小部品を生産。最高益更新が続いているものの、利益還元に積極的とは言い難い。配当を2倍に増やす余地がありそう

●ローム(東1・6963)キャッシュリッチ
現在株価:7850円/目標株価:1万2000円

電子部品セクターの超優良企業。大規模集積回路(LSI)が自動車向けを中心に拡大。活発に設備投資してきたが、約6000億円の利益剰余金がある

●日立工機(東1・6581)低PBR
現在株価:940円/目標株価:2300円

日立系の電動工具会社。北米など海外販売の伸びで、’16年3月期も大幅増益が濃厚だが、株価は割安圏。日立による完全子会社化の観測もある

●武田薬品工業(東1・4502)低ROE
現在株価:6915円/目標株価:9000円

医薬品業界で売上高トップ企業だが、時価総額ではアステラス製薬に肉薄されている。2兆円近くある利益剰余金を吐き出すよう求める声が強い

※株価は3月2日時点

【大神田貴文氏】
株式ジャーナリスト。国内大手証券会社などを経て現職。マーケット情報に精通しているだけでなく個別企業の裏情報も知る事情通。金融、経済政策にも強い