盛りあげよう!東京パラリンピック2020(15)

■大分中村病院理事長・中村太郎インタビューVol.2

 パラスポーツでは、障がいの重さや運動機能のレベルに応じて、クラス分けを行なっている。そういったクラス分けを中村太郎氏は、パラリンピックのチームドクターとして、また、パラリンピック以外の様々な大会で行なってきた。クラスを減らして行くこと、逆にクラスを細分化すること、どちらもパラスポーツにとって大きな意味がある。パラスポーツの課題のひとつ"クラス分け"について語ってもらった。

伊藤数子(以下、伊藤):「オリンピックとパラリンピックをひとつに」という意見が一部にありますが、それを現実的に考えたとき、どういった課題があると思いますか?

中村太郎(以下、中村):一緒にやるという時に、クラス分けをどこまでやるかですよね。障がいがない人と下肢に麻痺がある人とのクラスを分けてやるのか、本当に同じルールで同じスタートラインで100mを走るならば、車椅子以外だと、よほどのことがない限り障がいのない人たちが速いですよね。

伊藤:そうなりますよね。それに加えて、メダルの価値という部分も課題になってきますよね。それを踏まえて、今はパラリンピックのクラスをだんだん少なくしようという考えもあると聞きました。

中村:オリンピックなら、100m男子の金メダル1個なんですが、パラリンピックは100m男子だけで、十数個になります。障がいのない人と障がいのある人を考えると、障害のある人のほうが少ないですよね。そこからさらに障がいの重さで分けていくので、すごく少ない人数の中のメダリストということになります。そう考えると、オリンピックとパラリンピックを一緒にしたときに、メダルの価値が同じなのかという議論があるわけです。

伊藤:そういった意味合いからクラスを減らしていくという考えがある一方で、パラスポーツに"クラス分け"が存在する大きな理由は何なのでしょうか?

中村:それは、やはり重度の方でも競技としてスポーツができるためには、クラス分けをしないと、障がいの軽い人たちが圧倒的に有利になってしまうからじゃないでしょうか。

伊藤:つまり、クラス分けをすることによって、障がいの重い人たちにも多くの機会が与えられる、という意義があるわけですね。

中村:はい。

伊藤:私は特に車椅子バスケを見ると、クラス分けがあるからこそこんな面白いゲームになっていて、フェアな試合になっているだと思うんですよね。

中村:車椅子バスケのポイント制はすごく考えられているものだと思います。障がいの重度別に点数がついていて、チームとして14点以内に収まるように、重い人も軽い人も出てないと、チームが組めないようになっていますよね。

伊藤:重度の人にも役割があるんですね。車椅子バスケを初めて見た時、なんてフェアな競技なんだろうって思いました。

中村:昔からそうですけど、本当にクラス分けは、常にパラリンピックの課題ですよね。今は、できるだけ統合しようという方向ですけど、あまり統合し過ぎると、重度のパラアスリートの方たちの勝つチャンスがなくなってしまいますし。

伊藤:そうですよね。だからこそ慎重に考えていかなければならないと思いますが、そもそも「クラス分け」の仕方にも変遷があるようですね。

中村:元々、パラスポーツというところから見ると、医学的に首に障がいがある人はこのクラス、胸椎に障がいのある人はこのクラスとか、医学的に分けていた時期があるんです。でも、だんだん運動機能で分けようということになっていって。特に車椅子バスケとか水泳などは、すごくクラス分けが難しいんです。実際に泳いでいるところとか、車椅子バスケをしているところを、国際クラスファイア(クラス分け委員)の人たちが見て、クラス分けを行なっています。医学的な面から見た障がいだけじゃなくて、実際にそのスポーツをする上での体の機能で、クラス分けをしようというのが今の考え方だと思います。

伊藤:かなり難しい判断が要求されますね。

中村:特にパラリンピックなどでメダルを目指している選手にとっては、自分がどのクラスに入るかというのはすごく重要なことだと思います。メダルが取りやすくなったり、取りにくくなったりしますので。

伊藤:そう考えると"クラス分け"は責任の大きい仕事ですね。ところで、中村先生はアスリート・スポーツの場面以外でも、障がいのある方と接することがあると思いますが、そういった方のスポーツとの距離はどう感じていますか?

中村:パラリンピックを目指すような本格的なアスリートとは裏腹に、一般の障がい者の中には、「スポーツ」はまだまだ遠い存在と思っている人が多いんじゃないかと思います。

伊藤:そうですよね。

中村:現実に、移動ひとつとってもそうだし、スポーツウェアに着替えるのだって大変だし、練習場所がないとか、あるいは周囲の目が気になるとか、そういうのがまだあるんじゃないかなと思います。そういった点では大分県はすごく変わっていて、国道沿いにサイクリングロードとランニング道路があるんですけど、そこを毎日当たり前のようにマラソンランナーと車いすマラソンのレーサーが一緒に走っているんです。東京ではなかなか、皇居の周りを一緒に走るってことは難しいことですよね。

伊藤:確かに!東京ではちょっと考えられないです。大分県のそういった姿は、2020年に向けて東京が学ぶべき"何か"を示しているかもしれませんね。次回はその話を聞かせてください。
(つづく)

スポルティーバ●文 text by Sportiva