今秋、映画やドラマなどをインターネットを介して配信する米ネットTV最大手「ネットフリックス」が日本でサービスを開始する。アメリカでは月額1000円程度で利用でき、いつでも好きなだけ自分の都合でドラマや映画を堪能できるようになる。このサービスに対応したテレビも続々投入される。

 ネットフリックスは日本市場参入に隠し玉を用意しているという。同社と水面下で映像配信に関する提携交渉を行なっている制作会社関係者が話す。

「アメリカでの成功モデルを日本のマーケットにそのまま持ち込む。新旧のハリウッド映画に加え、日本の過去の映画やドラマもラインナップする予定で、視聴者が驚くようなコンテンツを用意して、華々しいスタートを演出するつもりだ。

 日本版オリジナルドラマも制作予定だ。日本のドラマや映画を徹底的にリサーチし、人気の日本人俳優・女優をキャスティングして、賞を総ナメにするようなドラマを作る意気込みで準備している。企画段階のものも含めれば、複数の作品が現在進行中だ」

 巨大な資金力を背景に、日本の視聴者を一気に取り込むコンテンツを作っているというのだ。

 日本のテレビ番組の劣化は、その資金力(制作予算)の低下に加えて「幼稚な視聴率競争」と「過度なスポンサーへの配慮」が原因と分析する専門家は多いが、ネットフリックスの場合は定額制なので視聴率もスポンサーへの配慮も必要ない。

 料金設定については、アメリカの月額7.99ドル(約970円)より若干高めの値段が検討されているという。

 当然、日本のテレビ局は戦々恐々だ。この間、テレビ・新聞とも、ネットフリックス日本上陸のニュースをほとんど報じていないことこそが、その衝撃を物語っている。

『日経ヴェリタス』(2月22日発行号)が小さなコラム欄で、ネットフリックスの全編一気配信サービスなどでドラマの視聴スタイルが変化しつつあることに触れ、〈(ドラマの「一気見」は)中毒性が高く、視聴者のメンタルヘルスに影響を及ぼす可能性がある〉と米テキサス大教授の指摘を紹介し、この黒船を否定的に報じた程度だ。いうまでもないが、民放キー局と大手紙は資本関係にある。

 もちろん内心では、視聴者を奪われないかと焦りまくっている。ネットフリックスが日本進出を発表した8日後の2月12日、民放キー局5社のトップが会合を開いた。主要議題となったのは、放送後も1週間程度、番組をインターネットで視聴できるようにする「見逃し配信」の共通システムの確立についてだった。

 2011年7月の地デジ化以降発売のテレビの多くはネットと接続可能であり、ネット経由で様々な映像を視聴できる環境が全国的に整ったことが背景にあるが、ネットフリックスを意識した議論であることは間違いない。

 会合では「見逃し配信もリモコンの専用ボタンを検討」という案が出たが、そもそも見逃し配信システムが確立できるかも怪しい。ネット配信を前提にすればCM広告料が安くなり、従来のCM広告収入ビジネスが成り立たなくなるからだ。

※週刊ポスト2015年3月27日号