つらい慢性腰痛の本当の原因はストレス!? 「気のせい」ではない、心因性の痛みとは?

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 「腰痛でさあ......」と話すと、わらわらと「自分も腰痛だ」という人が現れる。40歳代から60歳代のうち、約4割が腰痛に悩んでいるのだから、腰痛の話に、自分の腰痛の話で返される率は極めて高い。

 病院に行っても「異常なし」と言われ、痛み止めを処方されるだけで根本的には治してもらえず、鍼治療やマッサージ、さらにはさまざまな運動法など、良い治療法を求めて、多くの人が彷徨っている。だから腰痛の話は、おおむね「腰痛のとき自分はどうやって痛みを軽減させているか」とか、「どこの誰の腰痛治療がいいか」という話に行きつく。

他人の経験談が役に立つとは限らない

 だが、腰痛は実にさまざま。一言で腰痛と言っても、腰の上のほうが痛む人もあれば、尾てい骨あたりが痛む人もいる。前にかがむと痛む人もあれば、背中のほうに反ると痛む人もいる。

 さらに原因は、もっとさまざま。つまり、他人の経験談が役に立つとは限らない。むしろ逆効果になることも多い。自分の腰痛の真の原因を知らないまま、むやみに他人が「これがいい」と勧める方法を試していると、腰痛を悪化させることもままあり、ときには命の危険すらある。

 腰痛を感じたとき、誰もが「腰が痛みを発している」と考える。ところが、実は腰が痛いのではなく、尿路結石や膵臓炎など、内蔵の病気による内蔵の痛みを、腰や背中の痛みと感じている場合も少なくない。特に姿勢を変えても痛みに変化がない場合は、内臓の病気の可能性が高い。

 また、腹部の大動脈の径が拡大し、こぶ状になる腹部大動脈瘤は、背中から腰にかけて広い範囲の痛みとして感じられることがある。腹部大動脈溜に特有の症状がほとんどないため、腹部大動脈瘤で受診する人は少なく、他の疾患の受診時に偶然発見されることが多いくらいだ。しかし「ただの腰痛」と思って放置して、腹部大動脈瘤が大きくなって、破裂してしまうと、死に至る確率は極めて高い。腹部大動脈瘤はコレステロールや炭水化物のとりすぎやアルコールの飲みすぎによる動脈硬化が原因になることが多く、メタボリックシンドローム気味の人は要注意だ。

 腰痛を甘く見ると、怖い病気が隠れているのを見逃す危険があるので、腰痛に危険な病気が隠れていないか確かめるために、一度はきちんと受診をすべきである。

3つの原因が重なって腰痛を引き起こす

 実際に腰が痛む場合の原因は、大きく3つある。骨や椎間板などの異常という「器質的な痛み」、末梢神経、脊髄、脳などの神経の障害という「神経障害性の痛み」、ストレスやうつ不安などによって起こる「心因性の痛み」だ。

 そして原因は、1つとは限らない。しばしば2つ、あるいは3つの原因が重なって腰痛を引き起こしている。たった1つの「ピンポイントの原因があり、それを突き止め、そこさえ治せば解決する」という幻想を抱いていると、いつまで経っても納得できる医師や治療に出会えず、慢性腰痛とたって、より良い治療を求めて次から次へと医療機関を変える、いわゆる「ドクターショッピング」をすることになる。

 誰もが腰痛の原因として思い浮かべるのが器質的な痛み。物理的に骨や椎間板を傷めるケースばかりではない、化膿性脊椎炎や結核性脊椎炎など、脊椎の感染症で腰痛が起こることもある。感染症の場合、一般には発熱を伴うが、熱があまり上がらないこともある。全身がだるかったり、安静にしていても痛む「自発痛」があったりする場合は、特に感染症による腰痛が疑われるので早めに受診したい。

 神経の障害は、脊椎を通っている神経が物理的に圧迫されている場合、悪化させると排尿障害や排便機能の異常など重大な結果を招くことがある。足の痺れや麻痺があり、歩けなかったり、安静にしているのに痛みが強まったりする場合には、整形外科、特に腰痛を得意とする、脊椎の専門医できちんと調べたい。

痛みを感じる仕組みに隠れた、心因性の痛みを引き起こす仕組み

 実は非常に多くの慢性腰痛に関わっているのが、心因性の痛みだ。「心因性」と聞くと、自分が感じている痛みを「気のせいだ」と否定されたような気がするかもしれない。しかし、心因性腰痛とはそんな単純なものではない。

 たとえば、うつ病などの精神的な疾患が原因で腰痛を感じることがある。「精神病」と聞くと、特別な人がかかる特別な疾患だと思うかもしれないが、現代のようなストレス社会では精神疾患にかかる人は増えていて、誰がなっても不思議ない病気だ。さらに、うつ病を発症する原因が、一般の人が考える「心の問題」にあるとは限らない。甲状腺機能異常症でホルモン分泌に異常をきたすと、その症状がうつ病の症状に似ているばかりでなく、異常なホルモン分泌が脳にまで影響を与えて、うつ病になる場合がある。

 精神科の病気にまで至らない、ちょっとした不安も心因性の腰痛を引き起こす。そこにあるのは、痛みを感じる仕組みとの関係だ。

 「ドクターショッピング」をする人は、「ひとかけの痛みもない生活」を求めていることが多い。しかし、健康な人も、日々、わずかな痛みを感じながら動いているのだ。実は痛みは、とても必要なものである。人は日常の動作の中で微妙な痛みを感じることにより、動作を適切な力加減に調整している。そのため、交通事故で脊椎を傷めた場合など、なんらかの原因で神経に問題があり、痛みを感じることができなくなった人は、しばしば力加減できずに動作することにより、膝などの関節を破壊してしまう。これは「シャルコー関節」と呼ばれている疾患だ。

 しかし、ふだんは痛みがあっても、痛みとして、あまり感じてないのではないだろうか? それは痛みを感じても、痛みとしてあまり認識しないようにする仕組み「下行性疼痛抑制系」があるからだ。ところが、人間はストレスを感じると、この「下行性疼痛抑制系」システムの働きが悪くなる。その結果、ふだんなら無視できるていどの痛みが、耐えられない、とても我慢できない痛みとなってしまう。そして、健康な人でも動作のたびに発生しているものの意識していない痛みまでが、強い痛みとして感じられる。

 いったい、どのようなストレスが腰痛を引き起こすのか?  次回は「下行性疼痛抑制系」システムの詳しい仕組みなども含めて、腰痛とストレスの関係に深く切り込む。
(文=森田 慶子/医療ライター)