3月14日、金沢〜長野間を結ぶ北陸新幹線が開業した。今後は東京〜金沢間の所要時間は2時間28分で、約1時間20分の短縮となる。

 その近未来的なデザインは鉄道ファンならずとも胸が躍る。「和の未来」をコンセプトにしたというだけあって、日本が誇る世界一の技術が随所に使用されている。フェラーリを手がけたことでも知られる工業デザイナーの奥山清行氏が車体デザインを監修。先頭車両の流線型ガラスは、富山県砺波市の「新光硝子工業」だからこそ実現した。

 見えない部分にも独自の技術が組み込まれた。センサーで検知した振動を、電動油圧装置で押さえ込む「フルアクティブサスペンション」を最上級車両「グランクラス」に搭載。微細な振動をかつてないレベルでカットする。

 安全装備も充実している。整備新幹線(※注)である北陸新幹線の営業最高速度は時速260kmまでと定められているが、最高320kmで走行する東北新幹線(E5系)と同じ性能のブレーキを採用し、地震発生時に最高速から完全に停止させるまでの距離を従来型に比べ300mほど短縮した。

【※注/全国新幹線鉄道整備法に基づき、日本政府が1973年に整備計画を決定した北陸など5路線の新幹線。同計画で営業最高時速が260kmと定められている】

 北陸新幹線に用いられるテクノロジーは、半世紀の新幹線の歴史の集大成だ。1964年に世界で初めて時速200kmを超える高速運転を実現して以来、日本の新幹線は他国に類を見ない進化を遂げている。

 最もわかりやすいのはスピードだ。東北新幹線は世界トップレベルの最高時速320kmを達成し、山陽新幹線も時速300kmを記録する。日本の大動脈・東海道新幹線でも3月14日のダイヤ改正から最高時速285kmとなり、従来の速度を15km上回る。

 東京五輪に間に合うよう急な用地買収と突貫工事で1964年10月に開業した東海道新幹線は、路線に急カーブが多いために高速化が難しく、最高速度は1992年に時速270kmとなったままで止まっていた。今回15kmのスピードアップを実現させたのは、新型車両「N700A」が新技術を導入したことが大きい。

 それがカーブ走行時にあえて車体を内側に傾けるように外側を持ち上げることで遠心力を打ち消し、安定走行を実現した「車体傾斜システム」だ。

「空気バネで車体を1度傾かせることで、これまで速度を落としていたカーブでも減速せずに走行できるようになりました」(JR東海広報部)

 各国を見渡せば、フランスのTGV、中国のCRH380など最高時速300km超で運行する高速鉄道がある。スピードだけで比較すれば「新幹線は世界一とはいえない」ともいわれるが、それは短絡的な見方だ。

 真っすぐの線路上を高速で走らせるだけならどの国の技術でも可能だが、広大な平地が少なく、カーブやトンネルが多いという条件下でもここまで高水準の高速運行を実現できるのは新幹線だけだ。

※週刊ポスト2015年3月27日号