「Pepperアプリコンテスト」で、ロボットと人間の新しい関わり方を考えた。「主体的」にデヴァイス側からユーザーに働きかける人型プラットフォームとしてのPepperと、ロボットアプリ開発という新しい市場の可能性に気付かされた。その道しるべとなったのは、同コンテスト審査員のCYBERDYNE代表、山海嘉之の言葉だ。

「Pepperは「おしゃべりロボット」ではない。プラットフォームなのだ」の写真・リンク付きの記事はこちら

表情と声から人間の感情を推定する「感情認識機能」や、センサーからの情報をもとにした「自律行動」などを兼ね備えたロボット「Pepper」。ハードウェアとしての機能に留まらず「アプリ」をインストールすることができ、さらにそのアプリは、スマートフォンアプリ開発と同じように開発に参加できる。

2月22日に開催された「Pepper App Challenge 2015 あなたのロボアプリで未来を拓け」は、ロボアプリを通じて新しいライフスタイルやコミュニケーションのあり方を考えるために、ソフトバンクロボティクス主催で行われたコンテストだ。審査基準は「未来のカタチを生み出す」ロボットアプリであること。約100作品の応募作品のなかから、決勝大会には予選を突破した10作品のプレゼンが行われた。

エンターテインメント性のあるものからエンタープライズ向けに利用できるもの、デザイン性に優れたアプリや医療や福祉の現場で患者に新しいサーヴィスを提供しようというものなど、さまざまな作品がプレゼンされ、最優秀賞はプロジェクトチーム・ディメンティアによる「ニンニンPepper」が受賞した。

ディメンティアは、Pepperを認知症サポートロボットとして機能させるアプリを開発。毎朝決まった時間に呼びかけをし、薬を飲む時間をリマインドし、家族の写真をモニターに映し出してコミュニケーションをするのだという。将来的には医療現場にPepperが入りこみ、コミュニケーションを通じた患者のケアやメンタルサポートを行っていく将来図を描いてみせた。

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これらの作品は、すぐに使えるものもあればまだまだ開発の余地のあるものも多い。しかし、Pepperというひとつのロボットに対してさまざまなアプリが開発されることで、その利用の可能性を広げたといえる。「Pepperをただのハードウェアとしてみるのではなく、コンピューターとして捉えること。その上でどういった活用方法を見出せるかを考えなければいけません」と語るのは、コンテスト審査員のひとりであるCYBERDYNE代表取締役社長の山海嘉之だ。

山海は、かつてコンピューターが誕生したときやiPhoneが登場したときにたとえ、「それ単体で何ができるのかではなく、そのプラットフォームを通じて何を行い、どのようなサーヴィスを提供し、どのような課題解決を提案し、どのような新しいユーザー体験を提供するかを考えるべき」だと言う。

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山海嘉之|YOSHIYUKI SANKAI
CYBERDYINE代表取締役社長/CEO。筑波大大学院教授、サイバニクス研究センターセンター長。人に寄り添う革新的テクノロジーの研究開発をもとに、社会が直面する課題解決に取り組んでいる。

「いままでは、プログラミング言語を駆使しないとロボットを動かすことはできず、工業などの専門分野でしか使われていませんでした。しかしPepperのようにさまざまなアプリケーションを用途に応じてインストールするといった、拡張性の高いロボットが他分野の市場に投入されることで、ロボットと縁遠い存在だったさまざまな人たちと一緒にロボットの新しい可能性を追求することができるようになる。開発者たちの創造力によって、アプリの可能性は無限大に広がってくるでしょう」

「Pepperは何ができるのか」といった疑問が尽きない。議論を前に進めるのは、Pepperそれ自体をただのロボットとして捉えるのではなく、感情認識機能や自律行動が可能なひとつのプラットフォームだと考えることなのだ。

例えば、スマートフォンやPCはユーザーが働きかけて発動するデヴァイスであることに対し、人型をしたPepperはユーザーに主体的に働きかける、まったく別の可能性をもった存在になりうる。また、プラットフォームに集まるのは、既存のプログラマーやスマホの開発者だけにとどまらず、今回のコンテストで決勝への進出を果たしたマジシャンや演出家といった存在も参加するようになるはずだ。例えば今回の優勝作品においては、医療現場のプロの意見をもとに介護アプリが企画されているし、さらに驚くことに、彼らはほとんどプログラミングをしたことのない素人、なのだ。

そして、Pepperそのものも“完成品”ではない。今後も開発者らと議論し、Pepperというハードウェア自体もアップデートされていく。Pepperも、いまだ成長途中なのだ。

「これまでの歴史を振り返ると、あらゆる分野の黎明期に活躍したのは、ホビイストや真摯にひとつのことに取り組む人たちでした。先陣を切って取り組む人たちのあとにフォロワーが生まれることで好循環が生まれ、そこに市場がでてきてきます」と語る山海は次のように続ける。

「今回のコンテストをきっかけに、少しずつロボットアプリ開発という新しい市場が生まれてくるでしょう。黎明期だからこそ少しでも多くの人たちが参入し、自由な議論やさまざまな実験を繰り返しながら、市場の新しい可能性を追求してほしいと思うんです」

Pepperをすぐに触って開発体験するには、東京・アート千代田3331にある「アトリエ秋葉原」へ。事前予約することで、ワークショップやハッカソンに参加できる。

また、「Pepper Creator登録」をすれば、Pepperの限定イベント等の最新情報を入手することも可能。ソフトバンクロボティクスの代表取締役、冨澤文秀は、本イヴェントの最後のあいさつで2015年、再びPepper App Challengeを開催することを明言している。今後の展開が、さらに楽しみだ。