13分、42分、ロスタイムと前半のみでハットトリックを達成。60分にも1点を加え、フル出場したミャンマー戦は計5本のシュートで4ゴールを奪取と高い決定力を見せつけた。 写真:菅原達郎(サッカーダイジェスト写真部)

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 それは勝っているチームの選手には似つかわしくない行動だった。
 
 野津田岳人のクロスを巧みなヘッドでゴールに流し込んで自身4点目を挙げると、転がるボールをすかさず抱えてセンターサークルへと引き上げていく。
 
 負けているならいざ知らず、この時点で日本のリードは9点にまで広がっている。勝利はほぼ決している。にもかかわらず、中島翔哉は誰よりも早く試合の再開を促した。
 
 まだまだゴールを奪いたかったからか? 
 同じく4得点を挙げている鈴木武蔵をゴール数で上回りたかったから?
 
 試合後のミックスゾーンで問いかけると、シンプルな答が返ってきた。
 
「もっとプレーがしたかったので」
 
 サッカーを楽しみたい――。中島が常に大事にしていることだ。普段のトレーニング以外でも、自宅に戻ってから練習しているというサッカー小僧は、1分1秒でも長くボールを蹴っていたかった。もちろん、「試合でしか学べないことが多いので」と、実戦を通じて自らの成長につなげることも忘れてはいない。
 
 2得点を挙げた先月のシンガポール戦に続き、今回のミャンマー戦でもゴールという結果を出してみせた。それでも、本人にとっては何点決めたかはそこまで重要ではないようだ。
 
「毎試合、(点を)取るのは大事なんですけど、そこばかりに執着して、他が疎かになるほうが良くないと思っている。いろんな部分にこだわりを持って、プレーを成功させつつ、点を取れればいい」
 
 いかに良い状態でパスを受けられるか。ドリブルのコース取りは間違っていなかったか。試合があったその日に映像を見返して、なにが足りなかったか、どこを改善すればいいかをすぐに確認した。ミャンマー戦では攻撃陣をリードするだけでなく、献身的な守備も見せるなど攻守に奮闘していたが、本人からすれば、プレーの選択や判断は「ほとんど間違いだらけだった」。厳しい自己評価からは、飽くなき向上心が見て取れた。
 もっとも、今の手倉森ジャパンにとって、背番号10を背負う中島は代えの利かない存在であるのも事実だろう。ミャンマー戦でも、何度も動き直しながらスペースを見つけては、パスを引き出し、ボールを前に運んでゴールチャンスを演出する。状況に応じてパスとドリブルを効果的に使い分け、非凡なテクニックの持ち主だが必要以上にこねくり回すことなく、シンプルに捌いて味方の攻め上がりを促すプレーも増えてきた。
 
 特筆すべきは、CFの鈴木との好連係だ。ミャンマー戦の自身1点目、チームとしては2点目となるゴールは、“三度目の正直”で決めたものだ。サイドに開いた鈴木のクロスをねじ込んだ形だったが、この得点シーンの前にも二度ほど、鈴木がサイドに流れる→中央の空いたスペースに走り込む→鈴木からのクロスに対しエリア内でスタンバイ、というコンビネーションで惜しい場面を作っていた。
 
「武蔵はスピードがあるので。そこで空いたスペースを意識して埋めようとしていた。そうすれば自分にもチャンスが来る」
 
 鈴木とはチームの立ち上げ当初からずっと一緒にプレーしてきた間柄で、「そういう意味では(連係が)どんどん良くなってきているし、これからも良くなると思う」と確かな手応えを感じている。
 
 一方、クラブレベルでは、今季開幕戦はメンバー入りさえできず、苦しい現状ではあるが、本人に焦りは一切見られない。FC東京の一員としてピッチに立ち、勝利に貢献したい想いは当然あるが、それよりもプレーヤーとして上手くなりたい気持ちのほうが強いという。それはチームのことを考えていないわけではない。自分の成長が、結局はチームのためになることを知っているからだろう。
 
「サッカーを楽しむ」というスタンスはブレずに、決して慌てることなく、泰然と構えて、今日より明日と、さらなる進化のために次なる一歩を着実に踏み出そうとしている。
 
 3月27日にマカオとの初戦を迎えるリオデジャネイロ五輪アジア1次予選での活躍にも期待したい。