シンガポール戦に続き大量得点で勝利した日本。中島(写真)、鈴木が4点ずつを奪う爆発力を見せたが、他のアタッカー陣がゴールにあまり絡めなかったのは課題だろう。(C) SOCCER DIGEST

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 3月23日に開幕するリオデジャネイロ五輪のアジア1次予選(U-23アジア選手権予選)に向けた壮行試合で、U-22日本代表はミャンマーを相手に9-0の完勝を収めた。圧倒的な力の差を見せつけたゲームで、チームはいかなる収穫と課題を得ることができたのか――。予選突破に向けてキーとなる3つのポイントを考察した。
 
【U-22日本代表|PHOTOギャラリー】 日本 9-0 ミャンマー

 
1.引いた相手を崩し切る多彩なアプローチ
 
 1次予選の相手はマカオ、ベトナム、マレーシア。いずれも実力的に日本が劣るとは考えにくく、主導権を握る展開が予想される相手だ。手倉森誠監督も「引いた相手を破って点が取れるサッカーを披露したい」と、相手が守備的に戦ってくることを前提に考えて今回のメンバーを選んでいる。
 
 その意味では、ミャンマー戦は一定の手応えを得ることができたと言えよう。8分の先制点は相手GKのキャッチングミスから生まれたが(こぼれ球に素早く反応して押し込んだ鈴木武蔵のゴールへの高い意識は評価できる)、その他は実にバラエティに富んだパターンで得点を積み重ねていった。
 
 13分の追加点は山中亮輔→荒野拓馬→鈴木とテンポ良くつないで最後は中島翔哉がねじ込んだもの。41分のニアゾーンに侵入した鈴木のハットトリックとなるゴールも、そこに至るまでの崩しはダイレクトプレーを織り交ぜた連動性のあるものだった。
 
 サイド攻撃も冴えを見せる。25分には左SBの山中、51分には右SBの松原健がそれぞれ正確なクロスを供給し、どちらも鈴木が得点に結び付けている。60分には途中出場の野津田岳人の鋭いクロスを、中島が頭で合わせて自身4点目をゲットした。
 
 さらにセットプレーでは、21分のCKを岩波拓也が打点の高いヘッドで叩き込むと、前半終了間際には素早いリスタートから中島が巧みなループを決めてみせる。
 
 その他、42分の中島のゴールは遠藤航の狙いすましたスルーパスで中央をこじ開けた形であり、たしかに相手の稚拙な守備があったとはいえ、実に多様なアプローチでミャンマーゴールに襲いかかり、確実に仕留めてみせた。
 
「前半はミスが多かったけど、奪った後の(ボールを)前に付けるところとか、チームとして早い攻撃もできたし、ボールを動かして(相手を)崩しながら点も取れた。攻撃のオプションは出せたと思う」(遠藤)
 
 もっとも、9得点の内訳を見れば、鈴木と中島が4点ずつ、岩波が1点と「柔軟性をテーマにした時に、他の選手たちもゴールに絡まなければならない」(手倉森監督)のは課題として残った。それでも、本番に向けた“リハーサル”としては上々のパフォーマンスだったし、選手たちも自信を深めたに違いない。
2.「人に強く」の徹底とその“副作用”
 
 攻撃面での成果を口にした遠藤は、中島のゴールをお膳立てしただけでなく、鋭い出足や精力的なプレスバックでボール奪取に成功するなど、攻守両面でフル回転の働きを見せていた。
 
 キャプテンマークを託された手倉森ジャパンの“攻守の要”に、2月に行なわれた敵地でのシンガポール戦からの改善点を問うと、こう返ってきた。
「監督から課題として言われたのが、プレスをかける時、ハマっている状況であれば100パーセントでプレスに行くということ。(ミャンマー戦では)後ろから声を出しながらFWを動かし、プレッシングはメリハリをつけられたと思う」
 
 FWのプレスバックに関しても、「ボランチのケアをけっこうやってくれていた」とチームメイトの奮闘を称えていた。
 
 遠藤自身、「僕のところでもできるだけ多くボールを奪えるように意識していた」と、人に強く行くことを心がけていたようで、格下相手にも油断することなく、高い確率でボールを奪えていた。
 
 チーム全体で相手のボールホルダーに素早く対応し、ピンチを未然に防ぐ。そうした守備戦術は十分に浸透していたのは見てとれた。ただ、複数人がボールに食らいつきすぎたあまり不用意にスペースを与えてしまい、そこから攻め込まれるシーンがあったのも事実だ。
 
 その点について遠藤は「わりと前掛かりになりすぎた部分はあった」と反省しつつも、「(積極的にボールを奪いに)行ったからこそ、そういう課題が出ると思うので、そこは次につなげていきたい」と、ポジティブな見方をしていた。
 
 高い位置で奪えれば、ショートカウンターにつなげることもできる。アグレッシブな守備による“副作用”を最小限に留めるようなバランスをさらに追求し、攻撃へのスムーズな切り替えが可能になれば、より盤石な試合運びを実現できるはずだ。
3.タイトな日程を乗り切るための総合力

 1次予選の3試合は中1日で行なわれるタイトなスケジュールとなっている。それだけに、レギュラークラスのコンディション調整が重要になってくるのはもちろん、誰が出ても戦力を落とさずに戦うことができなければならない。
 
 手倉森監督は、ミャンマー戦で7点を奪取した前半を終えると、メンバーを5人代えて後半に臨んだが、前半の半分にも満たない2点しか取れなかった。しかもスコアラーは前半からゴールを量産していた鈴木と中島で、途中出場から得点に絡めたのは、中島のゴールをアシストした野津田岳人のみだった。
 
 この結果に指揮官も
「後半はスピードを上げた時に少しクオリティを欠いた部分があった。後半のメンバーは、ゲームの感覚をもう少し高めてあげなければいけない」
と苦言を呈した。
 
「後半も流れを止めずに、どんどん点を取りに行こうと思ったけど……、ちょっと上手くいかなかった」
 荒野との交代で後半からピッチに立った矢島慎也が悔しさを滲ませる。
 
 矢島以外でも、ボランチでプレーした安在和樹や左SBに入った亀川諒史らも懸命に戦う姿勢を見せてはいたものの、前半のように流動的な崩しは少なく、パスミスなど息の合わない場面が目についた。1アシストを記録した野津田にしても、ボールを持ちすぎる傾向があり、周囲との連係不足は明らかだった。
 
 また、この試合のスターティングメンバーには大島僚太の名前が記されていた。しかし試合直前に左ふくらはぎの違和感を訴え、急遽控えメンバーに名を連ねていた原川力がボランチで先発出場している。
 
 重箱の隅を突くようだが、あれだけチームが機能した前半のなかで、その原川自身が「無難なプレーばかりだった。もう少し攻撃面に絡んだりして怖さを示さないと。課題が多かった」と反省するように、低調な出来に終わったのも気がかりなところだ。
 
 1次予選のマカオとの初戦は3月27日だが、チームは16日に現地入りして事前合宿を行なう予定だ。固まりつつあるレギュラーメンバーのコンビネーションに大きな問題は見られないだけに、その他の選手たちが事前合宿でどれだけパフォーマンスを上げられるか。それが予選突破の可能性を高めることになるはずだ。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)