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ノーベル財団と日本学術振興会の共催により「ノーベル・プライズ・ダイアログ・東京2015」が開かれ、物理学賞を昨年受賞した名古屋大学の天野浩教授、iPS細胞を開発した京都大学の山中伸弥教授、2002年にノーベル化学賞を受賞した島津製作所・シニアフェローの田中耕一氏ら、国内外から自然科学系のノーベル賞受賞者7人が参加し「生命科学が拓く未来」をテーマにした講演やパネルディスカッションが行われました。スウェーデン以外での開催は東京が初めてとなります。

○天野氏「医学と工学の連携が進み、治療につながることを期待」

講演のなかで山中教授は、

「昨年、iPS細胞から作った網膜の細胞を目の難病患者に移植するという世界初の手術が臨床研究として行われた。生命科学研究の進展のなかで確実に予測できるのは、我々の寿命が延びるということ。そして、私の役割の重要性は、研究論文を発表するということよりも、研究の成果を医療に応用してもらい、多くの患者に届けるという点にある」

と述べました。

また天野教授は、LED(発光ダイオード)を動物の行動制御や皮膚疾患の治療に応用する研究が始まっていることを紹介しつつ、

「医学と工学の連携が進み、治療につながることを期待する。協働するためのあらゆる情報やツールの提供は惜しまない」

と語りました。

○山中氏「科学の進展と社会・経済を切り離して考えていくことはできない」

さらに、シンポジウムを総括する『未来への展望図』と題したパネルディスカッションで山中教授は、

「医学、研究の進展のなかで、世界はますます長寿社会になっていき、人口構成は逆ピラミッド、逆三角形になっていく。以前、私の教官が私に『我々の研究は我々を幸せにするのか?』と聞いてきたことがあったが、私は当時、その質問に対して『それは政治家が解決すべき問題です』と答えた」

「今、この問題について改めて考えたい。20年後、30年後には日本だけでなく他国も高齢化社会となり、1人の現役世代が3人〜4人の高齢者を支える時代がくる。そのような逆三角形の社会においては、社会全体としては幸福になれないのかもしれない。未来を展望する上で、科学の進展と社会・経済との関わりとを切り離して考えていくことはできないだろう」

と自身の見解を述べました。

また田中氏が、

「新たな発見というのは誤解から生まれるものだ」

と述べると、田中氏と共に2002年にノーベル化学賞を受賞したスイス連邦工学大学のクルト・ヴュートリッヒ教授も、

「ブレイクスルーは計画してできるものではない。突破した先に何があるのかをわかっているのは、ブレイクスルーではないのだ。科学、生物の分野における発見は、組織やグループよりも個人に由来するケースが多い。研究に資金を拠出する機関も結果に期待するのではなく、根気強く研究につきあってほしい」

「また、逆三角形の長寿社会については、QOL(quality of life)・生活の質の改善を常に意識していくべきだろう。高齢化により人々の体の機能が衰えてしまうのであれば、その部分をロボットのサポートで補えば良いのかもしれない。医療の改善、各組織の改善、社会の改善など、生物学的進化を踏襲していく必要があるだろう。未来に向けて解決すべき課題は数多くある。ぜひ、若い世代の人たちにもこれらの課題を共有してもらいつつ解決に向けた取り組みをしてもらいたい」

と結びました。

○執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。

(鈴木ともみ)