「Thinkstock」より

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 最近、新聞やニュースサイトなどに目を通すと、「ベア(ベースアップ)」「昇給」など、景気のいい話を見かけるようになりました。そんな折に水を差すようですが、ひとつ重要なことをお伝えします。それは、「勢いで生活水準を上げると、後で大変になる」ということです。

 給料が上がると、気が大きくなることもあり、どうしてもそれまでより消費を増やして生活水準を上げてしまいがちです。しかし、それをやってしまうと、お金は手元に残りません。無理に節約する必要はありませんが、「(お金が)入ったら使う」を繰り返していると、出費がかさむばかりです。年金など老後の生活保障も心もとない近年、自己防衛のためにも、将来の自分のためにも、節約を心がける必要があります。

 世界的に有名な投資家のウォーレン・バフェットでさえ、55年以上前に買った家に今も住んでいるといいます。

 では、人はなぜお金を無駄に使い、いたずらに消費を増やしてしまうのでしょうか。その大きな原因は、自分の消費状況を把握できていないからです。自分の消費行動に、きちんと向き合わないことに問題があります。さらにいえば、そもそも消費状況を把握するためのデータが揃っていないことが原因です。

 自分の消費行動を直視するためには、現状の支出を把握する必要があります。そういわれると、「そうだ、家計簿をつけよう」となるかもしれません。文房具店に行くと、確かに家計簿帳は売られています。私自身も、過去に何度か「俺家計簿」をつけようと試みました。投資に大きな才能を発揮できないので、支出をきちんと管理しないといけないという意識で、そのための基礎データを収集しようとしたのです。

 しかし、これが続きませんでした。「俺家計簿」は見事に三日坊主の状態で、書かれているのは最初の数行だけです。よく考えてみると、私は日記を続けられたためしがありません。最初の数ページだけ書き、あとは真っ白のノートを積み重ねてきました。とにかく、習慣化する前に挫折してしまうのです。確かに、「俺家計簿」への記録は大きな強制力があるわけではありませんし、そもそも「とりあえず記録しよう」という感じで、継続のモチベーションも強いとはいえないスタートでした。

 そうなると、まずは家計簿に記録することを習慣化するところから始めなければなりません。そこで私は、簡単に家計簿に記録できるような状況をつくるべきだと考えました。

●記録に最適なツールはスマホ

 レシートをため込んでしまうと、どんどん後回しになってしまうので、買い物の直後に記録できれば一番楽です。その結果、私は普段から持ち歩いているスマートフォン(スマホ)で記録するという方法に落ち着きました。いつもスマホを手放さない現代人にとって、これは非常に合理的で効率的な方法といえるでしょう。買い物をしたらすぐにスマホに記録する、あるいはレシートを写真に撮っておくという方法もいいと思います。

 最初の2〜3週間、意識して記録を残していれば、あとはそれが習慣になります。次第に、「財布からお金が出ていったら記録」というのが当たり前になってきて、今では記録しないと「気持ち悪い」とさえ感じるようになっています。

 今は家計簿のアプリやサービスがさまざまあるので、自分に合ったものを選んで使ってみるといいでしょう。中には、インターネットバンキングやクレジットカードと連携して、アプリやサービス上で一括管理できるものもあります。

 もちろん、個別にインターネット上で明細などを閲覧することはできますが、こまめにチェックしている人は少ないと思います。クレジットカードの場合、口座引き落としの前にお知らせのメールが来たから確認する、ぐらいの頻度の人が多いのではないでしょうか。

 その点、家計簿のアプリやサービスでは、設定さえすればインターネットバンキングやクレジットカードの情報を参照できます。それぞれのサイトにログインすることなく、支出や収入を確認することができるのです。

 1カ月、2カ月とデータが蓄積されてくると、自分自身の消費傾向が見えてきます。毎月、食事や雑誌にどれくらい使っているか、毎日買っているコーヒーが累積でいくらになっているのか、数字で見えてきます。

 自分の消費行動がどんな傾向にあるのか、または自分のお金にどういう流れがあるのか、ということを把握しておけば、今後のライフプランを設計するのに役立ちます。また、前述のようにインターネットバンキングやクレジットカードを連動させておけば、家賃や保険、その他のローンなどの固定費も、日々の支出と同時に管理することが可能です。

●消費行動の数値化がライフプランに役立つ

 多くの人にとって、収入が劇的に変化するということはありません。増えるにしても、少しずつ増えていくものです。

 記録する作業を数カ月続けてみて、どう見ても入ってくる額に比べて出ていく額が多ければ、根本的な解決策を考える必要があるでしょう。とはいえ、多くの場合は「少し使いすぎかな」ぐらいの状況が見えてくると思います。そして、そんな「軽症」の場合にこそ、日々の消費行動を数値化することで、具体的な改善策を作ることが大切なのです。

 もちろん、ライフプランは人それぞれなので、一概にいうことはできません。しかし、今後の社会保障や年金の状況を考えると、現在の収入でどうやって自分の将来を作っていくべきかということを、記録したデータから考えておいたほうがいいでしょう。陳腐な言い方ですが、お金がすべてではないにせよ、ある程度精神的な余裕を確保できるだけの資金を持っていることは大事です。例えば、「6カ月間収入がなくても暮らしていけるように、お金を貯める」という目標を立ててもいいかもしれません。それを達成して初めて、投資に回す資金が発生すると考えましょう。

 健康に働いているうちに記録をとっておけば、一定期間無収入でも暮らせるにはいくら必要なのか、というのがわかるようになります。そして、その金額は実際の行動を反映したリアリティのあるものだからこそ価値があります。日々の記録やデータがあれば、現状の収入でどうやって自分の未来や万が一のための資金を確保していくのかという具体策を考えられるようになります。

 できる限り簡単に自分のお金を管理するには「zaim」や「マネーフォワード」などの無料サービスが便利です。機能をフルで使うためには月額数百円の課金をする必要はありますが、それも正確な管理によって無駄を排除するためのコストと考えれば安い投資といえるでしょう。

 もちろん、ほかにも家計簿のアプリやサービスは多数ありますが、個人的には以下の要素が揃っていれば便利だと思います。まず、スマホとパソコンでシームレスに使えること。次に、インターネットバンキングやクレジットカードと連携したり、レシートを写真撮影すれば自動的に反映してくれること、です。

 ぜひ、「ベア」や「昇給」といった言葉に心躍らせるだけではなく、自分のお金をしっかり管理する習慣をつけてみてください。ただ、偉そうなことを言ってはいますが、私自身もやっと記録が習慣化したところで、まだまだ道半ばの状況です。
(文=藤原実/藤原実税理士事務所所長、内閣府所管公益財団法人生涯学習協議会認定ビジネスモデル・デザイナー<R>)