来年の世界ジュニア選手権でも、日本はロシアと並び、男女ともに出場枠3を確保することになった。男子で優勝した宇野昌磨(17)、女子で3位に入賞した樋口新葉(わかば、14)はもちろんだが、他にも上位争いを演じる選手がいる層の厚さがもたらしたものだ。

 3月7日に行なわれた世界ジュニア選手権(エストニア)、男子フリー。結果に一番驚いていたのは山本草太(15)だった。

 前日のショートプログラム(SP)は、指導する長久保裕コーチが「全部硬かった。ジャンプを降りるたびガチガチだった」と苦笑するような出来だった。本人も「緊張してしまったせいで演技自体が硬かったのでジャンプやスピンにも影響したし、スピードも落ちてしまった」と反省した。大きなミスは冒頭のトリプルアクセルが回転不足になって手をついてしまうものだけに抑え、スピンとステップではレベル4を獲得したが、GOEの加点は少なく、66.99点で7位。最終グループ入りを逃していた。

 だが、「ホテルに帰ってからSPの映像を何回か観て、自分が思っていた以上に硬くなっていたのがわかったので、フリーでは緊張しても最後まで思い切り滑ろうと決めていた」と言う翌日のフリーでは、持ち前の伸びやかな滑りを取り戻し、納得の演技をした。

 最大の目標にしていた2回のトリプルアクセルは、ともに減点無しでクリア。2度のルッツはエッジがクリアでないとされてわずかに減点になったが、スピンとステップはすべてレベル4でほぼ完璧な内容だった。演技構成点では、スケーティングスキルが7.36点とまずまずだったのに対してトランジションは5.75点といまひとつだった。これについては「シーズン後半になってからトリプルアクセルを2回にしたので、つなぎの滑りとかをやっている場合ではないから抜いているので」と笑った。

 結局フリーでは145.46点を獲得。合計を215.45点とし、第3グループ終了時点でトップに立った。

「できるだけ表彰台に近づければいいと思っていたけど、ロシアのピトキーエフ(前回世界ジュニア2位)とペトロフ(ジュニアGPファイナル3位)は崩れないだろうと思っていたので、良くて4位か5位くらいかと......」と語る山本は、観客席に上がってチームメイトとともに最終組の演技を見守った。

 最初のジン・ボーヤン(中国)がいきなり2種類3回の4回転ジャンプを決めてSP5位からトップに躍り出たが、4番滑走のピトキーエフは前半のジャンプでミスを連発して得点を伸ばせず、この時点で4位と脱落した。その後、宇野昌磨がトップに立ったのは予想通りだったが、最終滑走者のペトロフが2回転倒してフリー10位と大失速。山本の3位が決定した。

「試合が始まる前はちょっとだけ狙っていたけど、こういう結果になるとは思っていなかった。最終グループの演技を緊張しながら見ていたので、3位になった時は嬉しかったけど、表彰式に降りなくてはいけなくなってバタバタしたので、感動している暇はありませんでした」

 そしてその視線をすぐに来シーズンへと向けた。

「次の目標は全日本ジュニアで優勝することと、世界ジュニアで金メダルを獲ること。そのためにはトリプルアクセルを完璧にするとともに、4回転トーループをプログラム構成の中に入れなくてはいけないと思います。まだ4回転はそんなに練習はできていないけど、やった時には成功もしているので......。トリプルアクセルのように練習を積んでいけば、確率も上がってくると思います」

 決意を込めて語った山本は、8日のエキシビションの冒頭で4回転トーループに挑戦。もう次へ向けて歩み出している。

 一方、女子も樋口新葉だけでなく、坂本花織(14)と永井優香(16)がフリーで最終グループ入り。来年の大会の出場枠3獲得に貢献した。

 SPのミスは3回転ルッツのエッジエラーだけという勢いのある演技を見せて4位発進した坂本。フリーでは3つ目のジャンプ、3回転ループで転倒してしまったが、「いつもならループの失敗を引きずってしまっていたところだけど、しっかり切り換えることができたので、最後まで力強いスピードのある演技ができたと思う。他にスピンの取りこぼしもあったので悔しいが、演技や表現は自分なりにけっこう頑張れたと思う」と、振り返った。

合計は166.25点で6位。

「25%は緊張だったけど、残りの75%はワクワクして演技ができました」と言うこの大会について、「まだ自分は世界と戦えるレベルには達していないけど、周りの人たちがどのくらいかがわかって、すごくいい大会になった。流れるように表現をし、そのままジャンプをするのがすごいなと思ったけど、これからはそういういろんな人たちの演技をちょっとずつ研究してやっていけたらと思うし、来年もまたこの大会へ来たいという気持が強くなりました」と語った。

 また、大会前から足に痛みが出て不安のあった永井優香は、SPでは直前の6分間練習でまったくジャンプが跳べなかったにもかかわらず、本番では冒頭の3回転トーループの連続ジャンプが3回転+2回転になるだけのミスに抑えて6位発進。

 フリーは冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループが1回転+2回転になってしまうミスからのスタートになったが、「1回転になってしまった時はすごいビックリして『またやってしまった!』という気持ちで一杯だったけど、次の3回転ルッツを跳ぶ前は『降りたら絶対に3回転トーループを付けるぞ』と思って。踏み込む瞬間まですごく緊張したけど、そこで跳べたのであとは流れに乗れたと思います」と、立て直した。その後はミスを最小限に抑えて、合計では7位となった。

「ここまではあまり気持ちの乗った練習ができていなかったけど、それほど調子が良くない中でやった四大陸選手権もまあまあだったので、今回も大丈夫と信じてやりました。SPの6分間練習の時には全然ジャンプが跳べなくて『アレッ、やっぱりまだ自信をつけられていなかったのかな』と心配になったけど、そこそこやれて......。フリーでも1本目で失敗したけど、その後をうまくまとめられたのは、今シーズンになってできるようになったことだから大きかったと思うし、自信にもなりました」

 来季へ向けては「来年は下からたくさんの選手が上がってくるので怖いけど、その中でも自分の存在感をアピールできるように頑張りたい」と決意を語った。

 坂本、永井ともに悔しさの残る結果ではあったが、「収穫もあった」と胸を張れる大会に
なった。

折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi