『食べる? 食品セシウム測定データ745』(ちだい/新評論)

写真拡大

 あれから4年。原発再稼働に前のめりな安倍政権によって、福島原発事故はすっかり隠蔽されてしまった。多くの国民の関心事だった食品の放射能汚染も、今やすっかり忘れ去られてしまったかのようだ。

 だが、食品汚染は事故直後とは違った形で、まるで底なし沼に引きずり込まれるかのように深く、静かに進行している。

 たとえば、「東京新聞」は今年2月20日付の紙面で千葉、茨城の水郷地帯の湖沼のおそるべき汚染の実態を報じている。記事によれば千葉県の手賀沼、印旛沼、茨城県の霞ヶ浦、牛久沼の32カ所で底土を採集しセシウムの濃度を計測。その結果、手賀沼では1キロあたり1000ベクレル超もの結果が出た箇所もあったという。空間線量は低くても、汚染された雨水などが川に流れ、沼に溜まり続けるのだ。そして汚染された湖沼などで捕れた淡水魚からは、現在でも100ベクレルを超えるセシウムが検出されているという。

 また「AERA」(朝日新聞出版)3月9日号にも、食品汚染に関するショッキングな記事が掲載されている。

「放射性物質の半減期を踏まえると、この4年間で、空間線量は56%減少した。しかし、いまだに食べ物からは、東日本の広い範囲で基準値を超える値が検出されている」

 特に顕著なのが、鹿、猪などのジビエ、原木シイタケなどの野生キノコ、イワナ、ワカサギなどの淡水魚だ。北関東ではもちろん、原発から300キロ以上離れた静岡県富士市でも360ベクレルものハナイグチ(きのこ)が確認されているという。

 だがこうした検査で流通前に汚染が分かるのはマシな方かもしれない。「AERA」では自治体の検査体制に問題があると指摘する研究者のこんなコメントが掲載されている。

「北関東の『道の駅』や自家野菜直売所などで販売されているキノコ類の放射性セシウムの濃度を検査すると、基準値を超えることは珍しくないという」

 こうした事態が起きるのは、自治体の測定回数が少なく、危機意識が低いからだ。水産物も同様で、同誌は「水産物の汚染で本当に怖いのは、底土などの汚染が時間の経過によって魚や貝の体内に蓄積することだ」と警鐘を鳴らす。

 これら体内に取り込まれた放射性物質は、生物濃縮により海水の濃度と比べてより高濃度となる。それは時に海水の68倍(ヒラメ)、122倍(カツオ、ブリ)にまでなるという。

 時間が経つにつれ、汚染されるルートやその種類に変化が現れているのだ。

 では、スーパーなどで流通している野菜など、私たちが日常口にする食品はどうなのか。自治体や企業で調査は行われているが、多くはサンプル検査で月に1回程度。絶対に安全というレベルではなく不安を覚える人もいるだろう。また事故後の様々な調査によって、セシウムが取り込まれやすい食物とそうではない食物があることも徐々に判明しつつある。こうした傾向を知ることもひとつの自衛手段になる。

 その参考になるのが2013年に刊行された『食べる? 食品セシウム測定データ745』(ちだい/新評論)だ。本書では745もの食品についての調査や、注意点などが書き示されており、それを見ると気をつけるべき食品と、比較的安心な食品が存在することが分かる。

 まずは野菜。警戒度MAXなのがレンコンとたけのこ、ヤーコンなどだ。レンコンは沼沢地で栽培され、事故後にはスーパーに流通しているものでも高濃度が検出されたこともある。また、たけのこはセシウムの移行率が高いので要注意だ。ヤーコンはお茶として飲むことが多いが、この粉末から2万ベクレルものセシウムが検出され、他にも多数の検出報告がある。またニラや小松菜、ほうれん草も要注意。特に、小松菜は事故から2年経っても基準値を超えるものが見つかっていて、非常に汚染されやすい野菜の1つだという。意外な盲点として気をつけなくてはならないのは自家製ハーブだ。もし汚染されている土を使っていれば高濃度に汚染されている可能性もある。同様に山中の野草や山菜も危険度はかなり高い。

 逆に安心なのはゴボウ、長ネギ、タマネギ、もやし、セロリ、アスパラなど。そもそももやしは室内で土を使わす栽培されるし、ネギなどはセシウムが吸収されにくい性質を持っている。

 魚介では、前述したヒラメ、カツオ、ブリなどに加え、マダラとフグが警戒度MAXだ。海鮮ものに絶対安全というものは見受けられない。また缶詰や瓶詰も注意が必要だという。

「検査数がまったく不足しているのが、瓶詰で販売されることの多い鮭フレークです、サケは汚染されている可能性があるため、原料が国産であれば、リスクはあり得ます」

 そして肉類。やはり危険なのは猪肉、鹿肉、そして鴨肉だという。特に猪は野生が多く、高濃度に汚染されたキノコや木の実をエサにしているため、本書でも最大級の警戒が呼びかけられている。

「下手をするといまだに8000Bqを軽く超え、肉自体が捨てられないレベルの放射性廃棄物と化している可能性もあります。陸の食べ物では、猪肉が最も危険と言えるかもしれません」

 また牛は全頭検査をしているというが、しかし14年1月には岩手県で約190頭の牛が放射性物質の検査をせず、県外に出荷されるという事態も起こっている。

 セシウム食品の傾向と対策。だが検査には抜け道があり、時間の経過とともに要注意食品も変遷する。本書でも「何からセシウムが出やすく、何から出にくいかという傾向は、時間の経過とともに少しずつ変化していくのかもしれません」と記されているように"絶対がない""未だよく分からない"のが食品の汚染だ。 

 だからこそ、個人個人がその状況に応じて意識を持ち続け、問題に取り組み続ける。それしか自衛手段がないのが、残念ながら日本の現状だ。

 しかも、この汚染は今だけの問題ではない。セシウム137が1000分の1になるのはなんと約300年後。私たちは放射能という巨大な負の遺産を子孫に残すことになる――その事実から目をそむけてはならない。
(久里陽子)