東京パラリンピック開催(開会式2020年8月25日)まで、ちょうど2000日となった2015年3月5日、『みんなのスタート!2000 Days to Go!!』と題したカウントダウンイベントが東京インターナショナルスクールで行なわれた。パラスポーツは、健常者スポーツと同様に楽しめる「スポーツ」であるという認識をさらに広め、言語・世代・性別・国籍等の壁を越えて、競技の奥深さや面白さを皆で共有しようという目的から、今回のイベント開催となった。

 会場には、2020年パラリンピックの正式競技(※)となることが決定したブラインドサッカーの日本代表、カトケンこと加藤健人選手、サッカー元日本代表でブラインドサッカー日本代表の立ち上げから、この競技に長年関わってきた北澤豪氏、同じくサッカー元日本代表で、この競技の普及のため、積極的に協力をしている三浦淳宏氏が集結。デモンストレーションを披露し、その後、インターナショナルスクールの児童たちとともに体験会を行ない、観ているだけではなかなか感じ取りにくい競技特有の難しさや面白さを、実際に共有する貴重な機会になった。
※東京2020パラリンピック競技大会では、ブラインドサッカー(5人制サッカー)を含む陸上競技、アーチェリー、ボッチャ、カヌー、自転車競技、馬術、5人制サッカー、ゴールボール、柔道、パワーリフティング、ローイング、射撃、シッティングバレーボール、水泳、卓球、トライアスロン、車椅子バスケットボール、車いすフェンシング、ウィルチェアーラグビー、車いすテニス、バドミントン(新競技)、テコンドー(新競技)の22競技が実施される

 ふだんからサッカーに親しんでいる児童たちは、今回初めて経験するブラインドサッカーに興味津々といった様子で、カトケンや北澤氏、三浦氏のデモンストレーションを食い入るように見つめていた。アイマスクをしたカトケンが見事なトラップからゴールポスト左上隅をつく鋭いシュートを決めた際には、感嘆のどよめきも漏れた。

 また、競技関係者からブラインドサッカー特有のルールやプレイスタイルの説明を受ける際にも、子供たちは熱心に耳を傾け、実際に自分たちがアイマスクをつけて行う体験会が始まると、みなが時間の経過を忘れて、夢中でボールの行方を追った。

 5人制で行うブラインドサッカーはフットサルに似た競技だが、大きく異なる点は、アイマスクを着用したフィールドプレイヤー4人が鈴の入ったボールを使って競技を行なう、というところだ。ゴールキーパーは健常者が担当する。また、ゴール裏にはコーラ―(Caller)という、選手に指示を出す健常者のガイド役がおり、選手たちはその声とボールの音で状況を判断しながらプレイし、競技が進行してゆく。

 つまり、このブラインドサッカーは視覚障がい者と健常者が一緒にプレイできる競技なのだが、今回の体験会ではこの共同作業を通じて、子供たちは健常者と障がい者がともに協力しあうことの大切さも学ぶことができたようだ。

「アイマスクをして視野がないときでも自分にもプレイできることがわかったし、実際にやってみて楽しかった。加藤さんのプレイはとてもカッコ良かった」(5年生・アビーさん)

「目の不自由な方々が、こんなにすごいプレイをできるなんて、本当にショッキングだった。ぼくも練習を積み重ねて、いつかカトケンさんのようにプレイできるようになりたい」(6年生・ヨニー君)

 等々、インターナショナルスクールの児童たちは、イベント終了後に目を輝かせながら今回の体験の面白さを語った。

 デモンストレーションと講師役を務めた元サッカー日本代表の両氏も「今日は、子供たちがとても楽しんで体験してくれた。自分自身で経験すると、今後そのスポーツに対する向き合い方も変わってくる。他の競技でも、今回のように実際に経験できる場がたくさんあればいいなと思います」(三浦氏)

「いろんな入口をつうじて、競技を知ってもらうことがなによりも大切。昨年、日本で開催されたブラインドサッカー世界選手権では、多くの人々が高いレベルの競技を見て『何試合でも観たい』という気持ちになってくれた。また、今日のように実際に経験してみることにより、競技の難しさと面白さも理解できる。2020年のパラリンピック開催に向けて、このような入口をどれだけ作っていけるかが重要でしょうね」(北澤氏)と、今回のイベントが果たした意義と、2020年に向けた展望を述べた。

 また、カトケンこと加藤健人選手は「ブラインドサッカーは、視覚に障がいを持った者と、コーラ―やキーパーなど健常者が一緒になってやるスポーツ。障がいの有無に関係なく、一緒にスポーツを楽しむ機会が今後も増えればうれしい」と話し、自身がその一員でもあるブラインドサッカー日本代表の今後の戦いに関しては、次のように抱負を語った。

「結果は問われると思う。(競技の面白さ知ってもらうためには)体験をしてもらうことがなにより重要。今回のようなイベントを通じて知ってもらいたいし、僕も他の選手たちとさらに練習をして、結果を出していきたいと思います」

 東京パラリンピックまで、すでに2000日を切った。これから1900と数十日のカウントダウンは、ぼんやり過ごしているとあっという間に過ぎてしまうが、ブラインドサッカーをはじめとするパラリンピック各競技に対する興味と知識を持つには充分な時間だ。まさに〈百聞は一見に如かず〉。今後も一般市民が競技を見たり、体験できる機会が増えることを期待したい。

西村 章●取材・文 text by Nishimura Akira