■福田正博フォーメーション進化論

今季から2ステージ制に舵を切ったJ1。3月7日に開幕する今シーズンの展望を福田正博氏が語った。

 ファーストステージ、セカンドステージのどちらかを制する力があるクラブとなると、やはりまずは昨年3冠を達成したガンバ大阪の名前をあげたい。そして浦和レッズ、鹿島アントラーズ、川崎フロンターレが優勝争いをリードしていくのではないか。FC東京、名古屋グランパスもこの上位争いに加わってくるだろう。

 ガンバ大阪は、FW宇佐美貴史がチームを引っ張っていくぐらいの気持ちで輝きを放ってほしい。宇佐美のほかに、MF阿部浩之ら20代の若手が多く、伸びしろはまだまだある。ベテランのMF遠藤保仁、今野泰幸らの存在も大きい。

 浦和は前回も話したとおり、ペトロビッチ体制4年目となり、なんとしてもタイトルがほしいシーズン。安定した強さを見せつけてほしい。鹿島は日本代表のMF柴崎岳、DF昌子源ら、若い世代がどこまで成長していくかに注目したい。

 就任4年目になる川崎の風間八宏監督にとって、今年はタイトルを獲得したいシーズンのはずだ。MF中村憲剛、FW大久保嘉人らベテラン勢も、今年こそと意気込んでいる。ACLがないためスケジュール的にもそれほどタイトではないので、コンディション調整でACL出場クラブより優位といえる。

 FC東京は各ポジションにメンバーがそろっている。何よりも、FW前田遼一が加入したことで攻撃の軸ができた。前田はコンスタントに仕事ができる選手で、好不調の波が少なく、安定したオールラウンドプレーヤー。昨年ブレイクしたFW武藤嘉紀は前田が入ったことでさらにゴールを決められるのではないか。

 守備陣には日本代表DF森重真人という核がいて、同じく日本代表の太田宏介も左SBにいる。去年の順位(9位)ではいけない戦力だ。フィッカデンティ体制2年目で、監督が日本人選手の特徴を把握してきているはずなので、その采配にも注目したい。

 西野朗監督が2年目になる名古屋も面白い存在だ。もともと戦力はそろっている。そこに長身191cmのFWノヴァコヴィッチが加入して軸がしっかりした。Jリーグのチームが弱点にしている「高さ」で勝負ができるようになったことは有利に働くはずだ。

 Jリーグ全体が盛り上がるためには、これら上位候補にそれ以外のチームがどれだけ食い込んでくるかがポイントになる。私が特に注目しているのは、昨年圧倒的な強さでJ2を制し、昇格してきた湘南ベルマーレだ。チョウ・キジェ監督の運動量豊富なサッカーがどこまで上位陣をかき回してくれるか楽しみだ。

 そのほか、Jリーグでの戦いを熟知している歴戦の猛者、ネルシーニョ監督が就任したヴィッセル神戸も注目のチーム。神戸はタイトルを目指して昨年補強をしたが、思うような結果を残せず11位。今年、柏で結果を出してきた「勝てる指揮官」であるネルシーニョ監督を招聘した。選手もさらに補強しており、ネルシーニョ監督がどんな手綱さばきを見せてくれるのか楽しみだ。

 やや心配なのがサンフレッチェ広島だ。高萩洋次郎(ウエスタン・シドニーへ移籍)、そして石原直樹(浦和へ移籍)が抜けたのは大きい。森保一監督が、どのような選手を起用してくるのか、戦い方に注目したい。

 横浜F・マリノスは、エリク・モンバエルツ監督が就任。フランス人監督が1年目でどこまで日本人選手の特徴やメンタリティを理解できるかがポイントになってくるだろう。柏レイソルも指揮官が代わり、吉田達磨監督がユースで手塩にかけて育てた若手を起用している。サガン鳥栖は森下仁志監督に代わったが、日本代表FW豊田陽平を軸に粘り強くハードワークしていく戦い方はそのまま継承されるはずだ。

 樋口靖洋監督が就任したヴァンフォーレ甲府も含め、監督が変わったチームは、戦術やスタイルを変更することもあるはずなので、それがうまくハマると一気に浮上してくる可能性もある。

 また、アルビレックス新潟に加入したDFコルテース(元ブラジル代表)や、横浜F・マリノスが獲得したFWアデミウソン(年代別ブラジル代表)など、新外国人選手がどれだけ活躍するかも注目のポイントになる。

 昨年下位に沈んだ清水エスパルス(15位)やベガルタ仙台(14位)、そして昇格してきた松本山雅FC、モンテディオ山形が粘り強く戦えるかどうかも、リーグが盛り上がるための要素として欠かせない。

 昨シーズンの徳島ヴォルティスのように、早々に降格が決まるようなことになると、やはりリーグ戦の楽しみが減じてしまう。昇格組が上位クラブを苦しめる戦いに期待したい。

 たとえば山形は、徹底して守備を固めるチームだ。攻撃的でないと面白くないという意見もあるかもしれないが、私は守備的でもいいと思っている。つまり、自陣に閉じこもってひたすらカウンター狙いというチームがあってもいい。

 そうすると当然、上位チームにはその守備を崩すための豊富なアイデアが求められる。そういった特徴の異なるチームの対戦があることで、日本サッカーに多様性が生まれてくる。そして、リーグ全体の盛り上がりにもつながる。

 Jリーグにも面白い試合はある。ただ、その数が欧州リーグより少ないことも事実。だから、観客が面白いと思える試合、質の高い試合を増やしていく努力をまだまだ続けていかなくてはいけないと思う。

 Jリーグが、中国や韓国、中東各国、オーストラリアのリーグに抜かれてしまうのか、それとも踏みとどまってもうひとつ上のレベルに進めるか。ここ数年がとくに重要になると私は思っている。選手には、危機感を持ってやってもらいたい。同時に、多くのファンがサポートをしてくれることの素晴らしさ、ありがたさを、プロサッカー選手としてしっかり認識をして、感謝しながらプレーしてほしい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro